Landreaall 25巻 限定版 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
おがきちか
一迅社


あけましておめでとうございます。本年も「個人的な感想です。」をよろしくお願いします。

おがきちかさんの『Landreaall(ランドリオール)』第25巻限定版を読みました!

25巻に収録されているのは134話~139話の6話分。それぞれの回の感想はこちらをご覧いただけると幸いです。

この巻にはメインストーリーの他に、139.5話「プチリオール」として騎士候補生の馬上槍試合のときにDXが騎乗したアプローゼとその持ち主であるスレイファン卿のクレッサールとの「戦争」の際のエピソードが描かれています。そして限定版は第24巻の特典の小冊子、「騎士にくちづけ」をドラマ化したCDが特典で、「ランドリオール」の世界での「馬」に関するエピソードつながり、という感じで取り上げられていました。

「プチリオール」は、ランドリの連載の進行の中で詳しくは語られていなかった「ユーハサン鎮守」の成立過程のお話。「灰撒」のチレクとバハルの協力でクレッサールの砂漠を行く中で、昔話のように語られた内容として描かれています。

もともとユーサハン鎮守というのは聖蹟(聖なる遺蹟のようなものでしょうか)を管理する呪い師たちの祈祷の砦で、人の住む里ではなかったのですが、戦争の時から里になったのだそうです。アトルニアの騎士団が砦に進駐してきたとき、砦にいたのは女子供と老人だけで、使者を送って攻撃をやめてくれと頼んだのですが、そのときアトルニア側から使者とともにやってきたのがサハン、スレイファン卿で、彼は美しい馬(アプローゼですね)に乗って、月と星の明るい夜にやってきたのだそうです。

そしてこの砦で、幻想的な星たちの夜空を見上げ、その砦の美術的価値と歴史的重要性を認めて「美しい」とつぶやき、破壊も略奪もすることなく、平和裏に占領したのだそうです。そして水路を整備し、食糧の供給と衛生管理を始めて、そのおかげで人が住む場所になったのですね。

しかしスレイファン卿は前王に国に戻されて、代わりにきた騎士は略奪を行い聖蹟にも踏み込んだ結果行方不明になってしまい、それ以来アトルニアの騎士たちはスレイファンの指示どおりに砦を守り、戦争が終わって国へ引き上げたのだそうです。そしてそれ以来、サハンの名を取ってこの地はユーサハン鎮守と呼ばれるようになったと。

そこまではバハルの話ですが、アトルニアに返された後のスレイファンの境遇を語ったのはメイアンディアでした。

前王によってスレイファンは命令違反で投獄され、水牢に入れられて、もう溺死寸前になったときにルッカフォート将軍(DXの父)が革命を起こし、スレイファンを救い出しに行ったのだけど、スレイファンはアプローゼがその服をくわえて溺れるのを防いでいて、そのおかげで救われたのでした。

そんな因縁があったから、スレイファンはDXにアプローゼを貸してくれたのですね。

またこのスレイファンという人が変わった、と言うかユーモアのある人で、自分の領地に立てた城は湖面に乗るようなデザインで、「半分水没城」と名付けたのだそうです。何というか、イギリス人のユーモアみたいな感じの話ですね。こういう冗談とも本気ともつかないようなエピソードはすごく面白いと思います。

テールピースは五十四さんの姿に変えられてしまってとりあえずもとの姿に戻る手段がなくなってしまった六甲にバハルとチレクが困るだろ、と言っているのですが、六甲は「役目を果たす」のに不便だ、という意外の困惑を感じていないのでバハルたちが余計困惑している、というお話でした。

ドラマCDではそんな六甲の話題も出ていましたが、人間らしくないと言うか「ぎりぎり人間」として馬たちが評価していたのは、そんな「望みも欲望もなく使命だけを考えている」ところなのでしょうね。そういう取り上げられ方は六甲に関しては今まで何度も出てきています。

ドラマCDは24巻の限定版の特典小冊子「騎士にくちづけ」を新たに書き足してドラマ仕立てのお話にしたものです。フリーダム過ぎる、という評価があったのでどんなことになってるんだろう、と思って聞いてみましたが、いやあ、よくまとまっているお話だったと思います。出演者はDX、カイル、マグナルの3人と騎士団の馬たち。スレイファン卿の乗馬で槍試合ではDXが騎乗したアプローゼ、カイルの乗る花形のアンスラン、彼女ら以外はDXに絡んだことがある馬たちがいろいろ噂し合う、というお話です。

内容としては前回も書いたようなことなのですが、ランドリオールの世界では、馬たちは騎乗する騎士たちと意識の深いところでつながることによってより大きなパフォーマンスをあげることになっているのですね。でも頭の中が混沌としているDXと意識をつなげることがみんな全然出来なくて、上手くやれたアプローゼにそのアドバイスを受ける、というのが基本的な内容なわけです。

その馬たちの話の前後に馬上槍試合で決勝を戦ったカイルとDX、他の国からの留学生で生物学者のマグナルの3人の会話が加えられた、という構成でした。

馬たちが騎士たちの「心」に関心を持っているのはつながる必要からですが、「尻」にこだわりを持っているという設定も面白いなと思いました。そして「心」に関しては、DXの心で意識を集中しやすいところは「妹」と「恋」だけれども、「妹」はタマシイの深部とつながっている(笑)ので「恋」の方が無難だ、というところが可笑しかったです。

ランドリオールは物語の展開も面白いのですが、その展開している世界そのものも独特で興味深いので、こういう人間以外の視点からのアプローチもあると(そういえば馬上槍試合の後の20巻105話がアプローゼの独白と言う斬新な展開でしたが、思えばそれがこの企画の起源ですね)いろいろとこの世界がよくわかって面白いなと思ったのでした。

今年も「個人的な感想です。」をよろしくお願いします。