ARIA (アリア) 2014年 08月号 [雑誌]/講談社

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「ARiA」8月号で駿河ヒカルさんの『進撃の巨人 悔いなき選択』第8話「選択」を読みました!

『進撃の巨人』スピンオフでも圧倒的な人気を誇るリヴァイ兵長を主人公にした「悔いなき選択」も最終回を迎えました!大体のストーリーはアニメ『進撃の巨人』のBD6巻の初回特典だったビジュアルノベルと同じ内容なので、大筋は見て知っていたわけですが、いろいろと細かいところには変化があったように思います。

壁外調査の間、エルヴィンの隙を狙い、目的の書類を手に入れようとしたファーランと、エルヴィンに受けた屈辱を晴らそうとするリヴァイ、それにリヴァイを兄貴と慕うイザベルの3人は、巨人たちと戦いながら徐々に調査兵団と言う奇妙な集団に心を引かれているものを感じたのでした。

壁外調査はエルヴィンの考案した長距離索敵陣形で順調に進んでいたのですが、激しい雨に襲われてお互いを見失ってしまい、陣形は崩れてしまいました。エルヴィンを狙うために飛び出したリヴァイと、本来のフラゴンたちの班に合流を目指したファーラン、イザベルでしたが、フラゴンたちの班が巨人の群れに襲われ、それを察したリヴァイが取って返したときには、フラゴンの班員たちもイザベルもファーランもすでに巨人に食われてしまっていました。前回はここまでです。

立体機動を駆使し、鬼神のような働きで次々と巨人を倒すリヴァイ。ページをめくるとタイトル画が巨大な壁の上の風景(シガンシナ区ということでしょうか)で、本編のエレンたちの訓練兵時代の一場面を思い出し、ちょっとほろっと来るものがあります。ミケ、ハンジ、エルヴィンたちとリヴァイ、ファーラン、イザベルがこの壁にいると、ああ同じ時代同じ場所なのだなあと思います。この場面が今まで出て来なかったのは、考えてみるとちょっと意外です。

リヴァイは巨人の腹の中を切り裂き、ファーランの腕をつかみますが、すでに上半身のみになっていました。ユラ、と立ち上がったリヴァイに4体の巨人が迫ります。つかみかかって来た巨人の両眼に刃を突き刺し、そのままに体の巨人のうなじを削ぎ、最後の巨人には超高速回転でうなじを削ぎ落とします。

両眼に刃を突き刺した巨人に向かってリヴァイは尋ねます。「おい、人間てのは美味いのか?答えろよ」と。

一方、馬を駆るエルヴィンとミケは、巨人を倒したもうもうたる蒸気が上がるのを見て驚きます。「一度にあの数を倒すとは…」「奴か?」

最後の巨人を倒したリヴァイは、イザベルの首をみつけます。両眼が開いたままのイザベルの首。リヴァイは悔しさに歯ぎしりしながら、イザベルの目を閉じてやります。

「おい、誰か生存者はいるか?リヴァイ!生き残ったのはお前だけか?この巨人の死骸はお前一人で…」と問うエルヴィンにリヴァイはつかみかかり、馬から引き摺り下ろします。剣を抜くミケに、リヴァイは来るな、と言います。

リヴァイは、「エルヴィン、てめえを殺す。そのためにここにいる」とエルヴィンの首に刃を当てます。

「彼らは…死んだのか…そうか…」というエルヴィン。懐からごそごそと何かを出します。「ニコラス・ロヴォフに関する書類だ」それは、ファーランが探していたもの、依頼主ロヴォフから回収を依頼された書類でした。

「てめえ…知っていたのか」とリヴァイ。しかしそれは白紙でした。「何のつもりだ」というリヴァイにエルヴィンは、「ブラフだ」と言って説明を始めます。

ロヴォフは、壁外調査の中止で浮いた兵団資金を横領していることをエルヴィンはつかんでいたので、決定的な証拠を手に入れるためにウソの情報を流したのだと。案の定彼はリヴァイたちに依頼し、ロヴォフが動いたことでエルヴィンは決定的な証拠を手に入れることが出来たと。

