進撃の巨人(14) (講談社コミックス)
諫山創
講談社


諫山創さんの「進撃の巨人」第14巻を読みました!

「進撃の巨人」、単行本の新刊はすでにコンビニでも売るようになりましたね。私も通常版はセブンイレブンで買いました。限定版はTSUTAYAの書店まで行って買いましたが、それを入手する数時間が待ちきれず、まずコンビニに走ったわけです。(笑)

14巻に収められているのは55話「痛み」、56話「役者」、57話「切り裂きケニー」、58話「銃声」。13巻に続いて巨人との戦闘シーンは出てきません。そしてついに、巨人たちと戦い、謎に挑んでいこうとする調査兵団が、それに干渉し妨害しエレンとヒストリアの身柄引き渡しを求める「王政府」とそれを支える中央憲兵と対決していこうという動きの中で、中央憲兵に命じられてエレンとヒストリアを捕えようとしたリーヴス商会の会長たちを捕えます。リヴァイは会長と直接交渉して、味方に引き込むことに成功します。そして彼らの強力でウォール卿の司祭・ニックを惨殺した中央憲兵・サネスたちを捕え、情報を聞き出そうとするところからでした。

55話では調査兵団のエルヴィン団長が駐屯兵団のピクシス司令と交渉をしています。ピクシス司令も、もし必要があったら王政に反旗を翻さざるを得ないこともある、と日頃から思っていたことを打ち明けますが、エルヴィンの計画は例によってあまりに今のところ根拠のない推測に基づいた賭けのようなものであることに落胆します。しかしこの会話で重要なことが仮説として提示されます。エルヴィンの父親が口にして命を落とした仮説、すなわち「王政は人間の記憶を改竄しているのではないか」という仮説です。そしてそれを裏付ける事実としてエルヴィンが提示したのが、エレンがライナーたちとの戦いの中で「叫び」によって巨人たちを操ったこと(ライナーたちはそれを「座標」能力と呼んでいました)でした。

ラガコ村の巨人たちが実は元人間だったことが判明したことから考えると、巨人と人間は生物的に関係がある。そしてエレンの能力が判明して以来、王政のエレンに対する干渉が強まった。この「叫び」の能力が巨人だけでなく人間たちにも影響を及ぼすのではないか、ということであり、だからこそ王政はエレンのこの能力をほしがっているのではないか、ということでした。

一方リヴァイとハンジはサネスを拷問にかけ、重要な事実を引き出します。現在のフリッツ王家は仮の王に過ぎず、レイス家が真の王だという事実です。そしてそれを確かめたエルヴィンはピクシスに伝えます。ヒストリア・レイスを女王に即位させることによって、無血革命を起こすことが可能だと。

一方エレンはライナーたちに攫われた時のユミルとベルトルトの会話を思い出します。ユミルが巨人から人間に戻るときにライナーたちの仲間を捕食したこと。そしてそれまで、60年以上壁の外を彷徨っていたこと。それをハンジに伝えると、ハンジは急いでエルヴィンのもとに走ります。

一方リヴァイはエレンたち104期とリーヴス商会にクーデターの計画を伝えます。つまりヒストリアを女王として即位させることです。それを聞いた104期たち、中でもヒストリアは驚愕しますが、これしか方法がないと知り、ヒストリアはそれを承諾します。エレンとヒストリアを捕えたフリをしたリーヴス商会の手引きで王政の内部、真の権力者であるレイス卿に迫り、レイス卿の身柄を調査兵団が確保して、「仮の王」にヒストリアに譲位させ、そして調査兵団主体の権力を確立することによって、ウォールマリア奪還の態勢を整える、というのがエルヴィンの計画でした。

しかしリーヴス商会と打ち合わせをしながら中央憲兵への引き渡しを待っていたエレンとヒストリアは、現れた中央憲兵・ケニー・アッカーマンによって拉致され、リーヴス会長は殺されます。そしてその時、リヴァイの姓がアッカーマン(つまりこの二人はミカサと同じ姓)であることも明らかにされます。

