「極黒のブリュンヒルデ」Blu-ray BOX I/バップ

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アニメ『極黒のブリュンヒルデ』第13回(最終回)「守りたいもの」を見ました!

4月から始まったアニメ「極黒のブリュンヒルデ」も13回、1クールアニメなので最終回を迎えました。この作品はたまたまヤングジャンプを買ったときに古代ゲルマン語の「ブリュンヒルデ」という言葉が気になり、アニメをやっているということを知って見始めたのですが、今のところブリュンヒルデという言葉の意味については語られていないままです。

ヤングジャンプでの連載はまだ続いていますし、そういう意味ではこれも「途中の作品をどこで切ってどうまとめるか」という問題と取り組まざるを得ない作品であるわけですね。

最初の頃はゆったりしたペースで活劇部分と日常の萌え的ハーレム系ラブコメ部分がミックスされつつか酷な運命にある『魔法使い』の少女たちとそれを何とか助けようとする主人公・村上良太を描いていたのですが、奈波のくだりが終わり初菜が出て来たあたりから急に駆け足になって、特に前回の12回は急に話が進み過ぎた印象がありました。

前回では、天文台にいる良太と魔法使い、寧子・カズミ・佳奈・小鳥と再生の魔法を使える初菜たちのところにヴァルキュリア(真子)と研究所の九(いちじく)が現れ、1107号=鷹鳥小鳥を連れ去ろうとしたところに魔女狩り=ヘクセンヤクトの3人が現れ、すべてを破壊する力を持つ魔法使い・ヴァルキュリアの力を封じ込めますが、彼らの隙を突いて九たちが小鳥を連れ去ってしまいました。

一度死にかけた良太を再生させた初菜がハングアップして初菜のからだが溶けてしまう中、ヘクセンヤクトたちのヘリコプターで良太と寧子とカズミとは小鳥が連れ去られた九の別荘に飛びます。しかし時遅く、小鳥のハーネストからは宇宙人グラーネが孵卵し、そこから「アイン・ソフ・オウル」(世界の始まりに伴う無限の光、という意味のようです)が放たれてしまっていたのでした。

ヘクセンヤクトたちはもうすべては終わりだ、と祈るばかりになっているので、良太と寧子とカズミは自分たちだけで小鳥のもとに急ぎます。しかし寧子とカズミは示し合わせて良太を後ろから棒で殴って気絶させ、二人だけで小鳥を助けに動きます。

九の別荘では九が小鳥に話しかけています。アイン・ソフ・オウルとは、地球外生命体に作られた地球上の生物をリセットする仕組みだ、と九は言います。高原のような場所で椅子に座って話していた影のような人たちは「高千穂」と呼ばれるものだと明らかになり、彼らの目的はもともとの地球外生命体を復元し、新たに地球を支配する人類を作ることだ、と。そして魔女はそのための道具なのだ、というのです。

そして九の目的は、死んでしまった妹・怜奈の意識を復活させることだったのです。九はそれを小鳥に植え付けたのですが、今までのところその兆候は見えないため、小鳥のハーネストから孵卵したグラーネを回収し、出来損ないの小鳥は抹殺する、というのでした。

小鳥は、そのために魔法使いをまた犠牲にするのなら、自分でイジェクトしてグラーネを使えなくする、と言います。私が消えてなくなれば空の光も消えてなくなる。自己犠牲など愚かなことだ、と言う九に、小鳥は「誰かのために何かをするのはおかしなことですか」と聞きます。小鳥の中に怜奈の意識が蘇ったのか。九は思わず黙ります。「大好きな人たちが明日も笑顔でいられるなら、私は馬鹿でも愚かでもかまいません。」と言ってイジェクトボタンを押します。

一方意識を取り戻した村上。立ち上がると、アイン・ソフ・オウルが消えて行くのが見えました。ヘクセンヤクトたちもそれを見て、1107番に何かがあったはずだから、この機を逃さない、と行動に移ります。天文台にいる佳奈は小鳥、とつぶやきます。小鳥の死を予知したのでしょう。

寧子とカズミは邸内を歩いて来た九とヴァルキュリアにばったりと出会います。小鳥はどこ、と言う寧子たちに九とヴァルキュリアは自分でイジェクトして死んだ、結局は無駄死にだといい、ヴァルキュリアにあとはお前が始末しろ、というのでした。

