ぼくらのへんたい 6 (リュウコミックス)
ふみふみこ
徳間書店

コミックリュウ11月号でふみふみこさんの『ぼくらのへんたい』第28話「めがね」を読みました!


前回のラストで引きこもっている「渋谷先輩」のところへ行った女装したままのパロウ。呼ばれて行きはしたものの、ひきこもりで風呂にも入っていない感じの先輩に近づきたいと思えない、ということをはっきりと言います。この時のパロウが着ているのは、9月号でまりかと会っていたときに着ていた服と同じようですが、白いジャケットは着ていません。これはまりかの家に置いてきたのでしょうか。いや、今見ると10月号で先輩の家でも着ていますね。ここで脱いだということでしょうか。


パロウに圧倒された先輩は、「もういい。帰れよお前。」といいます。「怖いんですか」と重ねるパロウ。先輩を押し倒して、「一年以上引きこもっている先輩と僕どっちが力強いと思いますか」と迫ります。先輩を手込めにしよう、というのでしょうか。


しかし二人の眼鏡がぶつかってかちっと言います。「お互い眼鏡をつけているとぶつかって邪魔なんですね。知らなかったな」と言って笑うパロウ。その顔を見て、先輩は「こいつのこんな顔、久しぶりに見たな」と思います。


それはまだ、二人の関係が泥沼化する前。一緒に帰ったり、パロウが先輩の眼鏡をかけて恥ずかしそうな顔をしたり、たわいもないやり取りをして、パロウに「かわいいなおまえ」とか言っていた頃。でもパロウの言葉で現実に戻されます。「だからいつも眼鏡外していたんですか」


先輩は答えます。「あんまお前の体見たくなかったから」パロウは笑います。「そうじゃないかと思ってたんですよ。」起き上がって先輩は言います。「久々に見たわ。お前がそうやって笑ってるとこ。」そういってまた仰向けにひっくり返り、「なんでこうなったのかなオレ」と言います。先輩は言います。


「帰れよ。そんでもう二度と来んな。俺からももう二度と連絡しない。今度こそ本気だ。お前はもうここに来るようなやつじゃないだろ」


それは多分、「俺なんか見捨てろよ、でも」という気持ちだったのでしょう。


パロウは、先輩の眼鏡を取ります。そして下に落とし、ストッキングの足で踏みつけます。音を立てて割れる眼鏡。焦って「なにすんだよ」と取り上げますが、すでにレンズは割れ、つるはぶらぶらになっています。「あーあーもー」という先輩に、パロウは言います。


「渋谷先輩。僕、先輩のことが好きでした」


そして去ったパロウ。先輩は、「過去形かよ」と思います。


このパロウの愛と憎しみの表現は、なんというか、女の人っぽいなあと思います。でもなぜか、それがパロウの行動としてはすごく納得できるものがあるんですよね。何かそこのところが不思議です。まりかが常に女の子でいたいと言うある意味骨太な強さを持っているのに対して、パロウの方が何か本質的な意味で女性っぽい感じがしないわけじゃないよなあと思います。


場面が変わると、久々の亮介(ユイ)。久々に学校に顔を出し、友達たちが「どうしてたんだよおおお」と感動しています。「ちょっと親が病気になっちゃって。悪いな心配かけて」という亮介に、事情を少し知ってる親友二人は「そっか」と返事をします。そして「りょーちん、先生が呼んでる」と呼びにきたのは、付き合ってるはっち。というか、気が錯乱している亮介の母を何とか病院に連れて行ってくれたのははっちとその両親だったのです。


職員室に行った亮介は、先生から「これだけ休んだら授業について来れないだろ」と課題プリントをわたされます。「父親と蜂谷から話は聞いた。がんばれよ」と言われます。いやな先生だと思っていたのに、自分のことをさりげなく気を使ってくれているんだな、と思うのでした。


放課後、親友二人に一緒に帰ろうと言われた亮介でしたが、「この課題やってから帰るわ」と教室に残ります。それなりに、やる気が出たのかもしれません。二人の後ろ姿を見て亮介は、「ああオレ、帰ってきたんだ。帰ってこれた」と思います。思いながらも、何か割り切れない気持ちが、自分の中にあるのを感じているようです。


「よっ」と言って亮介のそばに来たのははっち。「がんばってる?」ときくはっちに「がんばらねーとやばいからな」と答える亮介。母親を入院させたその時から、会ってないのでしょうか。


はっちは「あれからおばさんのお見舞い行った?」と尋ねます。亮介は「行ってない」と答えます。


………そうか。亮介はあれ以来、母親の病院へ行ってないのですね。


何かいろいろと胸に去来するものがあります。


「私はときどき行ってるよ」というはっち。「あれからおばさん薬飲んでだいぶ良くなったんだよ」というはっち。でも亮介は、自分が母親のためにしてきたこと、自分が投げ出したこと、そして入院のときに母親が自分に行った「誰だお前」という言葉を、忘れられてないのでしょうか。いろいろ話しかけて、「だから今度一緒に」というはっちに「課題やんなきゃなんねーから」という亮介。はっちも、亮介の心を慮ってしまい、「そうだね」というしかありませんでした。


放課後遅い時間、帰ろうと廊下を歩いている亮介の耳に、どこかで聞いた声が聞こえてきます。それは、まりか(裕太)とあかねがお喋りしながら歩いている声でした。二人は家庭科部の帰りなのでしょうか。


朗らかに笑うまりかの顔を見て思わず「青木……?」と声をかける亮介。振り向くまりかの顔は、もう本当に女生徒です。


亮介は、まりかが長い髪にセーラー服でいるのを見て、あっけにとられます。「唯さん……」と話しかけられ、真っ赤になってしまう亮介。今までずっと女装のまりかを見てはいましたが、まりかの決断も知らない亮介は、八の字眉毛をして「どーしたんだよお前そのかっこ」というのが精一杯。


まりかは「学校来てたんですね!心配してたんですよわたし!」ともう完全に女子の口調で近づき、亮介はそれこそ圧倒されるのでした。


このまりかの微笑みは、破壊力があります。(笑)


いや、まりかって実際、破壊力のあるキャラなんですよね。最近ようやく分かってきました。一番気になる、一番魅力的だと思ってきたのですが、「一番破壊力がある」という言葉が一番ぴったり来る感じです。(笑)

こんなまりかを見たら亮介も改めて魅かれてしまうでしょう。何か腐女子的なことを言いそうになってしまいますが、(笑)でもそれこそ男でも女でもこんな可愛いのはルール違反、みたいな感じです。


さて来月、この二人の間にどんな会話が交わされるのか。これはちょっと楽しみです。また一カ月が長くなりそうです!(笑)