別冊少年マガジン12月号で諫山創さんの『進撃の巨人』第75話「二つの戦局」を読みました。

別冊少年マガジン 2015年12月号 [2015年11月9日発売] [雑誌]
講談社


9月号第72話からはじまったウォールマリア奪還作戦ですが、73話でエレン・ミカサ・アルミンの「故郷」であるシガンシナ区に到達し、11月号でシガンシナ区の外門(ここから外は壁外)の穴を塞ぐことに成功。ついに鎧の巨人・獣の巨人が現れ、ライナーとリヴァイの切り合いから戦いが始まりました。リヴァイは間一髪、内門そばの壁から現れたライナーの命を絶てず、鎧の巨人の出現を許してしまったのです。

75話はここからです。以下ストーリーを簡単にまとめますので、本誌未読の方は先に本誌をお読みいただけるとありがたいです。解釈の違うところがありましたらご指摘いただけるとありがたいです。感想はそのあとに書きたいと思います。

獣の巨人にシガンシナ区の内門(ウォールマリアの内側、トロスト区に通じる門)を馬が通れない程度に塞がれ、シガンシナ区側からは鎧の巨人がよじ上って来る。団長のエルヴィンは冷静に『彼らの狙い』を見定め、まず調査兵団の移動手段である「馬」を狙っているとみます。ウォールマリアの内側から出現した獣の巨人と大型巨人たちがシガンシナ区内門を包囲し、2、3メートル級の巨人たちが一斉に馬を狙って集まって来るのでした。

エルヴィンは3つの班に馬の死守を命じ、リヴァイ班・ハンジ班は鎧の巨人を倒すように命じます。そして、新兵器の雷槍(らいそう)。これはどんな効果があるのでしょうか。

しかしリヴァイを呼び止めたエルヴィンは、馬の方に回れ、と言います。そして、獣の巨人を倒せ、と。確かに最も強い、そして司令塔である獣の巨人を任せられるのは、『人類最強』のリヴァイしかいないですね。それが可能なのかはともかく。

一方エルヴィンはアルミンに、鎧の巨人用の作戦を授けます。人類の命運を分ける戦局のひとつを、ハンジとキミに背負ってもらう、と。先月号の『潜んでいる敵』の捜索に関しても、エルヴィンはアルミンに全権を委任し、そしてライナーを探し出しました。エルヴィンのアルミンに対する信頼は厚いです。

一方鎧の巨人=ライナーは内壁によじ登り、馬を倒すことを図ります。「リヴァイ兵長がどれだけ強かろうと、俺達の戦士長には到底敵わない」と自信を見せます。鎧の巨人の『中身』のライナーの首には、リヴァイの刃が突き刺さったまま。「あの時脳機能を全身に移すのが一瞬でも遅れていれば、あのまま即死だった」とライナーは述懐します。そんな技術があるのですね。巨人を操作する技術には、やはりかなりの練度の差があるようです。エレンもだいぶ慣れてきたとはいえ、やはりまだ初心者という感じですし。

ライナーの横には団長のエルヴィンが。ライナーは先に殺すのは馬だ、と自分に言い聞かせますが、その時シガンシナ区内で巨人が出現。エレンがついに巨人化したのです。ライナーは、もしエレンが完全な座標の力を身につけてしまったら「手遅れ」だと考えて焦ります。

しかし、ライナーはエルヴィンの本当の狙いに気づきます。彼らは、ライナーの目標を馬からエレンに移すことなのだと。ライナーはエルヴィンを睨みつけ、再びシガンシナ区内に飛び降ります。

エルヴィンの作戦は、馬を守るためにライナーをおびき寄せることだったわけですが、もしライナーが馬に向かったらエレンは獣の巨人の背後に回ってリヴァイとともに戦う、というプランになっていたわけです。

ここでハンジが、「よし!鎧(ライナー)をトロスト区内で迎え撃つぞ!」と言いますが、これは明らかに「シガンシナ区内」の間違いですね。(笑)「ここがシガンシナ区である」ことが、エレンにとって非常に大きな意味があるのに、こういう間違いをするのが諫山さんらしいし、それを通してしまうのもなんか川窪さんらしい気がします。

ともかく、エレンはまだどこかに潜んでいる超大型巨人=ベルトルトの奇襲を避けるため、なるべく壁から離れた位置でライナーと戦うことになりました。

エレンは思います。「お前には一度勝ってんだ。単純な格闘能力なら、女型(アニ)の方がずっと手強かった。」と。

そしてついに、シガンシナ区の廃墟でライナーとエレンが激突します。巨人プロレスが6ページ。凄い迫力。そしてエレンは思います。「お前には、ここがどこだかわかるか?ここは俺達の故郷があった場所だ。取り返してやる。お前らをぶっ殺して、お前らに奪われたすべてを」と。

ミカサが両腕に身につけた雷槍。この効果も早く見たいですね。

ライナー、ベルトルトも一番の目標は「故郷」に帰ることだ、と言ってました。エレンたちも、ついに「故郷だった場所」に帰ってきた。ここにきて、「進撃の巨人」が「奪われた故郷」を巡る争いになっているのがなんか面白いなと思います。ライナーたちの故郷がどういうところなのか、まだわからないのですが。

話の展開としては、エルヴィン・アルミンの洞察力が凄くてかなり相手の動きを読んでいるし、ライナーの独白があるので、当初のような「巨人が何を考えているか、世界がどういう仕組みになっているかわからない不気味さ」というものは薄れ、わりとシンプルな活劇ものになってきました。

このままガチの戦いでどこまで行くのか。正直、調査兵団側には新兵器があるとはいえ、鎧の巨人を一蹴した獣の巨人の強さがどれだけのものか、まだ未知数ですから、リヴァイやエレン巨人との戦いがどうなるかは見物です。

そして、リヴァイはあの「巨人化する注射」を持っているのですよね。一体これを、どこで誰に使うのか。まだまだ先が見えません。

かなり大詰めに来ていることは確かですが、まだまだ先が見えないですね。戦闘が始まっても、物語的にはまだ色々な種を蒔いている段階で、いままでの伏線が回収されるような段階ではありません。しかしエレンが、エレンらしい怒りの述懐をしているのが、とてもよかったです。奪われた故郷で、奪い去った相手と戦っているわけですからね。力も入ります。

来月以降も楽しみにしたいと思います!