別冊少年マガジン 2014年10月号 [2014年9月9日発売] [雑誌]
Kindle版
講談社


別冊少年マガジン10月号で『進撃の巨人』第61話『終幕』を読みました!

ここの所ずっと、調査兵団と巨人との戦いではなく、その反撃の最大の武器であるだろう巨人化能力を持ったエレンをめぐる「王政」との対立を軸に話が進んでいたわけですが、調査兵団はエレンとヒストリアをケニーら中央憲兵に攫われ、リーヴス商会会長殺しの罪を着せられて追われる立場になっています。

第60話ではリヴァイ班は中央憲兵の拠点を襲撃しましたが、そこにはエレンたちはいませんでした。一方ハンジは新聞社・ベルク社を訪れ、取材するよう申し込みます。再三にわたる巨人の侵入によって疲れ切ったトロスト区で、リーヴス会長の息子のフレーゲルが中央憲兵に追いつめられ、そこで中央憲兵の本音を聞き出し、トロスト区の住民に聞かせます。ハンジたちは中央憲兵を制圧し、住民たちはフレーゲルを中心にまとまります。ハンジはベルク社に一連の事実を報道するようにいうのですが、年配の記者は首を縦に振りません。一方調査兵団団長のエルヴィンは王の元に引き出され、最後の申し開きをさせられている、という場面で終わりでした。調査兵団は絶体絶命のピンチに追いつめられている、そんな雰囲気の終わり方でした。

第61話は冒頭に王都の場面。王都では全兵団の幹部が集合して調査兵団の解体が進められ、エルヴィンの処刑準備が行われています。そして王の前で、今までの主張を繰り返すエルヴィン。4人の王政の中心メンバーと王に向かってエルヴィンは説きます。調査兵団こそは人類の矛であると。迫り来る敵から身を守るのは盾ではなく脅威を排除する矛である、といいます。そしてもし今ウォールローゼが破られたら、ウォールローゼの住人たちはウォールシーナの中に逃げ込み、彼らとウォールシーナの住人たちの食糧の取り合いによる内戦が勃発する、とエルヴィンは主張するのです。もしそのようなことになったら調査兵団は真っ先に巨人たちの懐に飛び込む。それ以外に巨人やその事態に対処する秘策が、何かあるのでしょうか?とエルヴィンは尋ねます。エルヴィン自身が一番聞きたいのはそこなのですね。

しかし王政メンバーはリヴァイたちが憲兵を殺して逃走したことに言及し、調査兵団は王政に対する敵対感情を持っている、と断じます。そしてさらに駐屯兵団のピクシス司令に、共謀の意志があったのではないか、と問いただします。

ピクシスは、「あり得ませぬな、人同士の殺し合いほど愚かな話は」と言い放ちます。そして「もし巨人が壁を破って入ってきた時、人があまり残っていなければ巨人に呆れられてしまいましょうぞ」と皮肉を発します。苦笑いする王政メンバー。

ピクシスとエルヴィンはこの計画をめぐらせた時の会話を思い起こします。「王政の隠し持つ情報が人類の切り札である可能性がある以上、つまり巨人の壁を築き人類の記憶を改竄したその力が王政にあるかもしれない以上、それらを永久に失ってしまう危険性がこの革命にはある」とピクシスはいいました。結局エルヴィンは引き立てられ、思います。「これでよかったのだろう、この人類を救うのが我々であるとは限らないのだから」と。エルヴィンは観念しているようでもあり、まだ期待を繋いでいるようでもあります。

しかしその時、ひとりの兵士が走り込んできて、「ウォールローゼが突破されました!」と報告します。動揺する兵団の幹部たち。特にエルヴィンと同期で憲兵団の師団長であるナイルは獄中でのエルヴィンとの会話を思い出します。お前の家族はどこに住んでいる、と尋ねるエルヴィンに、ウォールローゼ東区だ、と答えるナイル。エルヴィンは、ピクシス司令にあることを委ねた、と言っていたのでした。ナイルはもしやこれが…と思います。もしその時が来たとき、選ぶのはお前だ、そして兵団の幹部たる彼らだ、とエルヴィンはナイルに言ったのでした。

ウォールローゼ突破の報告を聞いてピクシスは、「避難経路を確保せよ!」と命じます。「駐屯兵団前線部隊は全兵力を東区に集結させ非難活動を支援する!」と。

しかし王政の中心メンバーは「ダメだ!」と叫びます。「ウォールシーナの扉をすべて閉鎖せよ!避難民を何ぴとたりとも入れてはならんぞ!」と。それを聞いてナイルは、あっけにとられ、そして怒気を含んで聞き返します。「それは人類の半数を見殺しにするというご判断でしょうか」と。中心メンバーの4人は、「先ほどそのものが言った通り、内戦が始まるだけだ!わざわざ敵を増やすことはあるまい」と言い放ち、兵団幹部たちはあっけにとられます。「我々は最上位の意思決定機関であるぞ!さっさと動かぬか!」と。凍り付く兵団幹部たち。

王政メンバーは小声でひそひそと「我々は今かろうじて手段を手にした。あの方がそれを手中にするまで数日間の辛抱であろう」と言っています。これが、レイス卿の元に送られたエレンとヒストリアに関係があることは、もはや疑い得ないでしょう。「あと数日さえ乗り切れば何とかなる」とひそひそ言う4人。それに対し兵団幹部たちは、「扉を閉鎖する」というものもありますが、ナイルは「閉鎖は阻止する」と発言します。王政に逆らうのか、と動揺する他の兵団幹部。

