DVD付き 進撃の巨人(14)限定版 (講談社キャラクターズA)
諫山創
講談社


諫山創さんの『進撃の巨人』14巻限定版特典OAD『困難』を見ました!

12巻の時から限定版に付属するようになった特典OAD。今回は104期の訓練兵時代のエピソード、壁の中での訓練で、巨人は出てきません。2班に分かれた104期訓練兵たちが荒れ地の中にある目標を目指し、片道40キロの行程を往復すると言うもの。「現在公開可能な情報」によると「荒地行軍訓練」です。3.75話(細かい)という設定のためか、オープニングは前半の『紅蓮の弓矢』です。懐かしいですね。

アヴァン的に示されたのは、訓練兵たちが何者かに襲われ、クリスタが人質にされて首に刃を当てられ、手を出せずにエレンやジャンが悔しそうな顔をしている、という場面。

物語は、アルミンが語り手となり、アルミンの班はマルコが班長、エレン、ジャン、クリスタ、サシャ、コニー、ミーナ。アルミンは記録係です。第2班はトーマスが班長で記録係がミカサ。メンバーは他にライナー、ベルトルト、アニ、ダズです。。二つの班は目標地点で情報交換し、往路と別のルートで帰還する、というもの。訓練の目的は危機感のない状態でいかに危機意識を持続させうるか、というもので、確かにコニー、サシャ、ジャンは全く危機意識がありません。

この訓練について教官のキースが説明する場面は基本的には入校式の場面の流用ですが、オンエア時のミカサのドキッとするような印象は抑えてありますし、このDVDに出て来ないユミルは映されません。そう、ユミルファンには物足りないものになってしまったかもしれませんね。

第1班の方はお約束でエレンとジャンが言い合い。手を抜こう、と言うジャンに反発してエレンがお前がゆっくり行くなら俺は先に行くぜ、みたいに突っかかっています。ちょっとここの仲の悪さの演出は強すぎる気もしました。第2班の方は班長のトーマスがあまりに熱いコースに音を上げ、自信なげにミカサと進路の相談をしています。ミカサは何かの気配を感じますが、気のせいだと思います。ライナー、ベルトルト、アニの3人がかたまって休んでいる風景も、なんかちょっとつるみ過ぎな気もします。

巨大なトカゲと一緒に行進する1班。そのトカゲを見ながらサシャが「おいしいですよ」と言ってます。この辺りからメンバーに主人公補正と言うか、それぞれかっこいい感じが強調されていて、会話するジャンもサシャも格好良くなっています。退屈さに飽きてトカゲを捕まえに行ったジャンに、それをとどめに行こうとするエレン。刀を打ち合って、(というか彼ら、馬に乗っているけれども立体機動装置をつけているんですね)言い争いをする二人にマルコが止めに入り、コニーが「お前ら子供かよ」というのが可笑しいです。で、言い争ってる二人にサシャが怒って「美味しいです!」と叫ぶのを聞いてみな「…行こ」ということになります。

一方2班では事件が。ダズが置いておいた立体機動装置が、いつの間にかなくなっていたのです。アニが焚き火の痕をみつけ、馬車のあともあるということで、住人がいるという情報のないこの辺りでこういうものがあるということは…ライナーは「窃盗団かもしれない」と言います。訓練を中止した方がいいだろうか、というトーマスにライナーは、「目標地点でマルコたちに伝えてから戻った方がいい」と言います。この場面の最後にミカサが空を見上げる場面でなびく髪が、かっこいいです。凄く印象に残りました。

このOADでの見所は、主にそういうディテール部分だな、と思いました。

第1班も野営しています。またトカゲのネタでサシャが惜しがり、ジャンとエレンがケンカしています。彼らを止めようとする中、クリスタが何かの気配を感じます。クリスタが注意を促しますが、みなエレンたちのケンカに気を取られて気がつきません。

就寝後、クリスタはひとりだけ起きて泉のほとりで馬と過ごしています。そこに月の光が射してきて、ここはとても奇麗な場面です。「もののけ姫」のすべてを再生させる泉を思い出しました。そして物音がして「あっ」と小さな声をあげる場面でクリスタのアップ。大きな青い目と金髪、これは凄くクリスタの美しさが強調されていて、今回最も印象に残った場面の一つでした。

そして何者かが現れます。クリスタの叫び声、馬が走り去る音でエレンは目覚めます。見上げると、覆面をした男がエレンに銃口を突きつけています。彼らは立体機動装置を強奪し、ほしがる連中に売っぱらう、というのでした。エレンは男に飛びかかりますが、ジャンはその場を離れようとして撃たれ、顔に擦り傷を負います。エレンは殴り飛ばされ、他のメンバーは動けません。ここまでで前半は終わりです。

