別冊 少年マガジン 2014年 09月号 [雑誌]
講談社


諫山創さんの『進撃の巨人』第60話『火種』を読みました!

最新回の感想を書きたいと思います。

中央憲兵に陥れられた調査兵団員たちは、それぞれ分断されてしまいました。エレンとヒストリアは中央憲兵の元殺人鬼・ケニー・アッカーマンに捕えられ、壁の中の真の支配者であるロッド・レイス卿のもとに送られています。このサイドのストーリーは58話のラストで止まったままです。

一方リヴァイ率いる新リヴァイ班。メンバーはミカサ、アルミン、ジャン、サシャ、コニーの104期たちです。彼らはケニーの率いる対人立体機動装置を駆使する(対巨人立体機動装置との違いは、ブレードがなく銃を撃てるということですね)中央憲兵たちに攪乱され、逃亡する中ストヘス区の新兵で正義感の強いマルロをたまたま捕えたことから彼を仲間に率いれ、中央憲兵のアジトを探り当てました。今回はここからです。

リヴァイたちは首尾よくアジトの襲撃には成功したものの、そこにエレンたちはいませんでした。ヒゲの男を一人捕えて、暗闇の中リヴァイはヒゲを尋問します。「部下を殺したのか」と問われたリヴァイは、「しばらくまともに歩けねえようにしておいた」と答えます。リヴァイ班のメンバーたちは襲撃の際、相手を殺すことなく膝を狙って、中央憲兵たちを動けなくして去ったのでした。

リヴァイは男を尋問します。このリヴァイの尋問シーン、またミカサたちがアジトを襲撃する場面は、凄い迫力です。ここはKindle版でも読みましたが、やはり紙の雑誌の方が圧倒的な迫力があります。諫山さんのようなラフなタッチの絵には、その荒々しさを含めてよく表現されている、こういう雑誌の方があっているなと思います。

何度問われても男はまともに答えません。リヴァイに口を蹴られた男は、「お前らに出来ることは、仲間を見捨ててドロクソにまみれてセコセコ生き延びることだけだ!お前らが出頭しなければ囚われた調査兵は処刑される。最初は最高責任者であるエルヴィン・スミスからだろう」と脅します。

「ただしお前らが独断でやったことだとその首を差し出すなら、他の団員の命だけは何とか助かるだろうな。俺が口をきいてやろう」と懐柔にかかった男に対し、リヴァイは「イヤ遠慮しておこう。お前はエレンとクリスタの居場所を言え」と全く乗りません。

「仲間を見殺しにしても無駄に生き伸びるか」と問う男に対しリヴァイは、「調査兵団の命には優先順位ってものがある。それを承知の馬鹿共の集まりが俺らだ」と答え、男を締め上げます。「そもそも王政が調査兵団を根絶やしにする絶好の機会を俺らの首程度で逃がすとは思えねえな」と。リヴァイが、一本一本腕の骨を折っていくような締め上げ方をしていくのが凄い迫力ですし、さすがに中央憲兵もこれではダメかな、と思わせる感じです。

恐怖に囚われた男はついに叫びます。「知らない!本当にほとんどのことは何も教えられてないんだ!ケニー・アッカーマンはとても用心深い!」と。

それを聞いたリヴァイとミカサの反応が微妙です。ミカサは、この殺人鬼が自分と同じ姓だということを知って何か思うことがある、ということは分かりますが、ケニーに「リヴァイ・アッカーマン」と呼ばれていたリヴァイは何の反応も示しません。リヴァイは自分の姓を知らないのか?それともとぼけているだけなのか?ここでいっそう、謎が深まりました。

リヴァイは、そういう男にさらに「心当たりくらいはあるだろう。思い出すまで頑張ろうか」と迫ると、男は「あんたは、まともじゃない」と怯えた目をします。リヴァイの「…かもな」と答える冷たい目が凄いです。

しかしサシャが気配に気づきます。「あっちから誰か来ます!複数います!」と。男は言います。「言ったろ兵長…もう無駄なんだよ…何もかもな。お前たちのやってきたことを償う時が来た。調査兵団はここでもう最期だ」と。その彼らに、フードを被った中央憲兵たちが迫って来るのでした。

一方、一日前にさかのぼってストヘス区の新聞社。中央憲兵から与えられた情報を読んでいる新聞記者たち。中央憲兵たちの書いた自らを英雄化した作文を掲載させられ、腐っているピュレと、そんなもんだと宥めているロイ。若いピュレは、この実態に納得がいきません。「ロイさんはなぜ記者になったんですか?この謎多き世界に情熱を燃やして板敷きもあったはずでは」と問うピュレに、ロイは「自分を偽ることで自分の大切な何かは死んでいった…だがその代わりにもっと多くの大切なものを守ることが出来た。どうだ、かっこわるいだろ?」と。

気がつくと、いつの間にか二人の間に、ハンジが座っています。このハンジの出現のしかたがぞくっとします。「お邪魔します。私は調査兵団分隊長のハンジ・ゾエ。この新聞でも現在手配中のものです。何でも私の部下は民間人に襲いかかった末に殺されたらしいのですが…やはり創作だったようですね。私の部下は死してなお侮辱されたようだ」と言います。このモノローグの間に部屋に入ってきたモブリットもまた怖いです。

「あなたの部下の件はお詫び致します。調査兵団が今理不尽な状況に置かれていることも察しています。しかし…」とロイは謝ります。「王政に従ったのは仲間や家族を守るためだと…私だって立場が同じだったら王政に従いますよ」というハンジ。「ロイさん。あなたがこのまま王政に従っていても、仲間や家族、娘さんも守れません。一日だけでいい、私たちを取材してください」とハンジは言うのでした。