エルヴィンのもとに達したハンジはエレンの報告をエルヴィンに伝えます。エレンの報告の意味をハンジは、巨人にされた人間が巨人化能力を持つ人間を食うと相手の巨人化をコントロールする力を手に入れ、人間に戻る、と解釈します。つまり、エレンは交換可能な存在であり、エレンは誰か巨人に食われてしまう可能性があるというのでした。

しかし二人のもとに中央憲兵が迫ります。彼らはリーヴス会長の死を調査兵団の仕業とし、調査兵団全員の召還を決定したのでした。エルヴィンは進んで彼らに囚われ、ハンジとリヴァイには独自の判断に従って動け、と言います。そして次期調査兵団団長はハンジだ、と指名するのでした。

ハンジはエレンたちが連れ去られた現場にいたリーヴス会長の息子、フレーゲルを捕えます。そしてフレーゲルに、自分と行動するように要求するのでした。

一方リヴァイ班はエレンとヒストリアを乗せた馬車の居場所をつかみ、ストヘス区にやってきます。しかしそこに現れた切り裂きケニー、リヴァイが子どもの頃一緒に暮らしたことのあるケニー・アッカーマンが対人立体機動装置(対巨人戦闘のための刀ではなく、銃を装備したもの)を駆使して調査兵団を殲滅し、リヴァイに迫ります。リヴァイは酒場に逃げ込み、そこでケニーと対峙して、ケニーが「やりたいことが見つかった。そのためには殺しまくりだ」というのを聞きます。104期たちは馬車でエレンたちを追っていましたが、酒場を辛くも脱出したリヴァイは彼らに追いつくと、一旦エレンたちを諦めて中央憲兵たちを撃退することに専念しろといいます。その戦闘のさなか、ジャンが相手を撃つことを躊躇したために自分が相手に撃たれそうになってしまうのでした。

そしてラスト。ケニーと思われる人物にレイス卿のもとに連れて来られたヒストリアとエレン。彼こそ人類の敵、と敵意を燃やすエレンとヒストリアでしたが、レイス卿の取った行動は、思いがけないもので、ヒストリアに「今まですまなかった」と詫び、ヒストリアを抱きしめる、というものだったのです。

次々と思いがけない展開と謎の提示、謎の解決が続き、西部劇的な銃撃戦と馬車との戦いが続くのは、今までむしろ西洋中世的な古怪な印象のあったストーリーに、近世的・近代的な要素を加えたように思います。13巻に引き続いてリヴァイの大活躍が続き、戦闘能力だけでなく、彼の交渉能力や人を説得する力、危機を切り抜けていく能力の凄さに驚かされます。

連載時にいろいろ騒ぎを引き起こしたことについても解決されています。エルヴィンがリーヴス会長の遺体にないはずの右手で触っていた件は、左手に修正されていましたし、リヴァイの指名手配書に出版コードに引っかかりそうなことが書かれていた件は完全に抹消されていました。

細かいセリフの修正もいろいろあって、ピクシス司令の「ワシはお主が目論んだ通りの男じゃ」が「お主が目論んだ通りの思想を持っとる」に変えられていたり、またアルミンが104期たちにクーデターの方向性についていろいろ話して引かれ、「なんちゃってね」と汚れた顔?をする場面でも、「民衆たちはクソ」みたいなセリフが削られていたりします。

そして改めて思ったのは、単行本派の人たちは14巻を手にした時点で表紙がなぜ酒場の場面になっているのか、そこにいるがなぜハンジを中心にエルヴィンとリヴァイなのか、が分からないと言うことと、ヒストリアがどれだけ重要な人物であるのか、中央憲兵がいかに手強いか、そして謎の中核に関わりがあると思われる、リヴァイの姓がミカサと同じアッカーマンであることも、そして14巻でも巨人は全く出て来ないということも知らないんだよなあということでした。

私はどうしても先が知りたいですし、4ヶ月に一度しか先が読めないのは我慢しきれないので仕方ないのですが、やはり単行本で読むという楽しみもあるなあと思ったのです。

どんな楽しみ方をするかは人それぞれですが、どんな読み方をしても楽しいのが『進撃の巨人』だなあと改めて思ったのでした。

限定版のOADのDVDについては、また改めて書きたいと思います!クリスタとミカサの魅力的な場面があって、何度も見返したいようなものだったということだけ、書いておきたいと思います!