後半は、窃盗団たちは強奪した立体機動装置を二台の馬車に載せ、クリスタを人質に取ってその場を離れる場面から。打ち拉がれる訓練兵たち。全員で飛びかかれば何とかなったはずだというエレン。お前の無茶で皆が危険な目にあったと言うジャン。訓練は中止だというマルコ、同調するアルミン。「クリスタはどうする、俺一人でもクリスタを追う」というエレンに、ジャンは、俺も行く、と言います。「俺だって、あんなみっともねえままでいたくねえ」と。このジャンの表情がまたかっこいいです。そして他のメンバーもみな、決意に満ちた表情をするのでした。

サシャの提案で山の高いところに上り、窃盗団のあげた炊煙を発見したエレンたちは、彼らのすぐ近くまで行って様子をうかがいます。アルミンが、盗品を売り払う街はオーデルしかないといい、サシャは、森を突き抜ければ行ける、と提案して、彼らは待ち伏せの場所に向かいます。サシャが「キャホー」と言って駆け下りて行く場面も、見せ場の一つですね。

窃盗団の馬車は森の中を行き、クリスタは後ろ手に縛り上げられて横に渡した棒に腕を縛り付けられています。これもある種の見せ場でしょう。スタッフにそういう趣味の人が…(笑)

道の別れるところで待ち伏せする訓練兵たち。ミーナが「来たよ」といい(今回ミーナのセリフはこれだけですが、ミーナファンには嬉しいかも)コニーがターザンみたいに飛んで木を倒し、進路を塞ぎ、積み荷の音をマルコが聞いて、クリスタと立体機動装置がどちらの馬車に乗せられているかを判断する、ということになります。そしてその馬車をジャンとエレンが襲う。マルコが両方と判断し合図を送ると二人は2台目の馬車の幌を破って中に飛び込み、中にいた窃盗団を殴って馬車の外に放り出しますが、クリスタのいる1台目の馬車から車輪に銃を撃たれて馬車は壊れます。

2台目の馬車に追いついた訓練兵たちは立体機動装置を身につけ、1台目の馬車を追います。アルミンは信煙弾を打ち、周りに自分たちの居場所を伝えます。1台目の馬車ではクリスタを見張っていた男と馬を操るボス。抵抗するクリスタを撃とうとする男にボスは、そいつは金になる、と制します。銃を突きつけられて横たわるクリスタ。これも奇麗です。

そこに、立体機動装置を駆使するエレンとジャンが現れます。この立体機動の場面も見せ場ですね。エレンとジャンは馬を馬車につないであったひもを切り離し、馬車を止めます。エレンたちが馬車に近寄って行くと、ボスはクリスタの首に刀を当てて、エレンたちを脅します。これが冒頭の場面ですね。

窃盗団のボスは、独り言のように巨人から逃れても、こんな土地で何が出来る。人に迷惑をかけるなと娘には教えていたのに、と言います。これはちょっと、という気がしました。そしてそこに現れたのはミカサとアニ。立体機動装置を駆使して窃盗団の男たちを制圧します。クリスタが「殺さないで!」と叫びますが、これは男の独白を聞いたからですね。二人は、アルミンの信煙弾を見て彼らの居場所を知り、追ってきたのでした。

結局窃盗団は憲兵団に捕えられ、マルコが状況を憲兵団に報告します。アルミンの書いた報告書がキースに提出され、キースが読んでいるときに、アルミンは「我々は立体機動装置を奪われた時点で訓練を中止すべきだったでしょうか」と尋ねます。キースは「答える必要はない。ただ、俺ならばひとりの人間として困難な方を選ぶ。お前ならどちらが困難だ」と言います。アルミンは考えます。あの行程で起きたすべてのことが、自分たちに課せられた訓練だったのかもしれない、と。

歩哨任務につくエレンに、マルコが飲み物を持ってきます。「ジャンの方がリーダーに向いてる」というマルコに、俺はごめんだぞ、と答えるエレン。そして「みんな、どんな兵士になるんだろうな」とつぶやくマルコの横顔は、マルコが正式の兵士になる前にトロスト区攻防戦で死んでいることを知っている読者には、ちょっと思うことが出ますよね。

エンディングは「美しき残酷な世界」。予告編は劇場版の予告でした。

全体にストーリー上いろいろ不自然なところはあったのですが、まあそれはこういう構成だったから仕方なかったのかな、と思います。12巻の「イルゼの手帳」のようにはなかなか行かないんだろうな、と思います。今回はその中で、場面場面で凄く美しいところ、かっこいいところがあり、そういうところが見せ場だったのだなと思います。特にクリスタの場面が強調されていたと思います。この辺りで満足できるかな、というところですね。

15巻、16巻では限定版の付録として、「悔いなき選択」のアニメ化が特典としてつくそうなので、これはまた楽しみにしたいと思います。