そして、日付は戻ってトロスト区。中央憲兵に追われたリーヴス商会のドラ息子、フレーゲルが廃墟に追いつめられます。中央憲兵の一人は、「お前を現場から逃がしてしまったと気づいた時、俺はもうおしまいかと思った。ありがとな」と本気で泣いて本気で言ってます。銃に狙われたフレーゲルは、必死に質問します。「どうして親父は殺されたんだ?お前ら中央憲兵によって!」と。

中央憲兵は、「そんなこと聞いてどうする?俺たちはお前の死体に用があるだけなんだよ」と答えます。「死ぬ前に知りたいんだ。親父は何をしてこんな目にあったのかを!頼むから教えてくれ!」と叫ぶフレーゲルに、余裕を持ったのか中央憲兵はべらべらと答えます。「調査兵団から人を攫うように依頼した中央憲兵をリーヴスが裏切り、調査兵団の側についたからだ」と言います。「リーヴスは家族だけ連れて北へでも逃げればよかったんだ。従業員やこの街に固執してなきゃなあ」という中央憲兵に、フレーゲルは父親のことを思い出し、開き直ります。

「知ったふうな口聞きやがって。親父は俺に教えてくれたよ。商人は人を見る目が大事だってな。だから俺は人を選んだ。親父が信頼した人たちを選んだ。」急に迫力がでたフレーゲルに中央憲兵は怒鳴ります。「どうしたんだフレーゲル!?最期は豚らしくピーピー泣けよ!」と。フレーゲルも叫びます。「お前らはもう用済みだ!上を見ろ!マヌケ!」

上空から舞い降りてきたハンジ、モブリットたちは一気に中央憲兵を制圧します。ハンジはこの受け答えをしていた主な男に下から飛びかかり、引き金を引かれた銃の銃身を髪の毛一本の差でかわし(注・引用者による誇張です)男を投げ飛ばします。しかしどうも変なところをつかんだらしく、右手が激しく痛んで「いッてええええええ」と叫び、モブリットが「分隊長!ワイルドすぎます!」と叫びます。モブリットさん、相変わらずいい仕事してます。(笑)

「やったぞ!聞いたかみんな!」と叫ぶハンジ。上を見ると、廃墟と思われた家には多くの住民が住んでいました。住民たちは答えます。「全部聞いたぜ。中央憲兵たちが会長らを殺したこと。調査兵団がリーヴス商会を守ろうとしたこと。リーブス会長が俺らの街を守ろうとして体を張ったこと。そのすべて…ここにいる全員が証人だ」と。

「それがなんになる?何が事実かを決めるのは王政だ!お前らこそ俺にこんなことをしてただですむと思うなよ!」と叫ぶ中央憲兵の顔に、フレーゲルが腰を降ろして言います。「みんな、安心してくれ。この街はリーヴス商会が守る。今日から俺が会長だ!」と。いつの間にフレーゲル、こんなふてぶてしく頼もしくなったかと思ったら、「だから…よろしく…お願い…します」と弱気になり、みんな笑顔がこぼれます。「よろしく頼むぜ会長!声ちいせいぞ!」と言いながら、みな拍手します。

ハンジは憲兵をフレーゲルに任せ、それを見ていたロイとピュレに言います。「世間に訴えることが出来るのはあなたたちだけです」と。ピュレはロイに、「僕たちの手で中央憲兵の犯罪を白日の下に晒し、調査兵団の無実の罪をはらしてやりましょう!」と叫びます。しかしロイは言います。「我々は王に生かしてもらっているんだよ…なあハンジさん…あなたに私の家族を殺す権利があるのですか?」と。

ここでも調査兵団は壁際に追いつめられてしまうのでした。

一方、王政に召還されたエルヴィン。ボコボコにされた顔で王(フリッツ王家・仮の王)の前に引き出されています。「最期に言い残したことはあるか?」と聞かれています。今回、この「最期」という言葉が本当に何度もでてきています。団長であるエルヴィンがこの事態になっているということは、調査兵団の状況が本当に絶望的であることを象徴しているわけですね。

ここで今回は終わりです。

いやあ、面白かった。特に、Kindle版で読んだ時より、紙の雑誌で読み直してみてその面白さは数倍になりました。リヴァイが尋問する時の迫力、ミカサたちが制圧する時の手際の鮮やかさ、そしてまさかのフレーゲル回とでも言うべき、覚醒したフレーゲルのふてぶてしい頼もしさ。ただの太っちょ豚だと思っていたフレーゲルが、こんなに頼もしくなるとは思いませんでした。

そして例によって暴走気味のハンジとそれを諌めるモブリット。「分隊長!○○過ぎます!」という言葉のバリエーションはいったいいくつ出てくるのか、それも楽しみでなりません。(笑)

そして鮮やかにトロスト区の市民たちを味方につける手際。これもよかったなあ。目にものを見せる見せ方が、凄い。やはり日常的に調査兵団に接してきたトロスト区の市民たちは、また内地の住民たちとは違う感情を持っているんだろうなあと思います。

そしてついに王の前に引き出されたエルヴィンが何を言うのか。それもまた楽しみですね。

いろいろ幾方面からも伏線が張られていて、どんなふうにそれぞれ解決していくのか、それが凄く楽しみです。

今月は別冊少年マガジンの表紙も「進撃の巨人」でリヴァイとミカサ。この二人がアッカーマンつながりで表紙になるのはいいのですが、2ヶ月連続で本編でエレンを見てなくて残念だなと思います。と思ったら、特別付録の進撃の巨人単行本14巻着せ替えカバーの表紙はエレンでした!

今年は後半になると「進撃の巨人」関連の催し物も目白押しになりますし、またさらに盛り上がってくると思います。

まだまだ書き足りないこともありますが、とりあえず今日はここまでにしたいと思います!