コミックZERO-SUM 2015年 03 月号 [雑誌]
一迅社


コミックゼロサム3月号でおがきちかさんの「Landreaall」第141話「11人目」を読みました。

すごく面白くなってきた「ランドリ」のクレッサール編。DXはユージェニ姫に拉致されてカリファの奴隷市場に売られてしまい、そのままどうなってしまうのか、と言う展開の中で、前回、カリファの奴隷市場から、ライナスとルーディー、それに一緒にいる謎のマダムによって救出されたDX。そのDXは一大決意をして、ライナスたちに真相を話し、そして頼みがある、と言うのでした。

今回はその続きから。

いきなり「契約しろ」「断る」と言う話から始まっていて、何かと思ったら、DXの竜創についての話でした。竜創とは、竜によってつけられた傷のこと。その傷は硬くなり、それをもつ本人が死んでも残って、それで剣を作ることが出来る。ライナスはそれに目を付けていて、以前からDXが死んだらそれをライナスに渡すと契約しろ、と迫っていたのでした。

今までDXはそれに取り合っていなかったのですが、クレッサールに来てなぜかその竜創が消えてしまっていたのです。竜創はDX自身を守るものであり、今までいろいろな場所でそのおかげで様々な困難を乗り越えてきたのですが、クレッサールでは葛焚の呪い師に「竜創=火竜との契約は当てにするなよ」とはっきり言われていました。消えてしまう、と言うのは予想外でしたが。

クレッサールと言う土地には他にもいろいろな不思議なことがあり、六甲たちニンジャの力も使えなくなったりしてしまいます。このランドリの世界はもともと不思議な能力=天恵があったり、不思議な力を持った石=ジェムがあったりとファンタジーの世界ではあるのですが、クレッサールはその中でもまた不思議な領域になっているわけですね。

バチカン公領やウルファネアでの出来事も面白かったのですが、クレッサールは砂漠の国ですから広大で茫漠としていて、お話もアラビアンナイトみたいなエキゾチックな話が多い。ちょうど現実世界でも「イスラム国」による日本人誘拐事件が起こったりして、いろいろと重なって見えて来るところもあります。そういうのって不思議な感じですね。

話がずれましたが、本編に戻ります。

DXは何やらお金がいるらしい。だから改めてライナスに契約するから金を出せ、と言っているようですが、今現に消えてしまっている竜創には金は払えない、とライナスは言うのでした。そりゃそうだ。

そこにマダムが口を出し、私がDX公子の保証人になる、と言います。何をしようとしているのか言え、というマダムに、DXは、クエンティンは人の心を操る手段をもっているから、メイアンディアがクエンティンに利用される前に助け出し、クエンティンによってアトルニアと敵対する部族に渡されて行方不明になっている両親(父であるアトルニアの将軍リゲイン・ルッカフォートと元傭兵の母)を追うと言うのでした。

クエンティンを止めに行くのだ、と言うことを確認したマダムは、驚くべきことを言います。マダムはDXの前に跪き、「私は我が偉大なる王家天駆ける蹄に忠誠を誓い、アトルニアの英霊の名に於いて第34代夢見月(ルアシレオ)の席を賜った玉階、オルタンス・パラディア」と言うのでした。

そう、このマダム、円卓を欠席した「11人目の玉階」なのでした。

これは思いがけない展開でした。

何かアトルニア政府から密命を帯びた存在だろうなとは思っていたのですが、まさか玉階だったとは。

と言うことはこのオルタンス、同じくクレッサールに根城をもつクエンティンのことを何か知っていたのかもしれません。

ちなみに玉階とはアトルニア王国で王を選出する会議=円卓に参加する12人のメンバーのことを言います。前回の円卓はメイアンディアと結婚することになっている大老・ファラオン卿(ファラオン卿自身も玉階だったのが超法規的に王位に就くことになったため、12人目の玉階の席は空席になっています)が王に選出されたわけですが、その席で同じく玉階のアニューラス・バラライカ(アンちゃんと呼ばれている)によって王位継承候補者(ウェザークラウン)であるDXは王に推薦されています。またクエンティン自身も玉階で、一度はDX付きになろうとしたのですがDXはアニューラスを選んだため断念し、この円卓のときは彼が隠し球としてもっていた前王の孫娘に当たるユージェニ姫を王に推薦したのでした。

ちなみに、アトルニアは現状男性しか王になれないという制度なのでユージェニが王になるためには障壁は多いのですが、前王は真祖(アトルニアを建国した貴族たち)の血を引いているために、ユージェニを支持する勢力が一定生まれているわけです。それによって、アトルニアの首都フォーメリーでも何かと騒がしくなっているのですね。

ということもあって、玉階も男性しかなれないのかと思っていました。まあ玉階には「強烈に美しい(DXの母ファレル談)」クエンティンや、男なのか女なのか作者も明らかにしないアニューラスがいるのですが、玉階が男でなければならないのなら、アンちゃんは男なのかなあ、と思っていました。しかし、ここに来て明らかに女性であるオルタンスが玉階であることが分かったので、アンちゃんの性別の謎もまた振り出しに戻る、という感じになってしまいました。