命は等価値じゃない、優劣がある、それを千怜(九)から学んだと言う真子(ヴァルキュリア)。真子は「寧子、こっちに来て」と言います。真子は寧子を壁に押し付け、カズミを倒します。そして、真子は寧子が自分の妹だ、というのでした。

村上が邸内に入り、中で迷っていると、奈波の記憶が現れます。そして九のいると思われる場所を教えます。そちらの方へ行って謎の扉を押すと、その中には小鳥がいました。「いったい何があったんだ」という村上に、小鳥は「自分でイジェクトしてしまいました。てっへっ」と言います。ここは泣かせますね。「皆さんを救うためにはこうするしかなかったんです」という小鳥に、「みんなが救われても、お前が死んだら意味ないだろ」という村上に、小鳥は「そんなことはありませんよ。皆さんと過ごした時間、私は地球上の全生命体の中で一番仕合せでした。だから私はちっとも悲しくなんかありません。」というのでした。

そして最後のお願いがあります、といって「お兄様を、九千怜を止めてください。お兄様の行動はすべて、私を生き返らせるためだったんです。もうこれ以上、誰かを悲しませることはしないでください、と伝えてください。」というのでした。そして、今までありがとうございました、村上さん、これからもみんなを守ってあげてください、と言って溶けてしまったのでした。

小鳥の死に慟哭する村上のそばに、奈波の記憶が現れます。「この子、いつから九の妹としての意識があったんだろうね。」と言い、悲しくても泣いてる暇なんてない、と言います。村上も、分かっている、と言ってその場を去るのでした。

一方大学の研究室の小五郎。アイン・ソフ・オウルの光に気を取られていたときに、薬の解析が終わり、もしかしたら奇跡が起こるかもしれない、とつぶやくのでした。一ヶ月はかかるかもしれないと言われていた鎮死剤の製造が、間に合うかもしれない、ということなのでしょう。

一方村上は邸内を走り、カズミが倒れているのをみつけます。カズミは無惨にも、上半身と下半身が切断されていました。助け起こす村上に、ヴァルキュリアにやられてもうた、早く寧子を助けに行け、というカズミに、必ず戻る、と言って村上は走って行きます。残されたカズミは、「とうとうちゃんと告白も出来んかったか。村上の子供が欲しかったんやけどなあ。だいたいこのあたしが処女のまま死ぬなんてあり得んやろ。でも好きな人も出来て、そんなに悪い人生でも」とつぶやいたとき、天文台にいる佳奈は「カズミ!」と叫びます。そしてそこにいる「誰か」に、「私のハーネストの一番上のボタンを押して」というのでした。

邸内で迷っている村上に、奈波が現れ、進む方向を教えます。そして、「私に教えられるのはここまで。死なないで、村上。」というのでした。ああ、とうなずき、村上は進みます。

一方、寧子を背負って歩く真子。私には妹を殺すなんて出来ない、でも千怜の命令も私に取っては絶対、とつぶやきます。真子は研究所の実験中、危ないところで九に命を救われたのでした。

真子の前に九が現れ、全員始末しろと言ったはずだ、といいます。そして寧子を下に降ろさせ、九が「こいつは出来損ないだ。生きる資格がない」と言って自分でイジェクトしようとしたときに、村上が突然現れてくに飛び蹴りを食らわします。そして、「ふざけるな!生きる資格がないのはお前の方だ!」と叫ぶのでした。ここで前半が終わりです。

こうして書いてみると、かなりよいストーリーなのですね。しかし最初に見たときには、何がどうなってるのか分からないうちにどんどん話が進んでいて、小鳥やカズミが死んで行き、また記憶の奈波が消えてしまう最後の場面も、もっとゆっくり感情に浸りたい、という人も多かったのではないでしょうか。また、感情に浸っているうちにどんどん場面が進んでしまって追いつけなくなってしまった人も。最終回で、かなり詰め込んでいるので難しい展開ではあったでしょうが、最初の頃のゆったり展開を考えると、そのへんをもう少し早めて最後に余裕を持ってもよかったのでは、と思うところはありますね。

