聲の形(4) (少年マガジンコミックス)/講談社

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大今良時さんの『聲の形』4巻を読みました!

聴覚障害といじめの問題を扱った衝撃的な少年マガジンの連載、『聲の形』も4巻を迎えました。小学生時代に主人公・石田将也がわけも分からず耳の不自由な西宮硝子にした激しいじめの衝撃的な描写から、それが原因となって周りからどんどん孤立して行き、周りの人間の顔にみな×印をつけて無視するようになって、高校三年の時ついには自殺を決意し、その時になって自分がしたことをようやく自覚して、西宮を探して謝りに行く、という展開の1巻を読んだ時はとても読むのが辛いものがありました。

2巻、3巻と行くにつれて将也の「誠意」は硝子にも通じて行き、最初はもともと硝子に好意的だった佐原から、一人、また一人と小学生時代の友だちと連絡が復活して行きます。一方、将也にも硝子の妹の男の子っぽい結弦(ゆづる)や姉妹の母とも話が出来るようになって行き、将也も学校で永束と言う話せる新たな友達が出来たりして、一人、また一人と×印が取れて行きます。そんななかで迷惑をかけた母にバイトして稼いだお金を返して死のうとしたことを見抜かれ、そのお金を焼かれてしまいます。印象に残った場面はいろいろありますが、母親の愛情があんなにストレートに描かれたのを読んだのは初めてだった気がします。将也もそれで、死のうとしたことを強く反省したのでした。

そんな一生懸命に硝子のためになることをしようと頑張る将也を見て、硝子は回らない口で一生懸命に「好き」と伝えようとします。しかし将也は全くそれを聞きとれず、「月」と勘違いしてしまう、というところで3巻は終わりでした。

4巻はここから始まります。急に家に帰ってしまった硝子を見て結弦が心配すると、硝子はスマホで結弦に将也に好きと言ったことを打ち明け、でも伝わらなかった、と言うのでした。ベッドの上で足をバタバタさせているところが可愛いです。

結弦は小学生の頃の硝子の筆談用ノートをこっそりトイレの中で見て、悪口が書き込まれたのを読みながら、この頃に比べたらましになったのかな、と思います。

一方将也と永束が学校で映画の話をしていると、×のついた男子がぼくを主演にして、と言って来ます。一方小学生時代の同級生で今も同級の川井が、髪型を変えて雰囲気が変わって周りに騒がれています。ふーんと思った将也。川井の顔から×が剥がれます。川井は将也に、真柴くんと仲がいいのか、と聞きます。真柴とは先ほどの主演にしてくれと言って来た男子で、「真柴くんってかっこ良くない?」と言うのです。「かっこいいのか」と将也は思い、改めて真柴の顔を見ます。真柴の顔から×が剥がれます。真柴は将也に、ぼくと仲良くなってくれないか、と言うのでした。

まあ見た目かっこいいのですけど、やっぱりなんかこいつ(失礼)も変わってますよね。将也が真柴と話したり一緒に行動したりするようになって、永束が焼きもちを焼いているのが可笑しいです。将也はもともとは単純バカでそれが暴走して小学校時代に硝子に対する軽い気持ちでのいじめがすごいことになってしまっただけで、しっかりとそれを諌める大人がいたら仲直りできた、基本的には「いいやつ」なのですが、永束は典型的ないじめられやすいタイプで、自分は優れているとか野心があると思い込むことで自分を保とうとするタイプですから、将也に自分以外の友達が出来たことが面白くないのですね。

で、結局真柴と話すことで川井も将也に話しかけて来る機会が多くなり、それを若干疎ましくは思っていたのですが、そんなふうにしてその週は過ぎたのでした。

将也は西宮硝子と再会してから、毎週火曜日に「橋の上」で会うようになっていたのですが、その日永束は将也について来ると言います。結弦に話があると言うのです。真柴もついて来ることになりますが、将也は先週硝子が急に帰ってしまったことで頭が一杯で、彼らのことに気が回りません。

永束が結弦に用事があると言ったのは、結弦のもっているカメラを映画用に貸してほしい、と言う話なのでした。別にいいよ、という結弦。でも代わりに、どこかに遊びに連れて行け、というのでした。永束がかまわんよ、と言うとそこにいた佐原も行くといい、硝子も誘うということになったので将也も行くと言い、すると真柴も行くということになったので永束は来んなというのでしたが、真柴はすぐに佐原と仲良くなってしまい、一緒に行くことになったようです。

将也は結弦に硝子のことを聞くとおなかが痛いから来れないとのこと。俺避けられてるのかな、「月」なんて簡単な言葉も理解してあげられなかった、という将也に結弦は可笑しくて仕方ないのですが、「気になるならお前が誘えば」と将也の背中を押すのでした。何のかんの行っても結弦はコミュ力が高いです。

将也から遊びの誘いのメールが来たのを見た硝子は、喜んでベッドの上で足をバタバタさせているのでした。これも可愛いです。

遊びの当日。将也と硝子と結弦が待ち合わせていたところに、現れたのは顔に大きく×のついた植野でした。

植野はやはり小学校の同級生で、将也と一緒になって硝子をいじめたうちの一人です。ずけずけと思ったことを口に出すタイプの女子で、小学生時代から将也のことが好きなのでした。そして、西宮硝子が現れてから自分たちの関係がおかしくなった、将也が孤立してしまったのも硝子のせいだ、と言っています。そして今でも将也のことが好きで、将也と硝子の前に何度か現れていたのです。

ここで4巻最初の24話が終わりです。

巻ごとにまとめて感想を書こうと思ったのですが、なんと言うか細かい心の出し入れのようなものがあって、全部まとめて感想を書く、というのはちょっと難しいですね。今回はここまでにして、また続きの感想を書きたいと思います。

友達が増えて行くときのあの感じ、というのは高校時代を思い出します。私の場合も中学までと違って、なんというか普通の意味での社交的な友達付き合いのようなものが出て来たりしました。自分を全部ぶつけるというよりは一歩引いて相手を受け入れながら友達付き合いをする、というあの感じ。小学生時代のように本音だけで付き合えると言う関係ではなくて、ゆるいけれども楽な感じです。まあそういうのが苦手だ、という人も多いんだな、とは思うのですけど、私などは自分の奥底は本当には理解されないからその中を引っ掻き回されるよりはほっといてくれた方がいい、と思う方でした。でも本当は理解されたいという気持ちもある、高校の頃というのはそういうジレンマのある時期でしたね。

このマンガは、そういう「距離感」の微妙な表現が本当にうまいなと思います。その「距離感」の微妙な狂いが凄絶ないじめに変わったり、分かり合えないと思ったり、でも本当はそれほどのこともなかったり。その距離感へのこだわりのようなものが人間関係のコントロールには欠かせないのだと思いますが、将也はそういうものがもともと良くわからないところがあるのに、今はだいぶ薄れて来たとはいえ硝子に対する贖罪意識もあって、よけい分からないところがあるのですね。

いろいろ思うことも出てきますが、そのあたりのことは、続きの感想を書くときにまた書きたいと思います!