コミックZERO-SUM 2015年 06 月号 [雑誌]
一迅社


コミックゼロサム6月号でおがきちかさんの「Landreaall」第144話「よどみに浮かぶ」を読みました!

今月の扉絵は、クエンティン。アオリに、「狂気の炎を宿す…。」とあります。確かにそういう感じの微笑みを浮かべたクエンティン。その内面に何か大きく欠落したものがある、おそらくはそれが狂気だ、ということだと思いますが、それはいったい何なんでしょうか。

さて、ここからは内容に触れつつ感想を書きますので、ゼロサム本誌をお読みになってから読んでいただければと思います。

前話の最後ではライナスとルーディーを装って新王・ファラオン卿に密かに会いに行こうとしているフィルとロビンが、王城で指導を受けている従騎士に見つかってしまい、「ちょっと今生徒だけでうろうろさせたくないんだよな」と言われてしまいます。絶体絶命状態のフィルとロビン。

そこに救世主のように現れたのがリドでした。リドは自ら名乗り、従騎士も馬上槍大会での活躍を思い出してそれと認識したところに、護衛のニンジャの五十四さんが現れ、「自分が天恵研究室に行くのにフィルには近道を教えてもらおうと思って同行を頼んだ」と言うと、従騎士も納得して引き下がるのでした。

五十四さんが二人が王城に行ったことを察知し、また王城では事件が続いて緊張している、ということが分かります。これはオズモ卿やベネディクト卿が最近頭を悩ませている、突発的な決闘事件の多発のことですね。どうやらこれもクエンティンが糸を引いているようなのですが、まだ詳細は分かりません。

リドに聞かれ、フィルはロビンを新王に会わせるために来た、と本当のことを打ち明けます。

王は塔に籠っていて、そばにいるのは王妃になる予定のメイアンディアだけ。ということになっているわけです。本当はディアはDXを助けるために新王の指示でクレッサールに行き、クエンティンにイオン(侍女アイシャを装っている)とともに囚われているわけですが。そしてこの期間は王に呼ばれたものだけが会えることになっていて、ライナスとルーディーがつけた「つなぎ」、新王夫妻に装飾品を贈る、という計画をフィルが引き継いで(二人はベネディクト卿から警告を受けたライナスの父親につかまり、クレッサールにいる11番目の玉階・オルタンスの元に飛ばされて、今ではDXとともにディア奪還計画?に加担しているわけです)、ついに自分がライナスを、ルーディーがロビンを装って王城まで来たわけです。

ロビンは長い間本当の父親が分からなかったのですが、DXやイオンたちの努力によって父親が新王のなくなった息子・ローハルト卿だったことが分かったのですね。しかし今はファラオン卿が「子孫がいない」という理由で新王に擁立されたと言う微妙な時期。この時期に孫であるロビンの存在が公のものになったらとんでもないことになる、ということはどうやらベネディクト卿も察知しているようです。

ロビンは祖父に会うことは諦めかけていたのですが、やはり諦めないDXの影響を受け、またフィルにも励まされて会うだけでも会いたい、と思ってこのプランに乗って王城にやってきたわけです。

話を聞いたリドは「無謀なことをしでかすつもりではなかったんだな」と安心します。そして無事王の籠る塔のところまで到着し、二人は塔に向かいます。ロビンも「僕ルーディーの代わりにお祝いを渡すだけです。余計なことはいいません。絶対に。」というのですが、その表情には薄く網がかけられていて、そしてそれを見守るリドも心配そうな顔をしていて、何かが起こることを暗示しています。

・・・起こらないはずがないですよね!

