Landreaall 24巻 限定版 (IDコミックススペシャル)/一迅社

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おがきちかさんの『Landreaall』第24巻限定版を読みました!

単行本作業のためか先月はお休みだったランドリオールですが、24巻限定版はいろいろ充実していました!

24巻に収録されているのが6月号(4/28発売)の133話までなので、6/28発売の8月号で続きが読めると言うことになります。今回の休載はその調整もあったのかな、とも思います。

24巻ではクレッサール編、それもクエンティンとユージェニと、リゲインたち・DXたちとの関わりが中心になっています。


他に掲載されているのは、ゼロサムオンラインで公開されている133.5話の「プチリオール」。これはDXの騎士としてのライバル(といっていいんだよね)カイル・タリーズとイオンと同室のソニア・モントーレがお見合いおばさんの仲介でお見合いする、と言う話。お互いによく知る二人は盛り上がりますが、話題はDX・イオン兄妹のことばかり、と言う話でした。面白かったです。

そしていつも掲載されているテイルピースはイオンとクレッサール人でDXたちを案内してくれているチレクとのエピソード。六甲を賭けた女の争い(笑)です。

そして、限定版付録は「騎士にくちづけ」と題された騎士団の馬たちの会話劇。DXの頭の中を見て混乱する馬たちに、槍試合でDXを乗せたベテラン馬・アプローゼがアドバイスする、と言う話で、これも面白かったです。

今続いている話は、20年前のクレッサールとの戦争と、その際に起こった王の死、「革命」の亡霊のような話、と言っていいでしょう。

いままで明らかにされたことでいえば、アトルニアの前王は王妃(DXの父リゲインのいとこ)の死に錯乱し、王女リルアーナを王妃と取り違えるようになり、またリルアーナに剣をささげた騎士であるリゲインも王妃と密会しているとの妄想に取りつかれたのでした。王女は失踪し、クレッサールとの国境地帯のザンドリオの領主にかくまわれます。そこで起こったクレッサールとの戦争で多くの人が死に、リゲインは何度も戦場に派遣されたものの生きて帰ってきていました。ザンドリオの領主の孫・クエンティンはその際にクレッサールに連れ去られてしまったのです。

王都フォーメリーの王城グランミーアに帰って来たリゲインは王が妄想に取りつかれて王妃をかくまうものはすべて滅ぼすと言っているのを見て、王を殺してしまいます。しかし議会の指導者であったオズモはリゲインを逃がし、王は自殺したのだということにしてリゲインを革命の英雄に祭り上げました。リゲインはその後王都を離れ辺境の領地エカリープの領主となり、女傭兵のファレルと結婚してDXと妹のイオンを育てたのでした。

リゲインは戦争ののちクレッサールへ行き、奴隷にされていたクエンティンを救いだします。また、オズモたちアトルリアを再建した人々の中には前王の友人でもあった大老・ファラオン卿もいたのです。

戦争ののち、アトルニアは王国であっても王は空位となり、アトルニアでは建国を担った貴族たち「真祖」の血を引く人々を王にすべきという「真祖派」と、真祖にこだわらず「円卓」で王位継承権者の中から王を選ぶべきとする「王政派」、さらには全く王制を廃止すべきと考える「反王政派」の政治的なつばぜり合いが続いたものの、オズモとリゲインを中心とする民生の再建を重視する勢力の力でアトルニアは復興して来ていたわけです。

クエンティンはクレッサールとの間を往復して(クレッサールは部族国家で中心となる王権はありません)アトルニアとの関係を修復してきていましたが、リゲインにリルアーナの死を告げ、またリルアーナの娘であるユージェニを伴ってフォーメリーに現れたのでした。

当時のアトルニアは三派の妥協の形で形式的な円卓が行われ、男系子孫のない(アトルニアの王位継承権は男子にしか認められていません)年老いた大老のファラオン卿が、真祖の血を引くクラウスター家のメイアンディアと結婚してつなぎ的な形で王位につくことが決まっていました。

そんな中、リゲインはファレルとニンジャの六甲(DXたちと兄弟のように育った)を連れ、クエンティンとユージェニにサポートされる形でリルアーナの生きた軌跡をたどろうとクレッサールを訪れたのですが、三人は突如失踪してしまったのでした。