そこに全軍の総司令官であるザックレー総統が入ってきて、「私も加勢しよう」と言います。銃を捧げ持つ多くの兵士たちを引き連れたザックレーは室内に入って来ると、「先ほどの報告は誤報です。ご安心ください」と王政メンバーに言います。動揺する王政メンバーたち。「何の真似だ!」と叫ぶ彼らに、ピクシスは「首謀者ならワシじゃ」と言います。エルヴィンはピクシスにこの「誤報」を依頼したのでしょう。「彼らに尋ねてみましょう。彼らは人類の手綱を取るにふさわしいのか。決めるのは王政です」。エルヴィンはピクシスにそういっていたのでした。

ピクシスの発言を聞いて唖然とする王政メンバーたち。ピクシスはいいます。「あなた方の意思次第ではここに至る反逆行為を白状し全員で首を差し出す覚悟じゃった。しかし自らの資産を残り半数の人類より重いととらえておいでならば我々は大人しく殺されとる場合じゃありますまい。たとえ我々が巨人の力やこの世界の成り立ちに関し無知であろうと人類を生かす気のないものを頭にしとくよりいくらかましでしょう」と。

今回のピクシスは全くかっこいい。痺れますね。ピクシスの「彼らの返事は意外じゃったかの?」という問いに答えたザックレーの「いいや?ちっとも」というセリフも冷徹ですごいと思いましたが、やはり今回はピクシス回だなあと思います。なんというか全体に、決意した大人が動くことのすごさ、みたいなものを強く感じました。

民衆は王にかしずくのみ、地方の貴族共も黙っておらんぞ!と叫ぶ王政メンバーに、ザックレーはベルク社の号外を示します。ベルク社は結局、ハンジの説得に応じ、正しい情報を記した号外を出したのでした。

王政メンバーは玉座で眠りこけていた偽の王を叩き起こします。「起きろ老いぼれ!」「ホッ!なんじゃ、飯か?」……あまりにあまりでずっこけてしまいました。クーデターは成功し、王政メンバーはザックレー指揮下に押さえられ、エルヴィンの手錠は外されました。しかし嬉しくないのか、とナイルに問われてエルヴィンは答えます。「人類はより厳しい道を歩まざるを得なくなったぞ」と。そう、王政メンバーの知るこの世界の秘密を知る可能性は、より低くなったと言うべきなのでしょう。「世界の秘密を何も知らない」兵団幹部たちが、壁の中の世界を導いて行かざるを得なくなったのです。

一方、リヴァイ班。リヴァイを中心にリヴァイ班の面々が号外を覗いて汗をかいています。この構図は、エルヴィンの反乱を起こす指令を読んだ時の104期たちの構図と同じですが、エレンの代わりにリヴァイが中心になっています。ミカサの表情がイケてます。号外を持ってきたのはハンジとマルロとヒッチ、60号で草原の中、リヴァイ班に迫っていた3人の人影は、実は彼らだったのですね。「調査兵団の冤罪は晴れ君たちは正当防衛。王都も行政区もザックレー総統が仮抑え中だ。今のところ反乱の反乱は起きてない。我々は自由の身だ」と。飛び上がって喜ぶ104期たち。泣いて喜ぶ彼ら。本当に手放しで喜ぶ場面というのは、このマンガ始まって以来初めてではないでしょうか。

お前ら一体どんな手を使った?と聞くリヴァイにハンジは、「変えたのは私たちじゃないよ」と答えます。ベルク社の若い記者は年配の記者に迫り、「王政の連中は民衆を救う気がないんですよ?今度巨人に襲撃されたらもう何も残りませんよ!会社も!家族も!」と説得し、結局彼らは動いたのです。それをさしてハンジは、「ひとりひとりの選択がこの世界を変えたんだ」というのでした。リーヴス会長、フレーゲル、ベルク社、ピクシス、ナイル、ザックレー。そう彼らが動いたから起こりえないと思われていた王政へのクーデターが成功したわけですね。

ここは本当に読みながら、腹の底が熱くなるような感じがしました。

「ハンジ、すまない。お前から預かった3人を死なせてしまった」というリヴァイ。ここにいつものように部下思いのリヴァイの表情がうかがわれますし、それを労る目をして「でも仇の鉄砲共はさっき君らで無力化したんだろ?」というハンジに、「全部じゃねえ。その親玉あたりとエレン、ヒストリアはまだ別の場所にいる」と言います。そして、「早いとこ見つけねえとこの革命も頓挫してしまう」と。

ハンジは手紙を示していいます。「エレンとヒストリアの居場所だが、心当たりがある」と。「どうやらこれに賭けるしかなさそうだね」といいます。引き締まる104期の表情。特にミカサとアルミンは、強く鋭い目をしています。そう、エレンを取り戻す。ようやくその時が来た、のですね。

「この戦いはそこで終わりにしよう」というハンジ。その言葉の後ろに描かれているのは、ケニーとレイス卿、そして地下牢のようなところで鎖につながれているエレンと、何やらレイス卿と話している自由の身になったヒストリア。一体どういう状況なのでしょうか。もしレイス卿が「記憶を改竄する」能力を持っているなら、何が起こっているのか見当もつきません。早くも次回が待ち遠しいですね。