コミックゼロサム2月号でおがきちかさんの「Landreaall(ランドリオール)」第152話「Who am I」を読みました!

コミックZERO-SUM2016年2月号
一迅社


クレッサールにおけるDX・メイアンディア・イオン・六甲の対クエンティン・ユージェニ戦も佳境に入ってきました。前回はDXがクエンティンにかけられていた呪いが発動し、完全にその虜になっている状態で、ディアを侮辱されたイオンはついに自分の正体を現し、クエンティンに立ち向かいます。そしてディアは自分の天恵でDXの呪いを解こうとする。そこに立ちふさがるユージェニと、イオンは戦います。そして、呪いをかけ続けるクエンティンは、呪いの世界の中で鎖につながれたDXの前にその本体?を露わにする。それは、幼い時に捉えられ、奴隷として所有されていた屈辱の姿でした。

クエンティンの本当の姿?がこの幼い時の首に鎖が繋がれた姿なんだ、ということが、つまり苦しみと呪詛こそがクエンティンの本体なのだ、ということがここには表されているように思います。

さて、ここからは今月号の内容に触れつつ感想を書きますので、ぜひゼロサム本誌をお読みの上読んでいただければと思います。

扉は、棒のようなものを持って立つイオンの姿。このしなる棒は何でしょうか。劇中でもイオンの武器として使用されています。

扉をめくると、見開きで鎖に何重にも繋がれるDXの前に、幼いクエンティンが立っています。

「これはひどい」と他人事のように言うクエンティン。これを解くことはメイアンディアにも無理だ、と言います。彼女はイオンにかけた呪いが解けたのだからこれも解けると思うかもしれないが、イオンにかけた呪いは単純なものだった、というのです。そして、「DX公子の自由を求める心が鎖を増やし続ける」というのでした。

冷たい目をして立つ幼い日のクエンティン。心の中にどれだけの負のエネルギーを持っていたのか。フースルーの、人の人生を動かすだけの詩の力をもつ天恵をもったクエンティンが、これだけの負のエネルギーを真っ直ぐにDXに向けていたら、DXががんじがらめにされても仕方が無い感じがします。

しかしそこに現れたのがボルカ。DXがユージェニによって黒虹のカリファに奴隷として売られたときに何かと面倒を見てくれ、DXがライナスや玉階・オルタンスによって救い出されたあと、クエンティンと戦うための戦力として「傭兵」としてDXとともにクエンティンの城にやって来た男です。

「黒虹で鎖につながれてたときだって、お前は一時だって奴隷じゃなかった。お前はなんなんだディッツ!?勝って俺達に教えてくれよ」とクエンティンに飛びかかりますが、クエンティンはさまよい女を放ってボルカを押さえ込もうとする。五十四さんの姿をした六甲はとっさに短刀をボルカに投げ、それは幽霊を祓うことが出来るのでした。

得物を失った六甲にイオンは、「今の姿なら」と思い、「女子を護る力を持つ」小狐丸を投げ渡し、自分はユージェニに立ち向かいます。

このへんの立ち回り、戦闘シーン、様式的でもあり、ダイナミックでもあり、凄くわくわくします。

「余裕があるな?」というユージェニに「余裕なんかない!」と答えるイオン。そこはもう真っ正直一直線のイオンですから、ユージェニも「お前のそう言うところは嫌いになれない」と言います。このへんの思いの交錯が楽しい。

「ユージェニ姫はクエンティンに操られているんでしょう?」というイオンに、ユージェニは「闘いは私に自分を取り戻させる。私は私の意志で彼のために戦うんだ」と答えます。このへんはもう死闘ですね。

ディアはDXの腕を握り、呪いに近づいて行く。しかし、呪いがDXの魂脈にまで根を伸ばしていることに気づき、はっとします。呪いを無理に壊したら、DXの精神に傷がついてしまう、と。怖いですね。どうしたら・・・という顔をするディアにクエンティンはにやりとします。

しかし。

ここからが凄かった。

この「ランドリオール」とは、どういう物語だったかを思い出させます。

そう、最初の数巻、この物語は、火竜に捉えられ「歌う樹」に呪縛されていたDXの愛するマリオンを解放するために、火竜と戦う話だったのですよね。

そしてその戦いで腕に負った傷は、火竜が彼を護る「竜創」になった。その竜創が反応しているのを、ディアが感じたわけです。

ここは凄くいい。もう、1巻からずっと読んでいる人にだけ許された、最高のごちそうですよね。

ディアが竜創に念を送る。すると、何かが目覚める。そこから放たれた光に鎖につながれたクエンティンの幼い姿が吹き飛ばされる。六甲も、イオンも、ユージェニもその光に吹き飛ばされそうになる。

そしてその中でディアが見たのは、

巨大な、歌う樹の火竜でした!