その報をクエンティンからの報告で聞いたDXは自らクレッサールを訪れようとしますが、ファラオン卿はなぜかメイアンディアに同行を命じます。実はDXは王妃になる人とは知らずメイアンディアに恋し、槍を彼女に捧げていたのでした。一方メイアンディアの友人でもあるイオンは同行を禁じられたのをメイアンディアに頼み込み、侍女に扮して同行したのでした。

クレッサールに入り、「灰捲」と呼ばれる部族の兄妹、バハルとチレクに助けられた六甲を見つけたDXたちは、バハルたちのサポートを得る形でリゲイン達のあとを追います。市場で「葛焚」と呼ばれる部族の呪術師(以前王位継承権を持つDXを亡きものにしようとした勢力によっていのちを狙われたことがあった)と出会い、手掛かりを持つと思われる「曲鳴」部族の居場所を教えてもらいます。一方、行方不明になっていたリゲインとファレルは、クエンティンの城につかまっていたのでした。

24巻のストーリーはここからです。

1話ごとの感想だとここまで語られているストーリーのうちその話に関係あることだけ書けば済みますが、1巻全部だとかなり書かなければならないんですね。これでもエカリープの娼館で働いていてDXたちとフォーメリーにやって来たロビンの話(実はファラオン卿の息子・ローハルト卿の隠し子らしい)など、いくつか重要なストーリーを省いて書いているのですけどね。

24巻では、リゲインたちを自分のコントロール下に置こうとするクエンティンと、リゲインたちを探すDXたち、アトルニアの王城での動きが同時並行して語られます。

リゲインたちをとらえたクエンティンは、王女リルアーナの真実と自分のやろうとしていることをリゲインたちに語り、それに賛同するように求めます。王女リルアーナは、クエンティンがリゲインに救出されたとき、すでに亡くなっていたのです。実はクエンティンは「曲鳴」の呪術師たちのエコーとして使われて人格を失いかけていたところを髪飾りと引き換えにリルアーナに救われ、古い砦でリルアーナ・ユージェニの母娘とリルアーナが亡くなるまで住んでいたのでした。

クエンティンはすでにザンドリオを滅ぼした前王への嫌悪と、王政廃止の主張を語ってはいましたが、その狙いはもっと深く、真祖派そのものをアトルニアから一掃しようとしていたのでした。そしてそのために真祖の血を引く王女・ユージェニに深く前王を憎む気持ちを植え付けていたのでした。

リゲインは王を殺しはしましたが、リゲインとオズモによる「革命」は、そうした過去の因縁の三派の争いに決着を付けることではなく、いわばそれを棚上げし、新しい世代に国の行く末の選択を任せようという「革命」だったのです。

しかしそういう意味での「革命」の英雄だったリゲインは反王政派にとっても王を打倒した英雄でもあるわけで、ユージェニとクエンティンはリゲインに自分たちの王制廃止の主張に同意させ、ともに行動することを求めたのでした。

しかしリゲインは、そのような争いに今のアトルニアは耐えられない、せっかく復興し国民の信頼を取り戻しつつあるアトルニア国家が崩れて行ってしまう、と主張します。交渉は決裂し、ユージェニと戦うことになったのでした。

一方DXたちは葛焚に教えられたオアシスで曲鳴の若い呪術師を救い出し、曲鳴の村がクエンティンに壊滅させられたらしいことを知ります。そこに現れたクエンティンは、DXとメイアンディア(その侍女としてついて来たイオンも)をその砦に「招待」します。メイアンディアはとっさに曲鳴に頼んで六甲を五十四さん(DXの親友リドについているニンジャ)の姿に変え、ユーハサンにいると曲鳴に教えられた「メルメルばあさん」のことを探るようにと六甲に行って、バハルたちとユーハサンに送り出したのです。

一方クエンティンたちの砦でDXはユージェニと結婚して最後の王になってくれ、とクエンティンに頼まれます。そうなれば、ファラオン卿と結婚することになっているメイアンディアを自由にできる、と言うのです。クエンティンは「恋のため」に自分たちに従わないか、とDXに迫るのでした。

ストーリーはスケールが大きく、また深刻なのですが、メルシュカのオアシスの光り苔がまるで星空を歩いているみたい、と言う描写など、美しい場面、幻想的な場面も多いです。ファンタジックな設定の多いランドリの世界の中でも、特にクレッサール編は幻想性が高いなと思います。

国の行く末をめぐるこの大きなストーリーの流れがどこに行くのか、これからも楽しみに読んで行きたいと思います!