Dモーニング31号で田島列島さんの『子供はわかってあげない』第17話「私の青汁」を読みました!

ここのところ感想が書けなかった「子供はわかってあげない」ですが、なんというか、朔田さんが「本当の」お父さんに会いに行ってからのやり取りというのは、なんというか感想が書きにくい、可笑しいのだけどどう可笑しいかをなんだか言葉にしにくい、この面白さは1話ごとにストーリー的に書いて行くというよりも、一つの作品全体としてまとめて感想を書きたい、という感じのものだなと思いました。

でも「光の匣」教団の問題も解決し、またお父さんは教団を離れることになり、また朔田さんを迎えに?行った門司くんがお父さんにいろいろな「心を読む」攻撃を仕掛けられ酒を飲まされながらも、ある意味信頼を得て、またどうやら朔田さんの心もつかんだ(笑)ようで、何となく帰りそびれていた朔田さんも門司くんと一緒に帰ってきました。

今読み返してみると、14話で江虫浜で朔田さんを探すのに途方に暮れた門司くんが子どもの頃明ちゃんに言われた「字がうまくなると書いたものが出てくる」と言われた話を思い出して、棒切れで浜辺に大きく「朔田美波」と書いたらいきなり海の中から朔田さんが現れた場面は相当可笑しいなと思いました。これは映画だったらすごく盛り上がるところだと思います。そして門司くんの顔を見た朔田さんがカーッとなって、いかりや長介が「だめだこりゃ」というのが可笑しかったです。つまり「惚れた!」ということですね。(笑)ああこういうのが「惚れた瞬間!」というものだと今読み返していて思いました。(笑)

さてそんな出来事が一段落ついたあとのお話。門司くんが明ちゃんの下宿している善さんの古書店に慌てて駆け込んでくると、明ちゃんは二階で商店街に頼まれた懸賞の文字書きをしていました。文字を書き間違えてしまうのはお約束です。門司くんは、夏バテだと思っていたおじいさんが実は腸閉塞で入院し、うわごとで明ちゃんの名を呼んでいた、と伝えに来たのです。

それだけ伝えて帰ろうとした門司くんに明ちゃんは朔田さん(美波ちゃん)への請求書(明ちゃんは朔田さんにお父さんを探してくれと依頼されたのです)を渡し、門司くんが帰ったあと窓辺に腰掛けて空を見て煙草を吸います。

一方、門司くんは朔田さんに朔田さんがお父さんと撮った写真を送ります。朔田さんは携帯を海に落としてしまっていたのですが、改めて買ったので送ってくれと言われて送ったのでした。データを消していいよ、と言われたけど、結局とってあるようです。田舎の立派な門構えの家の縁側で寝転がって携帯画面の二人の写真を見ている門司くんが渋いです。

そこにおばあさんがやって来て、「青汁を飲みなさい」と言います。もともとおじいさんが買ったのだけどすぐわーっとなってすーっと冷めてしまって、大量に残っていたようです。明ちゃんのことも、本当はもう許してるんだと思う、とおばあさんは言って、門司くんも同意します。

明ちゃんはこっそりとおじいさんを見舞いに行きます。女言葉の明ちゃんに悪態をつくおじいさん。明ちゃんは、教団がつぶれたことを今は黙っていよう、と思います。大口の取引相手がなくなったことを知ったらショックを受けるだろうと。

いろいろやり取りする二人ですが、明ちゃんは「おじいちゃんが私のこと嫌いでも、私はおじいちゃんが大好きよ。ずっとずっと大好きだからね」と言って、「それだけ言いに来たの」と言って帰ろうとします。おじいちゃんは明ちゃんを呼び止め、「書、まだやってるのか」と言います。明ちゃんはそのまま手も拭かずに墨のついた手のままで病院に来たのですね。明ちゃんが去るぺたぺたというスリッパの音を聞きながら、病院の窓から空を見るおじいちゃんの視線が味わい深いです。

一方、門司くんが家で青汁を飲んでいると、朔田さんの親友の(今回のお父さん訪問を合宿に行くとごまかした協力者)宮島さんから携帯が入ります。「門司くん、もしかしてサクのこと好き?」と尋ねる宮島さんに門司くんはどぎまぎします。「サクは意外とモテるよ」という宮島さんに、「告白したこともされたこともないって本人は言ってたけど」という門司くんに、宮島さんは「あんな「俺の間合いに入ったら斬るぜ」って全身で言ってるような奴に丸腰で向かってく男子がいるワケないよ」と言います。

水泳部の部活の日程を聞く門司くん。請求書を渡さないといけないから、というのですが、さてまた何が起こるか。

猫の頭をなでながら、朔田さんの頭を思い出し、あれに触ったのか、何で覚えてないんだ、と思う門司くん。可笑しいですね。本当にボーイミーツガールだなあと思います。俺の間合いに入ったら斬るぜ、という言葉を思い出しながら、俺はもうすでに斬られたんじゃないのか、と思います。渋すぎる。(笑)

明ちゃんは善さんちに帰って来て、「善さん私おじいちゃん子なんだよ。知ってた?」と言います。善さんが「何となくね」と答えるのも渋いですね。

本当に、今読み返してみると、この作品はよく出来た映画だなあと思います。いいキャストを使って原作に理解のある監督が撮ったら、かなりよい映画になるのではないでしょうか。

単行本の発売は、9月23日(火・祝)に上下巻まとめて、になるそうです。コンパクトにまとまった作品ですので、また読み直してじっくりとその可笑しさを味わってみたいと思います。