そしてクエンティンの城は、火竜の発する爆発的な光に包まれる。そしてその光は、DXの魂脈・・・これは木の枝のように見えますが、そこから呪いの鎖を断ち切り、呪いがクエンティンに向かって押し戻されて行くのをクエンティンが感じます。

はっとしたディアは気づきます。この帰って行く呪いを辿れば、クエンティンの精神に攻撃出来ると。

はっとしたクエンティンは「よせ!」と叫びますが、ディアは容赦はしない。ありったけの念力でクエンティンを攻撃する。クエンティンはディアの首を絞めようとしますが、六甲の放った手裏剣にやられて腕を話す。そしてその瞬間、「遮蔽が消えた!」

遮蔽とは何か、というのはよくわからなかったのですが、おそらくはクエンティンを護っている呪いの何かでしょう。ユージェニはクエンティンの防御に走りますが、それを突き飛ばして本気のイオンが、「今なら届く」とクエンティンに向かって行く。そこに叫び声。

「六甲!させるな!」

それは、DXの声でした!

この土壇場で、DXはついに呪いから解き放たれたのですね。

このままでは、イオンはクエンティンを殺してしまう。それはダメだ。それをイオンにさせては行けない。DXはそう思ったのでしょうし、六甲もわかっていました。

五十四さんの姿の六甲は、イオンの影に手裏剣を突き刺す。「影縫い」という忍術のようです。しかしイオンは止まらない。イオンはクエンティンに飛びかかる。六甲は、「イオンさま御免!」と言うと元のすがに戻て小狐丸をイオンに投げつける。ここは凄い。もちろん、曲鳴の若い呪術師は元に戻れる、とは言っていましたが、六甲も元の姿にならなくてはと本気になって初めて元の姿に戻ったのですね。

そして小狐丸はイオンの腕に軽く刺さる。そしてイオンはDXに抱きとめられます。目を見開いたまま「どうして止めたの・・・」というイオン。小狐丸が腕から落ちる。このへんはひとこまひとこま、もうこれ以外にないという感じ。そしてDXは「イオン。いつか来るかもしれないけど、今じゃない」とイオンを抱きしめます。

一方、クエンティンはディアのスカートをつかんだまま倒れ、尋常ではない顔色をしたディアは鼻血を出して倒れそうになる。それを支えるDX。座り込んでしまうユージェニ。六甲の胸で泣くイオン、花を押さえるディアを気遣うDX、呆然とするボルカ。そして、ビアズリーの絵のような表情をしたユージェニから離れて行くクエンティンの魂=子どものクエンティン。

戦いは、ついに決着したのでした。

うーん。

・・・

・・・・・・

凄かった。

2015年の最後を飾るにふさわしい展開でした。

それに、何だか渋かった。

クエンティンの本体が奴隷にされていたときの子どもの姿だった、というのもそうだし、竜創がついに真価を発揮したのも凄かった。お転婆なイオンがついに本気になって敵を殺そうとするのもそうだし、六甲が必死で姿を戻そうとしたら戻ってしまうのも凄かったし、正気を取り戻したDXが最初にやったことは妹にクエンティンを殺させなかった、ということも渋すぎるし、そしてヒロインであるディアが念力を使い過ぎて鼻血を出して倒れる、というのがいくら何でも渋すぎました。ヒーローがそうなるのは見た覚えはまだある気がしますが、ヒロインが鼻血を出すとは。

そして今まで呪いにつかまっていたDXが、結局は場を仕切ることになるのも凄い。そして、助っ人に現れるのがライナスでもオルタンスでもリゲインでも守備隊でもなく黒虹で奴隷にされていたボルカだった、というのも最高に渋かったです。

この展開、絶対普通のマンガ家さんにはかけない。おがきさんのセンスあったればこそ、これだけの渋さでこの場面を作ることが出来たのだと思います。

結局このように決着がついて、クエンティンの真実も、ユージェニの真実も、そして新王=ファラオン卿の真実も明らかになりました。この結果を受けて、このあと一体どのようにストーリーが進むのでしょうか。

今回は本当に、この作品の並々ならぬ力を今までで最も感じたように思いました。

アカデミー騎士団のくだりでも、馬上槍試合のくだりでも、なんか全部は発揮出来ていない、そんなもどかしさがあったのですが、今回は本当に遺憾なく「おがきちかさんのランドリ世界」が爆発していました。

最高です。

・・・・

と興奮するのはこれくらいにしておきます。

来月以降も、楽しみにしたいと思います!