ピアノの森(24) (モーニング KC)
一色まこと
講談社


モーニング39号で一色まことさんの『ピアノの森』第231話「最終審査結果発表(1)」を読みました!

前回35号に掲載され、「次回は40号」と予告されていた『ピアノの森』ですが、一週早く39号に掲載されていました。38号の次号予告に名前があったので、掲載されているかな?と思ってDモーニングを開いてみると、載ってる!ということで午前零時から盛り上がってしまいました。

さて、最終審査結果の発表が始まりました。扉絵はファイナルに残った12人。アン・チャンス(韓国)、エヴゲニー・ドミトリエフ(ロシア)、オーブリー・タイス(ドイツ)、レフ・シマノフスキ(ポーランド)、オレーシャ・ユシェンコ(ウクライナ)、パン・ウェイ(中国)、一ノ瀬カイ(日本)、ダニエル・ハント(アメリカ)、向井智(日本)、ソフィー・オルメッソン(フランス)、アン・チャンウ(韓国)、アレグラ・グラナドス(アルゼンチン)。

読む前に、誰が入賞(6位まで)になるか、予想してみました。1位はカイ、2位はパン、3位はレフ、4位はグラナドス、5位はタイス、6位は、ソフィーかなと。まだ細かいところは分かりませんが、5位までは絶対残るだろうと思っていたのですけど6位のソフィーがひょっとしたらダニエルと入れ替わるかも、というくらいだったでしょうか。ユシェンコは線が細いと言われてたからダメかなとか、まあ漫画の中の描写だけを参考にして予想する(2次予選のあとのファイナルに残るキャラを当てよう、という企画があって、私も応募したのですが、ドミトリエフではなく雨宮修平を入れてしまったので(ここが一番難しかったですよね)外してしまいました。

各賞に関しては、マズルカ賞、ポロネーズ賞、ソナタ賞、コンチェルト賞のうち、マズルカ賞はカイが取るだろうなと思ったのですが、あとはちょっと予想がつかないな、という感じでした。

以下は、ネタバレに触れていますので、ご注意の上お願いします。

さて、最初の場面はワルシャワフィルの打ち上げ風景。もうだいぶ出来上がっているのですが、マエストロによると、「これから入賞者たちとの世界ツアーがある」とのこと。どうせ発表は遅れる、と高をくくっていた楽団員たちですが、時間どおりの発表になって慌てている、というのは会場にいる人たちと同じですね。

そしてロビーの階段に並んだ審査員たち。緊張するコンテスタント、この会場でカイと一緒にいるのは先生の阿字野、後見人みたいなジャンジャック・セロー、小学生時代からの親友でありライバルでもある雨宮修平、小学校のコンクール会場であって以来、カイのピアノに取り憑かれてきて今回は腱鞘炎の為に出場を辞退した丸山誉子とそのばあやの白石、先生の司馬、というメンバーです。雨宮の独白でこの場面が語られて行きます。

ポーランド語がわからない、と緊張する誉子に修平は、通訳の声を聞いていれば大丈夫、とアドバイスし、それによって自分自身も落ち着きますし、また「分からなくてもカイ・イチノセの名前だけは不思議と耳に飛び込んで来る」と言います。修ちゃん(馴れ馴れしい・笑)、全くそういう耳なんですよね。カイは自分の名前さえ聞き落としたことあるんですけどね(笑)。でも、誉子も白石も、なるほど、と納得しています。

そしてまずポロネーズ賞の発表。カイを追いかけて日本から来た佐賀先生(カイの小学校時代のコンクールの審査員であり、カイがマリアとして女装して弾いていたクラブでマリアを追いかけていて、いろいろあってカイの実力を本気で評価している)は心臓が高鳴り過ぎて「死ぬかもしれん」と言っています。

発表された名前は「ウェイ・パン」。これは予想どおりだ、という人が多いです。そしてマズルカ賞。一瞬の間合いのあと、発表された名前は…

「カイ・イチノセ」

上気した修平、誉子、セロー、司馬、目が血走った佐賀と目がまんまるの白石。呆然とするカイと阿字野。3コマかけて驚きが喜びへと変化して行きます。マズルカ賞を取ったのは日本人初なのだそうです。そしてコンチェルト賞。

