Comic ZERO-SUM (コミック ゼロサム) 2015年 02月号 [雑誌]
一迅社


コミックゼロサム2月号でおがきちかさんの『Landreaall(ランドリオール)』第140話「かえるの王さま」を読みました!

前回の第139話、これは12月27日発売の単行本第25巻のラストに収録されているのですが、この話の最後で奴隷市場に奴隷を買いにきた謎の女性のお付きの男とDXが戦うことになり、意識がもうろうとしていたDXはその男に倒されたのですが、その男は実はDXのアカデミーの同級生、ライナスでだったのです。

今回の扉の絵はイオンだと思うのですが、不思議な民族的な衣裳を来て踊っていて、表情も仮面のようです。あるいはこういう顔をした別の女性なのかもしれません。

扉を開けると、DXは見知らぬ女性のベッドの中で目を覚まします。目を覚ますとその女性が「寝ぼすけさん♡私のこと覚えてる?」と笑います。「あなたを買ったのは2度目よ」というヒントで私も思い出しましたが、その顔は!

何と、第9巻でDXのお見合い騒動のとき、ウェイターのバイトをしていたフィルと衣裳を交換したためにとあるマダムに「スイートルームのサンダーレン99年もの(ウェイターのカラダ込みのご注文)」を注文されてしまったときのあのマダムだったのです。…ってこのマダム、前回出てきたのは2007年なんですけどね!(笑)6年ぶりの登場です。ストーリー上は同じ年の6月と10月くらいの間隔なのですが。

DXも思い出して、驚き、マダムは再び迫ろうとしますが、そこにライナスが顔を出します。DXはライナスを見て驚いています。救い出されたときにライナスの顔を見ているはずなのですが、もうろうとしていて全く覚えてなかったのですね。ライナスはせっかくDXに勝ったのに覚えてなかったのかと残念がっています。

DXはまだ状況が呑み込めません。謎の女性に、一緒にいるライナス。ルーディーもいるようです。そしてこの場所は、その女性の移動天幕の中、ということのようです。

女性の説明によると、彼女は「クレッサールを気ままに巡る奔放な未亡人」で、カディスの当主(商人でライナスの父親)にたのまれて二人を預かっているということでした。彼女は夫の残した遺産を元手に交易しているのですが、奴隷市場にやってきたのは、商売ではなくボランティアなのだ、というのでした。

アトルニア人の血を引く子供が流民になったり奴隷に売られることはままあるので、奴隷市場で見つけたら買い取ってアトルニアに連れて行くのだそうです。国策だと思われたら吹っかけられるから、「変わった奴隷が好きな変なマダム」で通していて、内部通報者にそういう奴隷が入ったら知らせるように工夫しているのだそうです。

マダムはDXに、お礼ならライナスとルーディ—に言え、と言います。埃まみれのDXを介抱したのは彼らなのでした。二人とも勉強熱心で偉い、とマダムは言います。ルーディーったらあなたの…と言ってマダムは笑っていますが、子どもの頃DXに女の子だと勘違いされて「大人になったら結婚して」と言われた事件(笑)を聞いたのでしょうか。

そこにルーディーが入ってきます。そしてルーディーが抱いていた小動物がDXの懐に飛び込んできました。それは犬ではなく、小さな槍熊(レーカーベア)だったのです。

これはDXの故郷である(そしてクエンティンによって連れ去られたDXの父親・リゲインの領地でもある)国境に近い山奥の町・エカリープの近くにも住んでいる人の言葉を解する獣だ、ということが15巻で語られていました。DXと親しい槍熊のボーイには、ライナスとルーディーもそのときに会っているのです。

やはり連れてきてよかったなあ、というルーディー。そしてその時(DXがカリファから買い取られたとき)のことが回想されます。

ライナスと戦ってまわされ、倒れたDXに、奴隷仲間のボルカが駆け寄ってきます。そしてその「犬のような獣」はDXがやられていると思ってライナスに飛びかかってきたのでした。ルーディーがその「犬」を拾い上げているとき、ライナスはDXを触って、なんでこんなふにゃふにゃなんだ、というとボルカは、「ここの水は毒があってカリファが浄化してるんだが、完全には無毒に出来ない。アトルニア人の血を引いていると耐性が弱くなるらしい」といいます。ここを離れればすぐ元気になる、というボルカの奥さんナナンの言葉を聞いていたルーディーは、マダムに犬も一緒に買ってくれ、とねだります。ルーディーの「若いツバメ」のような様子を見てカリファは、「マダムの美少年趣味」にあきれ顔。結局DXと一緒に買い取ることになったのでした。

この槍熊、洗うの苦労したよ、というルーディーを、DXは抱きしめて、ありがとう、というのでした。

いままで、DXのこんな場面、見たことありませんね。DXは、自分が救われたことも嬉しかったでしょうけど、この子が救われたことも嬉しかったようです。しかし夢のなかで槍熊のボーイやガール、そしてこの「犬」のリトルの名を呼んでたとライナスにいわれ、恥ずかしがっています。