後半。村上が「人の命をもてあそぶお前の方こそ、生きる資格なんてない!」と叫びます。「よくもカズミと小鳥を。お前だけは絶対に許さない!」と村上は叫びます。寧子もショックを受けます。許しを請うつもりはない。数えきれない人間を殺して来たのだから、という九に、村上は「それは妹のためか」と尋ねます。驚く九。小鳥にはお前の妹の魂が宿っていた、もうこれ以上誰かを悲しませることはしないでとお兄様に伝えてくださいって、という村上に九は、もう一度やり直せばいい、と嗤います。激昂して九に近づく村上を、ヴァルキュリアははじき飛ばし、寧子とともにからだの自由を奪います。

苦しむ村上を見て、寧子は「村上くんは私が守る!」と決意し、ハーネストの1番上のボタンを押そうとします。溶けて死ぬだけだ、と言う九の声に、より強い衝撃を与えるヴァルキュリア。しかし突然寧子の前に佳奈が現れて、自分が衝撃を受けます。「寧子は、私が守る」と。佳奈は寧子に救われて、そのときから予知の魔法で寧子を守ると決意したのですが、1番ボタンを押して動けるようになった代わりに、予知の力を失いました。

止める村上と自分の前に立ちはだかる佳奈にありがとうと涙を流した寧子は自分で1番上のボタンを押します。ハーネストが輝きだし、強い光の中、寧子は絶叫します。そして青い光の球で村上と佳奈を包み込み、ヴァルキュリアから二人を守ったのでした。「覚醒した」と真子はつぶやきます。リハビリが必要ね、とつぶやく佳奈。ここにギャグを押し込むのも面白いなと思います。

からだ自体が光るようになった寧子は、「良太、大丈夫?」と近寄ります。それまで村上くんとしか呼ばなかった寧子。幼いときの、「クロネコ」と呼ばれていたときの記憶が蘇ったのです。村上がダムから落ちたときにクロネコの腕をつかんだことを謝ると、自分がしっかり支えていれば、と寧子も謝ります。そこにヴァルキュリアが攻撃を加えてきますが、寧子は「今度は良太を私が守る!」といい、真子は「心配しないで千怜。あなたは私が守る」というのでした。

寧子が「思い出したよお姉ちゃん。あなたと私は、表と裏」と言って寧子とヴァルキュリアの戦いが始まります。ヴァルキュリアの放つ黄色い光と寧子の放つ青い光の激突。この光景は、どこか昔の、魔女を描いた絵を思い出させるものがありました。「でも、負けるわけにはいかない。私にはあなたよりもたくさんの、守りたいものがあるから」と言う寧子の光は、ついにヴァルキュリアの顔に傷を付け、はじき飛ばしますが、力を使い果たしたのか寧子はしゃがみ込んでしまい、そこにヴァルキュリアが「千怜の邪魔をするものはゆるさない。たとえ妹でも」攻撃を加えようとします。村上は寧子に覆い被さって守ろうとしますが、攻撃が来ません。魔法が使えなくなったのです。

そこに現れたのはヘクセンヤクトでした。魔法が使えないと愕然とするヴァルキュリアの前に立ちふさがってヘクセンヤクトの散弾銃を背中に受けたのは、なんと九でした。ヘクセンヤクトの魔法を止める力も限界になってしまいます。まさか九が誰かの身代わりになって命を捨てるなんて、とヘクセンヤクトの少女はつぶやきます。

千怜、どうして私を助けたの、と取りすがる真子に九は、「愚かなものだ。人の心というものは。時に理屈ではなく感情で動いてしまう。だから人間など嫌いなんだ」といって絶命するのでした。

絶望のあまり「千怜が死んだ!」と笑い出すヴァルキュリア。空に飛び上がると、千怜のいない世界なんか全部ぶっ壊してやる!と両手の中にアンチマターを生み出します。この辺り一面が消し飛ぶ、というヘクセンヤクトの少女に、寧子は立ち上がります。「私はアンチマターを潰せるの。マイクロブラックホールを使って」という寧子。寧子は村上のキスします。「大人になったら、しようと思ってたの。私、良太のことが好きだった。そしてこれからもずっとずっと。良太、ありがとう。私のことを忘れないでいてくれて」といって。

寧子は空中に飛び上がり、真子と対峙します。「私は千怜の喜ぶ顔がみたかっただけなの」と言って手の中のアンチマターを大きくして行く真子。「お姉ちゃん、もう終わりにしよう。お姉ちゃんと私は、二人で一つ。」という寧子に、ヴァルキュリアは「可愛くてバカな、私の妹」とつぶやいて微笑みます。寧子の顔にも微笑みが浮かんでいます。