知られていないけれども、新王には人の心に干渉する何らかの天恵があるはず。メイアンディアもレイ・サークもタウスマルでクレッサールとの国境を守るマナーズもファラオン卿の薫陶を受けていることが語られていますが、ファラオン卿自身の天恵については今まで語られていません。しかし、それが半端なものではないことは十分察せられます。そのファラオン卿が自分の実の孫・ロビンと謁見して、何も感じないはずがない。さていったい何が起こるのか…このあたりが一番ドキドキすることであるように思います。

さて、ユーハサン鎮守に到着したDX一行(ほかにライナス・ルーディと奴隷商人カリファの元で雇った傭兵たち)は、ユーハサン鎮守でメルメルばあさん(失われた王女・リルアーナとその娘・今ではクエンティンと行動を供にしているユージェニ姫に仕えていた)を探しにきた六甲(クレッサール人で灰撒部族のバハルも同行)と再会します。六甲が五十四さんの姿になっていて二人も唖然としますが、「これでDXのお守りから解放される!」と喜んでます。六甲はDXが二人と同行しているいきさつを尋ねます。

クエンティンがディアに危害を加える、ということに関しては心配ない、という六甲は、つまりDXは気づいてないけど侍女のアイシャが実はイオンだから、大丈夫だ、と言ってるわけですね。

バハルにはまだディアとアイシャが捕らえられていると説明し、またこれまでのいきさつを聞いた六甲はDXが人身売買されたという話に動揺を隠せません。玉階・オルタンスはタウスマルに向かったとのことで、クエンティンのことは王城のオズモたちに任せるしかない、とDXはいいます。

俺達に出来るのはクエンティンとユージェニを直接止めることだけだ、というDX。いつまで五十四さんなの?と聞かれて焦る六甲が可笑しいです。

メルメルばあさんはDXの顔を見て「来て下さった・・・約束を守って下さった・・・」と涙を流して喜びます。メルメルさんはDXを誰かと勘違いしているのか、それとも…その辺りのことはよくわかりません。

一方、リルアーナに救出されたときのことを回想しているクエンティン。クエンティンは、リルアーナが持っていた「七粒の涙をこぼす羽根(セメンステアスツィ)」という宝飾と引き換えに奴隷のように呪術師のエコーにされていたクエンティンを救出したのでした。(クエンティンを奴隷化していた曲鳴部族はすでにクエンティンに壊滅的な攻撃を受け、宝飾も取り戻されています。その曲鳴の若い呪術師がクエンティンから身を隠すために六甲を五十四さんの姿に変えたのでした。そしてその呪術師は失踪してしまったために、六甲は姿を戻せないでいます)

「いつかすべてを思い出してね。たとえ私を恨むことになっても」というリルアーナの言葉を回想しているクエンティンに、ユージェニが話しかけます。クエンティンはどうやら実力を行使して、部屋に籠城しているディアを部屋から連れ出そうとしているようです。

クエンティンは「私にはもう何も聴こえない。あなたは怯えなくてよかったんだ、あわれなアンナ」と思っています。そのセリフは、どうも深い闇の中にあるようです。そのあたりが、クエンティンの「狂気」の源なのでしょう。

そして夜明け前、ついに、ドアを壊そうとするうごきが。アイシャに化けたイオンはそれを察知し、ディアに「起きて。人の気配が・・・大勢いる!ドアを壊す気よ!」というのでした。

さて、DXたちは間に合うのか。DXたちが合流したとき、バハルと六甲たちはもう出発の直前だったようですから、動きはあってますよね。ここは活劇シーンが出てきそうです。そしておそらく、ユージェニとDXの剣技による対決もあるでしょう。

こちらも気になりますが、王城でついに新王と会うことが出来そうなロビンがどうなるか。そして会ったことによって、王城でどういう事態が発生するのか。

目が離せない展開になってきました。

現在の展開が馬上槍試合が終わりユージェニが突然現れた20巻からだとすると、現在は26巻相当のところを進んでいるので年2巻のペースですからもう3年以上になりますね。DXがクレッサールに入ったのが22巻のラストでしたからそれから数えても丸2年。長いストーリーもようやく一つの終わりが見えてきたように思います。物語の構造自体が大きく動く局面であることは間違いないわけで、どんなふうに動いて行くのか、とても楽しみです。

次号も楽しみにしたいと思います!