さて、話はユーハサン砦の六甲とバハル、チレクの兄妹の方に。六甲はクエンティンの追求を逃れるために五十四さん(DXのアカデミーでの親友・リド(ウルファネアの公子)付きの女ニンジャ)の姿に変えられてしまっているのですが、その姿変えの呪術を使った呪い師がチレクとマーニ(「虎斑」の案内人の孫娘)とユーハサン鎮守の呪い師のところにいたとき、DXの両親を襲い、またDXたちをも襲撃した山賊たちがやって来て、その呪い師を連れ去ってしまったのです。元の姿に戻る手段を失った六甲ですが、(ニンジャなので)動じていません。

そのときマーニが怯えたのは、案内人でありDXの両親を結果として裏切ったマーニの祖父を、彼らが殺してしまったからです。祖父がそうしたのは、依頼主が虎斑のオアシスに出た毒を消してくれると言ったからで、しかしその連中があまりに掟破りのことをしたので驚いてとにかく六甲だけは逃がしたのだけど、祖父は殺されてしまったのですね。

結局チレクがマーニをアトルニアの前線、タウスマルの騎士駐屯地に連れて行って保護してもらう、と言う話になりますが、六甲には「クエンティンはなぜマーニを我々に返したのか?」と言う疑問が残ったのでした。

クエンティンは、リゲインたちを非友好部族に引き渡したとき、ユージェニ姫と戦わせ、ユージェニに剣を上げられないリゲインはユージェニに倒されてしまいます。その光景を半分夢遊状態のマーニに見せていましたので、「ユージェニとリゲインが戦ったこと」をアトルニア側に知らせるのがクエンティンの狙いだと言うことなのでしょう。「前王の死で終わったはずの革命は、まだ終わっていない」と。アトルニアを動揺させるのがその狙いだと言うことになるでしょうか。

クエンティンは DXに、「私たちの手で革命を終わらせましょう」と言ったことがあります。「革命を終わらせる」ということが、「アトルニアにすべての人が融合した新しい体制をつくる」ことなのか、「ユージェニ姫が権力を奪還する」ことなのか、「完全に王制を廃止し、真祖の勢力を一掃する」ことなのか、それぞれの人によって意味が違う感じがする部分があります。

一方、クエンティンと、山賊たちの関係も、クエンティンが依頼者ではあるのですが、呪い師に復讐をけしかけている(呪い師の属する「曲鳴」を壊滅させたのは自分が魂の容れ物のように使われたクエンティンによる復讐だったので)と言うことは決裂したのかもしれません。このあたりもどのように動くか、よくわからないところです。

一方、久々の王都・フォーメリーの王城。議会の議長・オズモ卿(DXたちルッカフォート一家と親しい)と秘密警察的に動いているベネディクト卿が会話をしています。ヒゲのおじさん二人の会話は、こっち傾向がお好きな腐女子の方にはたまらないんじゃないかと余計なことを思いました。

王都では刃傷沙汰が続発していて即位の戴冠式の延期を図った方がいいのでは、と言う雰囲気になってきていますが、大老はオズモたちに任せると言うのみで、オズモは信頼に応えたいと思っています。自分には皆の意見を統率する絶対的なカリスマはないが、むしろ皆に意見を言わせることに意味があると思っている、といい、ここまで国づくりが進んできたら欲深いものほど壊すのを惜しむはずなのに、混乱を起こす意味がどこにあるのか分からない、とオズモは言うのでした。

オズモはベネディクトと DXの玉階であるアニューラスに話を聞きに行くことになりますが、アニューラスも現状をどのくらい知っているか。DXたちも公式にはタウスマルまでしか行ってないことになっていますし、政治的にも難しいことが起こる可能性もありますね。

そして再びDXたち。なんと、解放されたばかりのカリファの奴隷市場に、DXがライナスとルーディーを連れて現れたのです。「どーするつもりだ」というライナスにDXは「賭け(ベットし)て合わせ(コールし)て勝負(ショーダウン)」と言います。

懐かしい!

これは何巻でしたか、DXがライナスたちと囚われたルーディーを助けに行く場面で言った言葉です。DXは真正面から乗り込んでルーディーを救い出すことに成功しましたが、その際にクレッサールの「葛焚」の呪い師の呪いを受け、危うく死にそうになりました。そのときは竜創の力で回復することが出来たわけですけどね。(そういえばルーディーを捕えたのは不倫していたベネディクト卿の妻でしたし、その争いに介入したのが大老の指示のもと動いたメイアンディアで、ベネディクト卿はそれで王位継承権を放棄することになったのでした。状況は変わっても登場人物たちの因縁?は続いている感じです)

一読したときにはここからDXたちの大活躍が始まって(おそらく捕えられている奴隷たちを買い取って、クエンティンと戦うときの戦力にしよう、というのかなと思うのですが、どうでしょう)破竹の快進撃、になるのかなと思ったのですが、背景をよく考えるとかなり複雑で困難な状況ではあるわけですね。

ルーディー誘拐のときの一件はDXの暗殺とライナスたちカディス家への打撃を目論んだ、と言うクラスの陰謀だったわけですが、今度は国の運命がかかった国際的な、しかもアトルニアの歴史の闇・「革命の真実」が絡んできた、この「ランドリオール」と言う物語全体の結構に関わる事件ですので、どうもそんなに一筋縄に行きそうな話ではないようです。

そろそろ胸のすくような活劇的な場面も見たいのですが(奴隷市場での戦いとかユージェニとリゲインの戦いとか切ない活劇はあることはありましたけどね)、なかなかそうも行かないかもしれません。

と言うわけでかなり複雑で、読み解きながら読まないと分からなくなるときがときどきあるのですが、今後の展開が楽しみです!