二つの光が衝突し、村上は佳奈をかばって地面に伏せ、空を見上げると真っ黒な穴の中に、山の木や九の死体が吸い込まれて行って、光を残して消えてしまいました。そして寧子は戻って来たのですが、良太が喜ぶのもつかの間、崖が崩れて寧子は落ちて行ってしまいます。村上は「クロネコ!」と叫んで寧子の腕をつかみ、何とか引き上げます。寧子は意識を取り戻しますが、記憶を失っていました。

「一つ聞いていいですか。あなたは誰ですか」という寧子の言葉に驚く村上。そこに小五郎からの留守番電話がかぶさります。薬の複製に成功したのです。そして、このメッセージを聞いたら、すぐに全員つれてこい、というのでした。朝日の中で泣き崩れる村上。どうしたんですか、と尋ねる寧子。その中をエンディングテーマ曲、いちばん星が流れます。

エンディングロールは、まるで映画のようでした。教室風景に、別荘のような場所の木の下に、二つの土饅頭。手を合わせる村上。研究室でグラーネ?の写真に見入る小五郎。天文台に入って行く村上。しかし中は真っ暗です。もう誰もいない、ということを暗示しているのでしょうか。次は研究所の場面でしょうか。羽の生えた何か、小鳥のハーネストから孵卵したものでしょうか、良くわからないものが映されています。

良太は何か箱を抱えて山道を急ぎ、次の場面ではヘクセンヤクトの研究所らしいところで薬の合成が進められているような印象です。そして屋外で天体望遠鏡に見入る寧子と後ろで見守る村上。寧子のハーネストは元に戻っていました。後ろから初菜が現れます。初菜は再生しているんだろうと思っていましたが、やはりそうでした。そして車いすに載せられ、松葉杖をもった佳奈。そしてその車いすを押しているのはカズミでした。ここはさすがに「?????」と思いましたが、初菜がいることを考えると、初菜に再生してもらった、ということなのでしょうね。

そして望遠鏡から顔を上げて空を見上げた寧子が、「あ、夏の大三角」というところで幕、ということになりました。

最初に見たときはさすがに詰め込み過ぎではないかと思ったのですが、こうして書いてみると、思ったよりずっといい話でした。

今感想を書きながら思ったことがあります。それは、この作品は「演劇」だ、ということでした。つまり、「進撃の巨人」や「シドニアの騎士」などの「世界観」を見せる作品ではなく、SFもの、魔法少女ものという形を取っていますが、基本的に「人間ドラマ」を見せるものなのです。

私は以前演劇をやっていたこともあって思ったのですが、これを書きながら、登場人物の言う言葉の一つ一つがどれも舞台上の「セリフ」っぽいのですね。こんなこと言わないだろ、と思うようなセリフとか、無理のある設定とかも、演劇と考えてみれば納得がいく、そんな感じがしました。演劇というのは結局は舞台に立っている人間そのものが魅力的に存在し、魅力的な行為をすればその他のことは多少無理があっても成立するものですから、あとのことは「お約束」とか「芝居のウソ」で許される部分が大きいのですね。

「進撃の巨人」や「シドニアの騎士」は世界観そのものが見せるべきものですから、そこで描かれている世界が一貫していることや実在感がどれくらいあるか、が重要になって来るわけですが、演劇であれば、登場人物の間の空気感や関係性というものが最も重要になってきます。そのための舞台設定も、例えばどう考えてもリハビリが必要なはずの佳奈がいきなりあの場面に現れるというのはさすがに無理がありますが、演劇なら(特に小劇場系なら)平気で出てきます。舞台では距離が表現されにくいものですから。

なんというか、今回あらすじにそって感想を書きながら、自分が芝居だったらこういうセリフを書いて、ここでこのエピソードを入れて、こういう風に盛り上げる、という頭の動き方に近い展開をしているということに気がついたのですね。最近はお芝居をあまり見ていないので気がつきにくかったのですが、この作品はそういう風に作られているんだ、と気がついたことは収穫でした。

詰め込み過ぎだとか、無理があるとか、いろいろ気がついたことを書かせていただきましたが、そういう見方で見るとこの作品はこれはこれでよく出来ていたんじゃないかなと思います。連載を追っているわけではないのでひとまずこの作品はこれで見納めですが、いろいろと発見のある作品だったなと思います。

ありがとうございました!おつかれさまでした。