CD付き ピアノの森(24)限定版 (モーニングKC)/講談社

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モーニング33号で一色まことさんの『ピアノの森』第229話「一番良かったピアノを」を読みました!

3週間ぶりに掲載された『ピアノの森』。ポーランドの首都ワルシャワで行われている「ショパンピアノコンクール」。そのファイナル。演奏はすべて終わり、すでに審査は始まっています。今回もまた審査が続いている中での風景です。最新話の感想をストーリーに深く関わりながら書いておりますので、ご注意ください。

扉はクロークの風景。主人公・一ノ瀬カイの小学生時代からの親友にしてライバル、雨宮修平と、小学生のときに一度だけコンクールに出たカイと偶然の出会いをし、それ以来そのピアノの虜になった丸山誉子。その二人がカイについて楽しそうに話をしています。手前ではお嬢様である誉子のばあやである白石が、バッグの中を何やら探しているのを誉子のピアノ教師である司馬が見守っています。

会話から、演奏終了後、この4人で食事に行き、司馬が御馳走したことがわかります。だんだん発表が近づき、人が集まって来て、そろそろ会場に入ろうか、と話しています。しかし誉子はもう少し待って、と言います。「あれほど順位なんて気にしない!って言ってたのに…ヒザがガクガクなの」と。雨宮も顔を赤らめてうなずきます。「うん、わかるよ。いったいどんな結末になるんだろうね」と。本当に自分のことのように緊張している二人ですね。でも、カイのピアノの素晴らしさだけは確信している。でも、カイのピアノはいつも「規格外」でした。そんなカイに憧れてピアノを弾き続けて来た誉子も、いつも「特別賞」ばかり取って来たので、どんなに素晴らしくても「コンクールで優勝」出来るとは限らない、と言う不安からは逃がれられないわけです。

誉子は、優勝はカイ、2、3位がなくて4位にパン・ウェイ、と明言。でも「もう一度聞きたいと思うピアノ」を弾くとカイの先生である阿字野が明言していた雨宮の父・雨宮洋一郎は、カイの優勝はない、と言う意見は変えていなかったなあ、と雨宮は思います。そして誉子も、「分かってるわよ。カイの優勝はない!っていうんでしょ」とため息をつきます。「いや、そうじゃないけど…」と言葉を濁す雨宮。

一方、カイが女装して演奏していた「マリアのピアノ」に惚れ込み、でもそれがこのコンクール期間中にひょんなことからカイの女装だと知ってしまって一度は落ち込んだ音楽大学の副学長・佐賀は、気を取り直してカイのピアノの素晴らしさを心の中で激賞しています。司馬の近くに来たものの、何となく取り込んでいる雰囲気の司馬を見て、声をかけずにいます。

誉子はフフっと笑っていいます。ピアニスト一ノ瀬カイ、名前をちょっとシャッフルすると、「世界一のピアニスト」になるって知ってた?と言うのです。雨宮は驚いて口をあんぐりし、それを立ち聞きしていた佐賀も口をあんぐりします。

ついにこのネタを出したか。(笑)16年前に連載が始まって、ここでようやくその名前の真実が明かされたわけですね!ここまで来てこのネタが出るとは、本当に大団円近しを感じさせます。そして否応なく期待が高まってしまいます。

一方の審査会場。審査委員長ヤシンスキは、「審査員の採点を公表する」と言うヤシンスキの爆弾発言によって迷っている審査員たちに「一つアドバイスがあるとするなら、余計なことは考えず一番よかったピアノを1位にすること」と言います。あ、という顔をする審査員のクリスティナ、真剣な顔をするエキエルト(この人、途中で名前が変わってますが)、汗を浮かべるウェペル。

ポーランド人のシマノフスキを優勝させたいウェペルは、シマノフスキに脅威になるピアニストたちを許容範囲の中で出来るだけ下位に書きたい、と思いますが、もしそんなことをしたことが公表されたら不正をする人間だと言う烙印を押されてしまう、と迷います。ウェペルは先ほど、パン・ウェイを優勝させようとしている中国人の黒幕・コンと話した内容を思い出します。ウェペルはコンに、審査結果を公表することになった、と漏らしているのです。これが何の目的があったのか分からないのですが、パンを優勝させられない(ポーランドのショパンとは違うから)と言うことについていいわけをしたのでしょうか。しかしコンは冷たく、公表すればいい、と言います。公正に判断すればパン・ウェイの優勝は間違いない、と。

その後ろから声をかけたのは、副委員長のアンジェイ・パヴラスでした。まだ公表するかどうかは決まっていない、と釘をさし、公表によって審査員の判断が変わり、シマノフスキを優勝させるためにアダムスキを落とした意味がなくなるからか、とぐさっと来ることを言うパブラスですが、重ねていいます。「私はあなたが優れた音楽家であると同時に、若い音楽家に道を与えられる数少ない指導者の一人だと信じています」と。「それに、コンテスタントのピアノに真摯に向き合えば、答えは自ずと導きだせるもの。公表するしないで結果が変わることはないはずです」とパヴラスはいうのでした。回想から戻ったウェペルは思います。そう、これだけは変わらない。1位はシマノフスキだと、と。

会場ロビーでは評論家たちが予想を語っています。みな口々に、「イチノセは別枠だ」と言っています。佐賀はいらだちます。「ここまで来て一ノ瀬のピアノが規格外で済まされてしまうのか」と。しかし子供が「イチノセには誰も勝てない!」と言ってるのを聞いて我が意を得たり、と思います。しかし頭の中は一ノ瀬に不利な条件がいくつも並んでしまいます。最年少の17歳であること。世界的に全く無名の日本人であること。ポーランドとのゆかりもない。でも。そして思います。純粋に演奏だけで決めるなら、誰が一ノ瀬の上を行くと言うんだ、と。

クリスティナは、自分の感性を信じよう、と1位のところにカイの名を書きます。日本人審査員の九蔵は2位に。ポーランド人審査員のアンナは1位のシマノフスキの名を線で消します。そしてウェペル。

いろいろと意見がかまびすしい中、ついに集計結果がまとまりました。そしてそれを見た審査員たちは、唖然とした表情を浮かべるのでした!

今回はうねるような展開で、少しずつ不安が期待に変わり、また期待が不安に戻ったりし、そして私たち読者がもっている審査員たちへの不審の念も、少しずつ消されて行くのを感じます。

もちろん、まだどうなるかは分かりません。でもこれは、「本当のガチンコ」で出た結果なのだ、と言うことはみなが認識しています。そのとき、いったいどんな結果が出るのか。

誰かが圧倒的に一位になるのか。それとも、例えばシマノフスキ、パン・ウェイ、カイの3人が1位で並ぶのか。

そんな簡単に予測を許してくれるような甘い展開ではないとも思いますし(笑)、ここまで来たら本当の歓喜が待っているかもしれない、とも思います。例えば227話で音楽家の手の手術をするゴッドハンド・仲尾が優勝すると言う条件は「契約」だ、と言い切っているのも、仲尾が優勝を確信しているからかな、と言うことを思い出したりもします。

さて、どういう展開になるかは7月31日発売の35号を待つしかありません!

最近、繰り返し何度も何度も「物語はクライマックスへ!」と語られているのも気になりますね!

楽しみに待ちたいと思います!