改めて、実写版「進撃の巨人」(前編)感想。

昨日感想を書いた実写版「進撃の巨人」ですが、一晩寝て、かなり印象が肯定的になってきました。

なにしろ、一晩中映画の中の風景が頭を離れなかったのですから。(笑)

巨人が怖い、という意見が多くて観る前はその描写が気になっていたのですが、それは私自身としてはそれほどでもなかった。しかし、頭から離れなかったのは「チベットの村のような」(反物を染めた物をいくつも干してたりしたからでしょう)冒頭の街の風景、エレン・ミカサ・アルミンが眺めた「壁の中の風景」、そして軍艦島でロケをしたという「オモテマチ」の風景でした。

映像の威力というのはすごいな、と改めて思います。

色々とこの映画の評価について酷評があるようなのですが、それほどでもないと思います。

ただ、男女間ー性的なものが原作でも映画でもかなり消し去られていて、それが「進撃の巨人」の世界の一つの大きな特徴になっていたと思うのですが、それがこの映画ではそこに風穴を開けていると言うか、かなり匂い立つ部分があって、そのあたりが「居心地の悪さ」を感じた人が多かったのではないかという気がします。

実際、ヒアナというキャラは実写オリジナルのキャラですが、かなりその部分を強く担当していて、エレンに迫る場面(それも背中から尻の方から映されているだけに)は強く印象に残っていますし、何度も脳内再生されてしまいます。(笑)その背後でセックスをしているらしきカップルもいましたしね。

また、ミカサが壊れたピアノを弾いているところとか、リリカルなのですが、すごく「実写映画的」で、何か違うものをぶち込まれた感じがしてしまう、のではないかと思いました。

全体的にみんな顔が汚れてたりして、印象が貧乏臭い、ということもあったかな。「戦場」に装甲車で出かけて行くのもまあ、違和感はあるでしょうし。

そのあたり、ちょうど8月ということもあって、食傷気味の第二次世界大戦を扱った戦争映画(それも玉砕しそうな)とかの印象に重なってしまったということもあるかもしれません。

しかしやはりこの映画、風景の圧倒力みたいなものを楽しむ映画なのではないかなという気がします。その風景も、実は人が作ったものだ、というところが凄い。「モンゼン」のセットにしても、ロケ地の軍艦島にしても。

それから、群衆の多さ。この辺の人間が実際に動いている圧倒的な量感というものは、やはりアニメではでませんよね。人の流れに逆らって家に行こうとしていたエレンたちが、結局細い路地を群衆と同じ方向に逃げざるを得なかったり、なんとか建物に逃げ込んだかと思ったら今度はその逃げ込んだ人たちが逃げられなくなったり、残骸だらけの廃墟になった街はほとんど内戦中のシリアの光景でした。

この世界では、「自由な結婚が禁じられている」「自由な機械の作製が禁じられている」「腹一杯食べられない」ことが語られていて、それに鬱屈を持っているキャラとしてヒアナ、アルミン、サシャが描かれていて、何ていうか普通の映画のドラマ構造としては、それなりによくできてるとは思うのですよね。

色々な意味で見た人から不満がでてきているのは、まずは「これが「進撃の巨人」なのか?」ということに尽きるんだろうと思います。

しかしまあそこは、「ハリウッド版ゴジラ」だとか「ボリウッド版風立ちぬ」(そんなものはありませんが)みたいなものだということではないでしょうかね。

私も自分の中で、原作やアニメと、この実写版の距離をどう撮るかというのは苦心しているところはあるのですが、映画として、映像として、特にその部分的な様々な要素としては、かなり面白いところ、いいところは沢山あったと思います。

しばらく経つと、そういう部分の方がよりよく見えて来るのではないかなあ、という気がします。

というわけで、一夜明けての感想を改めて書いてみました。