「なぜ俺たちを兵団にいれた」と問うリヴァイに、「お前たちが優れた戦力だから、ということと、逆にリヴァイたちを利用してロヴォフに揺さぶりをかけるためだ」というエルヴィン。しかし、もう本物の証拠書類は兵団を統括するザックレー総統の手元にあるから、もうロヴォフは終わりだ、とエルヴィンは言うのでした。

リヴァイは、そんな駆け引きに巻き込まれて命を落としたファーランたちを思い、エルヴィンを殺そうとします。しかしエルヴィンは刃を抑えて言います。

「私の部下を、お前の仲間を殺したのは誰だ?ともに私を襲いに来ていれば死なずに住んだと思うか」と問うエルヴィンに、リヴァイはあのとき離れなければ、三人で行動していれば、と思い、「俺の驕りが、クソみてえなプライドが…」と答えると、エルヴィンは「違う!」と叫びます。

「巨人だ!」と。

巨人がどういう存在なのか、我々には分からない。壁の中にいるだけではこの劣勢を覆せない。しかしこの壁の外の何もない広大な空間に、我々の絶望を照らす何かがあるかもしれない。

しかし、危険の及ばないところで自分の損得を考えるのに血眼になり、壁を越えるのを阻む人間がいる。

「お前はどうだ?お前の目は曇ったままか?私を殺して、暗い地下に逆戻りか?」とエルヴィンはリヴァイに迫ります。

「私たちは壁の外へ出るのを諦めない。調査兵団で戦えリヴァイ!お前の能力は人類に取って必要だ!」と。

リヴァイには見えます。壁の外を三人で馬で走っていた風景を。生まれて初めて、悪くないと思った風景を。リヴァイは刃を捨て、「こっからは取引じゃねえぞ」とつぶやくのでした。リヴァイは、調査兵団に残る選択をしたのです。

エルヴィン、ミケとともに他の団員たちと合流を目指すリヴァイ。手綱を握る腕に、思わず力が入ります。後ろを振り返り、巨人たちの蒸気が上がる場所を、ファーランとイザベルが死んだ場所をもう一度見ます。そして光の射す方向へ向かって、馬を駆って行くのでした。

これで最終回は終わりです。来月には、番外編があるとのことです。

今回は、心理描写になるほど、と思うところがいくつかありました。また、今ビジュアルノベルが手元にないので読み返せませんが、エルヴィンがリヴァイを説得するセリフもかなり改変があったような気がします。

リヴァイの「選択」は、光の見えない暗い地下で生きることをやめて、何もない広大な壁の外で人類の希望を求めて戦うことを選ぶ、という選択だったのですね。リアヴィは本編でエレンに、自分の力を信じても、信頼にたる仲間を信じても、結果はいつも分からなかった。だから選べ、悔いの残らない方を、と言っていて、でも何が悔いが残らないのか、それは分からないよなあという印象を持っていました。

しかし、「光の見えない暗い地下で生きることをやめて、何もない広大な壁の外で人類の希望を求めて戦うことを選ぶ、という選択」は、確かに悔いの残らない選択だっただろうなあと思います。

本編ではいま、リヴァイたちは「危険の及ばないところで自分の損得を考えるのに血眼になり、壁を越えるのを阻む人間」と思われる人たちとの戦いが続き、巨人との戦いというよりは人間との戦いが続いているのである種の閉塞感があるわけですが、ここで巨人との戦いを読むことで、一服の清涼剤、みたいな感じを覚えました。

またARiAという雑誌も、こういう機会がなければ読まなかっただろうと思う雑誌ですし、その中でも山中ヒコさんの『死にたがりと雲雀』など、好きな作品と出会うことが出来ました。

マンガとの出会いというのは、面白いものだなと思います。

そして短い連載ではありましたが、大団円を迎えて読み終えたという満足感を感じます。

ありがとうございました!とお伝えしたいと思います。