おがきちかさんの「Landreaall(ランドリオール)」27巻を読みました。

Landreaall 27 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
おがきちか
一迅社


22巻の終わりから始まったクレッサール編もいよいよ大詰め。ついにクエンティン・ユージェニとの件、そしてその背後にあった失われた王女・リルアーナの件、そしてロビンの父親探しの件。まだ27巻にはおさまりきれない部分もありますが、それらがかなり進展したのがこの巻に収められた147話~152話でした。

それぞれの回の感想は、毎月連載が掲載されるたびに書いていますので、こちらの方をご覧頂ければと思います。

このエントリでは、連載時と単行本収録時での異動について(気がついた範囲ですが)見て行きながら、感想を書きたいと思います。

今回、まず手にしたのは通常版。いつも限定版(あるいは特装版)と両方入手しているのですが、今回は通常版から手に入れました。表紙は鎖につながれ、でも剣を持ち、不敵な笑みを浮かべるDX。かっこいいです。

扉のユージェニとDXの半身の合成、金髪ですみれ色の瞳という共通点がはっきりと。目次にはモフモフの人たちが。(笑)レーカーベアですね。モノクロの扉のクレッサールの夜景が美しい。

登場人物紹介では、クエンティンとユージェニのカットがつながっていて、クエンティンを見つめるユージェニの表情が、他では見られないものであるのも印象的。

147話の異動は1カ所。単行本21ページ一番上のコマのディアの横顔が入れ替えられています。描線が細やかになり、美しくなりました。それと、12ページに現れた「お姫さん」が、ユージェニに化けたDXであることにいま初めて気がつきました。このあたり謎だったんですよね。(笑)「ユージェニとDXが似ている」ということが相当強調されて初めて分かった。ちょっとニブかったかな。

148話では33ページ左下の「オイ」というセリフが大きくなってる。これはこの方が自然だと思いました。

149話では68ページ。DXの「暗闇でよく見える逃げ道は罠」というセリフを受けて、次のコマでDXが「傭兵の格言だ」と言っていたのを、ユージェニがDXに「騎士のくせに傭兵の格言か!」というのに変わり、それに応じてDXの口が開いていたのが閉じられています。あと、背景にトーン(スクリーントーン)が追加されていますね。

全体に、トーンが追加されている場面は多かったです。連載時は白っぽい画面だったのが、単行本では立体的になっている場面が多く、奥行きが出て来た感じです。私は白い画面もキライではないのですが、クレッサール編に関しては影が濃い物語だということもあり、影の多い画面の方があっている気がします。70ページのユージェニとDXの会話でも二人の表情にトーンが追加されています。

69ページの「DX、私たちは似た者同士ね。ここにきて、建前で剣を振るってなんかいられない。」「あなたは騎士になりたいんだね、ユージェニ」という会話が好きです。それを受けて、「お前は私の欲しいものをまた一つ手に入れた」というユージェニのセリフは、いま理解したのですが、これはこの戦いに際し、メイアンディアからDXが騎士に叙されたことを意味しているわけですね。

150話では83ページの上から二つ目の左側のコマが連載では空白だったのが、単行本ではクエンティンがDXにハグする場面の回想がかき込まれていて、いつクエンティンの「呪い」がかけられたのかが明示されていました。これは読んでいるうちに理解はしていたのですが、このコマがはいることによって凄く分かりやすくなったと思います。

それから87ページの下のコマに集中線が追加されています。その方がやはり緊迫感がありますね。

151話では扉のディアの姿にトーンが追加。バラも色が濃くなっています。これはどちらが美しいか、議論が分かれそう。両方美しいんですけどね。(笑)(私はディア推しです)

この151話はトーンが追加された場面が凄く多い。109ページのクエンティンの目の周り。110ページのクエンティン、ディア、ユージェニの顔。111ページの上のコマは背景が追加されていて、下のディアの顔に影が追加。

「火矢の塔」におけるファラオン卿、ロビン、フィル、レイの場面に移り、(ちなみにこの塔の名前は単行本背表紙下のイラストで初めて認識しました)113ページ中段右のコマに背景が追加。114ページ左上のコマに背景が追加。115ページレイの服に影。

場面戻って、117ページクエンティンとディアの顔に影。ディアは黒目の色と口の中が影がついてかなり印象が変わっています。119ページ、逆上するイオンの顔、額に影。迫力が追加。120ページ、クエンティンの表情と服、イオンの服と肌、背景にトーンが追加。121ページ、クエンティンの表情に影。そして下のディアの表情に黒目の色、白目の影、鼻の影が追加されて美しくなりました。ここは「何故こんな表情なんだろう?」と不思議に思っていたところでしたので、美しくなって納得がいきました。全体にディアが美しく修正されていて、嬉しいです。(笑)

そして122-3ページの対峙するディアとクエンティン、光と影が追加されて凄くこれから行われる精神の戦いを象徴しているように思われました。

124ページ右上のディアのカットが大きくなって凄くバランスがよくなったと思います。125ページのディアとDXの描写にもトーンが加えられています。ディアが抑えているDXの右腕の描写、ここは変更があったわけではありませんが、凄く好きです。128ページのDXの顔にもトーンが追加されています。

151話は特に、徹底的に絵がブラッシュアップされたと思います。単行本収録時にこれだけ変更があるのは珍しいんじゃないかなあ。それだけ絵の完成に執念を燃やされたという印象がありますし、凄く良くなったと思います。

152話では138ページのユージェニ、イオンにトーン追加、139ページのクエンティンにも影のトーン。あと、150ページのイオンの「今なら届く」とクエンティンを切り捨てようとするイオンの心の中のセリフに、ものすごく激しく、また乱暴な雰囲気の集中線が加えられ、これが凄いと思いました。イオンがしようとしていること、それはつまり「クエンティンを殺す」ということな訳ですが、回復したDXが「させるな!」と叫ぶ場面の背景にもトーンがはいる。

そして、152ページ、五十四さんから姿を自分に戻した六甲が手裏剣(短剣型の)を投げる場面の表情が、書き直されていました。目の隈が減らされてスマートな印象。この方がかっこいいですね。このどろどろした戦いの決着においては隈があってもいいのかなとも思ってましたが、やはりスマートな方が六甲が純粋にイオンを思う気持ち、「イオンに人を殺させない!」という気持ちが伝わって良かったんじゃないかと思います。

153ページ、左腕に手裏剣を受けて崩れ落ち、「どうして止めたの・・・」というイオンのセリフの背景にグラデーショントーン。やはり影の濃さは必要だなと。154ページ、イオンを抱きとめたDXの表情にトーンが入り、イオンのスカートに柄が入っています。一番下のディアの鼻血の背景にグラデーション的なトーン。これは職人技系のトーンの入れ方という感じ。

そして、156-7ページの戦い終わって崩れ落ちたディア、ユージェニ、そして闇に落ちてしまった感じのクエンティンの描写、ここは変更はありませんが、凄い絵だなあと改めて思いました。



単行本収録時の変更というのはセリフを中心に数カ所、ということが多い気がしますが、今回は「絵の掘り下げ」が凄かった。分かりやすくもなりましたし、全体に凄く完成度が上がった感じがします。

1月末発売のゼロサムが今回の単行本の続きで、2月27日にはゼロサムの次号に収録されているものが28巻の2話目に相当するわけですが、この壮大な戦いの後始末がどういうことになるのか、今後もさらに楽しみになりました。