「カイ・イチノセ」

涙ぐむ阿字野とカイ。修平は「一体…何が…」とわけが分からなくなりかけています。そして「ソナタ賞」。

「カイ・イチノセ」

見開きで、会場風景。カイが阿字野に飛びついて抱きつきます。本当に小学生の子供みたいに。泣けてきますね…

会場は騒然としていますし、ワルシャワフィルの面々も「コンチェルト賞は当然」「マズルカ賞でごまかされなくてよかった」といいながら、「イチノセがソナタ賞も取りました!」というニュースにはさすがに「ええ!!?」と驚いています。「何が起きたのだろうか?何でもいい。これが夢でなければ何でもいい!」と思う修平。「信じられるか?ヤツらが神審査したぞ!」と叫ぶ辛口評論家。「ここまでは構成だろ!」と思惑が当たって悦に入る新聞記者シモン・ハウスネル。佐賀先生は緊張と興奮のあまり倒れ込んでしまっています。

そして入賞を逃した6人の発表。アルファベット順でアン兄弟、ドミトリエフ、ハント、向井、ユシェンコの名前が発表されました。プレス陣は、ユシェンコが落ちたと騒いでいます。ユシェンコはすでにプロのピアニストとして活躍中なので、これは1次のアダムスキの落選と同様、大きなニュースになるわけですね。

今回はここまでです。次回は40号に登場予定、と書いてありますが、40号は来週号なんですよね。で、次号予告を見てみると「ピアノの森」の名前がない。2週連続で読めたら神展開ですが、まあちょっと期待薄かなとは思います。さてどうなるか…

今週はやはり、カイと阿字野の喜びの場面が一番の見所だったかなと思います。最初のマズルカ賞ガキ待った時の表情もいいですし、コンチェルト賞の涙ぐんでいる場面もいいですが、グレー(?)の背広で直立して飛びついて来るカイをしっかり受け止めている阿字野の姿が、とてもいいなあと思いました。カイは本当に、子供みたいです。日本で見ているPクラの面々は、カイがどういう賞を取ったのか分かったかな?イヤ分からないだろうな…ポーランド語どころか英語だって怪しそうな面々だしな…とか、いろいろ思います。あと森の端を仕切ってるやくざ?の親父とかがどういう反応をしているかとか、ちょっと余計なことも気になりますけどね。

私の予想としては、入賞者はまああたりだったかな、と思いました。「一番良かったピアノを」選ぶと言う方針が改めて徹底された為に、いろいろな政治的な思惑を超えて、一番良かったピアノが選ばれている、ようです。ですから、雨宮父などそうした政治的判断に長けた玄人たちの判断よりも、修平の素直な「ユシェンコのコンチェルト2番はパンウェイに比べてみると線が細い」という判断が気になって、ユシェンコは入賞はしないだろうな、というふうに思ったのですよね。

マズルカ賞はカイだろうと思いましたが、コンチェルト・ソナタまでは欲張り過ぎかな、と思っていて、まあでも両方とも本編でのあの描写を見る限りではカイだけどなあ、とは思っていました。でも多分、「最もポーランドらしい舞曲」であるマズルカでは賞を取ると思っていました。それはつまり、考えてみると「幼い頃から大地から生まれたような曲を弾かせると抜群だった」カイが賞を取る、というのはカイの天来の才能の証明なわけですね。

そして、ソナタで賞を取ったというのは、阿字野の指導が間違っていなかったと言うこと。「カイの生来のピアニスト能力と、阿字野譲りの構成力が存分に発揮された、ということになります。そしてコンチェルトで賞を取ったということは、カイのアンサンブル能力が誰よりも優れていた、ということ。停電というアクシデントを越えてオーケストラと観客を導く力を持っていたわけですから、ラストに楽譜のない音を弾いたことも、些細なことにしてしまったのでしょう。

ポロネーズは、私はパンウェイの演奏する5番を聴いて(いや、読んで、ですが)初めて実際に聴いてみたのですが、というかそれ以来ポロネーズの演奏を何人も聴き比べるようになったのですが、なんかこのすごい曲の印象はもうパンウェイの曲、と言う刷り込みができてしまっていて、(ソナタ2番の「葬送」もそうですが、やはり私の中ではポロネーズ5番ですね)何度聴いてもパンウェイの演奏場面を思い出してしまいます。

パンウェイは呪われた出生を持ち、名誉を求める冷酷な商人に買われてピアノを特訓させられ、その中で発見した若き日の阿字野壮介の「ポロネーズ5番」の演奏を聴いて、取り憑かれたようになぞって弾いた、そういう宿命の曲なのですね。

そういう意味ではパンウェイのポロネーズ賞も阿字野あってのこと。今回のショパコンは、自分自身は1次で落選してしまった阿字野と、それに抗議して審査員を辞任したセローのリベンジという形にもなっているわけですね。

ああ、感想を書いているうちにいろいろなことを思い出してきました。

そう、本当に長い長い伏線を拾い集めながら、物語はクライマックスに近づいているのだなと思います。

次回の掲載はいつになるか分かりませんが、楽しみに待ちたいと思います!