海月姫(14) (KC KISS)
東村アキコ
講談社


東村アキコさんの『海月姫』第14巻を読みました!

東村アキコさんの海月(くらげ)おたくの月海(つきみ)を主人公にした『海月姫』、能年玲奈さん主演で実写映画化されることでも話題になってますね。

月海は海月おたくでその海月愛を表現したドレスをデザインし、政治家の御曹司・女装の蔵之介がモデル兼プロデュースという感じで頑張っていたのですが、月海のデザインしたJELLY FISHのドレスをシンガポールの新進アパレルメーカー・AVIDYのカイ・フィッシュ社長が見て、スカウトされてしまいます。

おたくたちが身にあいそうもないドレスをつくっていたのは、ちょうどその頃、月海がおたく仲間と楽しく暮らしていた天水館は再開発で買収をかけられていたからで、それを阻止するためにお金を稼ぐという目的があったのですが、フィッシュ社長は天水館を買い取って彼女たちが住み続けられるようにする代わりに、月海をデザイナーとして『買いとった』のでした。

13巻では東京で様々なデザイナー教育?が月海に施されて行って、アパレル界のことがいろいろ説明されていて面白いですし、それまでの同好会的なノリでのドレス生産とは別次元の話が展開して行ったわけですが、14巻ではついにシンガポールに行くことになります。

なんというのか、読み始めた頃のことを考えると『海月姫』がこんな世界に展開して行くというのは全く予想外のことなのですけれども、逆にいえば田舎のバレエ団で頑張ってた子がいきなり超有名なバレエ団の花形に抜擢される山岸凉子さんの『アラベスク』みたいな世界と言うか、つまり少女マンガの王道のシンデレラストーリーを現代に再現しているんだなあと思います。そのシンデレラが「おたく」だというのが今日性があるわけですが。

しかしまたそのシンデレラだったら王子様のところにいるのがカイ社長で、なんかこれがまたカイ社長も何を考えているのやら分からないところがあるのですが、三ツ星フレンチと言ってもピンとこない月海を屋台のカレー屋に連れて行ってフィッシュカレーを食べたら社長の名前を取ったんですかと言われて大ウケしたり、だんだん打ち解けて行くところがヤバいかも、と思ったりするわけですね。

そして女装男子(しかも超美人)の蔵之介がシンガポールまで追いかけて行って女性モデルとして潜り込んだり、「王道少女マンガ」を現代風俗?で換骨奪胎して行くところが手練だなあ、と思いました。

今まで蔵之介の兄で政治家の父の秘書をやってる修が、童貞らしくゆっくりと勘違いしたり妄想を混ぜたりしながら王子様ポジションになるのかなという観はありましたが、ぼやぼやしているうちに月海をカイ社長に取られてしまって、もう兄貴には任せられないと蔵之介自身が王子様になってシンガポールに乗り込んで行くわけです。でも月海は蔵之介を「強くて美しい男のお姫さま」だと認識していて、何かまたその認識が上手いなあと思ってしまいます。

今回も、月海に天水館のみんながメッセージを送るために国会前デモに参加して月海のつくったJELLY FISHのドレスを来てテレビに映る場面など、やはり蔵之介はかっこいいなと思いましたし、またその映像を見た月海が国会議事堂の前にドレスを来て立つ蔵之介を見て、お堅い場所なのにそこがお城みたいに見える、というのは本当にそうだなあと思いました。

今回もいろいろと見所満載ですし、いろいろなタイプのイケメン男子が花盛り、というのが『キャンディ・キャンディ』みたいな感じだなあと思います。

特にフィッシュ社長、いろいろと苦労した生い立ちであることは確かなんですが、複雑なキャラクターで、月海の朴訥さに癒される感じもあって、だいぶ興味が引かれて来ました。単行本でしか読んでないのでなかなか次がいつ読めるのか、特に今回は4ヶ月の休載期間もあったのでだいぶ待った感じですが、また次の巻を楽しみにしたいと思います!