マダムはDXたちを抱き枕にして満足していたご様子ですが、まあそんな話もここまでです。

「それより何があったか思い出せるなら話してちょうだい、DX公子」

そういわれてDXは我に返ります。とにかくオズモおじさん(リゲインの親友で議会の議長、つまり政府の中心人物)に知らせないと、といいます。ディアはとらわれているし、六甲たちはユーハサン砦。俺が買われて何日ですか、というDXに、二日よ、とマダム。

マダムは言います。

「あなたたちには言ってなかったけど、ルッカフォート将軍と奥方(DXの両親)が行方不明になってるの。しかも多い継承候補者が奴隷市場で売られてるなんて異常事態にもほどがあるわ」

やはりライナスもルーディーは知らなかったのですね。ライナスたちが父親に強制的に「留学」させられたのは、その件が発覚する直前のことでしたから。二人ともビビっています。

DXは言います。クエンティンが王政の撤廃を強行しようとしています、と。両親を誘拐したのはクエンティンです、というDX。自分が奴隷に売られたのはユージェニ姫によってだが、彼女はリルアーナ王女(ユージェニの母で前王の娘)のかわりに国を奪い返そうとしている、と。

そしてDXはいいます。クエンティンとユージェニは違う、クエンティンは本心を見せない、彼は欲しいものがない、ただ壊したいだけで何も要らないんだ、とDXは言うのでした。それを聞いてマダムはぞくっとします。

事情通のライナスは、クエンティンが前王がクレッサールとの戦争の際に滅んだザンドリオ領の生き残りだと言うことを知っています。しかしそこから先は、多くの人が気がついてはいても口にはしていない「秘密の領域」に属する事柄になるのでした。

つまり、「革命の真実」に関わることについてです。

そのことについて、ライナスたちに言ってもいいのか。このマダムに言ってもいいのか。DXは決断を迫られた表情をしています。

マダムは「大人」であり、ある種アトルニア国家の「密命」を帯びてここに居る人なわけですから、事態を打開するためにはマダムに状況を理解してもらわなければならない。そしておそらく状況的に、マダムはすべてを呑み込んでいるに違いありません。ですからマダムに話すことはいいのですが、ライナスとルーディーに話すことは、彼らをこの大きな出来事に、つまり彼ら自身を危険に巻き込むことになるわけです。

ライナスはそのことに気がついて、しまった、と思います。「もし自分たちがDXの口から事情を知って俺達に何かあったらこいつは自分のせいだって凹む。マムがこの話を俺達に聞かせるか、俺達を天幕から出すか、決めて下さい、従うから」と言います。

ライナスは大体はわかっているのですね。しかしルーディーは多分全然知らない。ライナスは、前王が戦争の際にザンドリオを滅ぼしたのは本当なのか、クエンティンはその復讐のために玉階になったのか、ときいているので、もうかなりいい線まで迫っています。ルーディーは、「前王はとっくに死んでるじゃないか、DXのお父上が革命を」と言ってますから、「革命の際、オズモとリゲインが王に退位を迫り、王は自害した」という公式的な「革命」についての理解から離れていないのですね。

しかし実際には、亡くなった妻への妄執にとらわれ、娘のリルアーナを妻だと思い込み、リルアーナが逃げ込んだザンドリオを滅ぼした狂った前王を、リゲインは斬り殺してしまった。それが「革命の真実」だったのです。このあたりは16巻でDXはリゲイン自身の口から「革命の真実」を知らされたのですが、そのことによってDXは、「王位継承権者としての自覚=いつまでも権力嫌いではいられない」という重い事実を突きつけられることになったのです。

ライナスは友達思いね、というマダム。そして彼女は、「あなたはどうしたい?DX・ルッカフォート」と尋ねます。

DXは決意に満ちた表情で言います。「ライナスならいずれ本当のことを知ると思う。俺は君たちを裏切らない。だから俺から聞け。その上で頼みがある」と。そしてライナスも、「望むところだ」というのでした。

これは、両親のこともありますが、やはりまずはクエンティンにとらわれているディア(メイアンディア・クラウスター。DXが思いを寄せているのですが、すでに王に即位するファラオン卿との結婚が決まっています。)のことが気になっているのでしょうね。(そしてDXの妹のイオンもメイドに化けてディアと一緒にいるのですが、DXはおそらくはディアの心理的な操作によって彼女がイオンであることに気がついていません)ですからまずはその辺のことに関する解決を託そうということではないかという気はします。

そして、「アトルニアに敵対的な部族」にクエンティンから引き渡されてしまったDXの両親のこと。一度に両方を追いかけることは不可能ですから、どちらかをライナスたちに託すことになるのかな、と思います。

それにしても、ようやく物語が動き出しました。クレッサールに入ってから、本当によくわからない状況の中を進んでいた感じで、それが12話(つまり1年)くらい続いていたので、なんだか息を止めてプールの水中を泳いでいるような感じでしたが、ようやく息が出来た感じです。やはりライナスやルーディーが出てくるといいですね。マダムも含めて、強力な援軍あらわる、という感じです。

25巻にはテールピースで五十四さんの姿に変えられた六甲の話が、またユーハサン鎮守に関する追加エピソード(スレイファン卿のくだり)が語られていて、クレッサール編がよりわかりやすくなっていますが、その辺りも含め、ストーリーが動き出して俄然面白くなってきました。

次回も楽しみにしたいと思います!