CD付き ピアノの森(24)限定版 (モーニングKC)/講談社

¥1,598
Amazon.co.jp

モーニング30号で、一色まことさんの『ピアノの森』第228話「公正な審査のために」を読みました!

私はふだんはDモーニングを購読しているのですが、『ピアノの森』が掲載されたときは本誌も買うようにしています。Dモーニングは購読期間のバックナンバーはダウンロードし直すことによってずっと読むことが出来ると言うてんで便利ではありますが、その度に手間がかかると言う不便もあり、『ピアノの森』に関しては紙の雑誌でもっていたいという気持ちもあって、本誌も買っているのですが、そうするとやはり紙の雑誌の手触りや手軽さを再確認することも多く、すべてデジタルと言うわけにはいかないなあと思ったりもするのです。

『ピアノの森』はなかなか新しい単行本が出ませんから、単行本後の展開が気になったとき、読み返すためには本誌のバックナンバーがいるわけで、これは読み始めた頃の習慣で『ピアノの森』の掲載されている号だけ単行本が出るまで保存するようにしてきました。デジタル化されたので、まあそんなふうにこの習慣が変化したわけですが、紙の雑誌の良さも改めて感じますね。

さて、余談が長くなってしまいましたが、ショパンコンクール、ついに最終演奏者の演奏が終わり、コンテスタントたちもくつろぎ、審査結果を待つと言う状況になる中で、記者のシモン=ハウスネルが、一次予選で落とされた華麗なピアノを弾くピアニスト・カロル=アダムスキが「公正な審査のために手を打った」と漏らしたところで227話は終わりでした。

アダムスキはポーランド人なのですが、ほとんど独学で成功したピアニストなので、審査員の過半数を占めるポーランド人審査員たちに嫌われ、1次で落とされてしまったのです。ハウスネルは記者会見場でそれに抗議してつまみ出されたのですが、今回はファイナルの審査前にヤシンスキ委員長に会い、ある企画を見てもらったと言うのです。

それは、音楽雑誌の50周年記念として進められていた企画で、世界の名だたるピアニスト7人に今回のコンクールを細かく採点してもらったと言うのです。1次の音源を、通過者30名にアダムスキのものを加えて聞いてもらい、7人全員がアダムスキに高得点をつけた、とハウスネルはヤシンスキにいいます。

ハウスネルは、この7人の採点と審査員の審査結果の相違を記事にしたい、と考え、その採点表を公表することを求めてヤシンスキに会いに来たのでした。

ヤシンスキはあっさり断りますが、ハウスネルは「公正な審査にするための仕込みは出来た」と満足そうです。それが何を意味するかが、これから明らかになります。

さて、その審査会場。1時間の猶予の後、ハウスネルは順位と各賞を書いて出してくれ、と求めます。今回の審査は12人のファイナリストに1次からファイナルまですべての演奏を総合的に見て自由に順位をつける、ということになったのでした。1位なしで2位が二人でもよく、その順位を全審査員19人で割り、平均点が一番小さい人が1位になる、と言うやり方なのです。

それは、ハウスネルがヤシンスキに提出した企画書が発端でした。ハウスネルが採点表の公開を求めた、と言う話を聞いて焦ったのはポーランド人審査員たちでした。彼らはポーランド人に有利になるように採点するだけでなく、自分たちの生徒に有利になるように他の審査員と点の貸し借りをしたりしていたのです。

審査委員長のヤシンスキは、審査員の名は公表しても、公正で透明なやり方で審査しているのだから問題ないとし、審査員たちに1次2次と同じやり方でファイナルのみ採点するか、総合的に見て順位のみつけるか、を図ります。公表するならシンプルに分かりやすくした方がいい、と言う意見でした。

ポーランド人審査員たちは1次2次の採点も公表されると聞いて焦りますが、副委員長アンジェイ=パヴラスが総合点なら予選の採点は公表しないと言うことになる、といい、審査員たちも安心して総合点でつけることに賛成したのでした。

しかしこの審査方法でも、審査員たちはとても迷っています。「上位の三人」の順位がつけがたい、と言うのが理由のようです。審査会場ではナレーター的な役割でいろいろ説明しているオーストリア人のクリスティナ=バイヤーは、点数をつけるだけの方がずっと楽だ、採点が公表されるとなると自分の音楽家としての感性が問われるのでは、よけいなことも考えてしまう、と言います。「私の気持ちの中では優勝者ははっきりしているのだが…」と。

そしてヤシンスキのセリフ。「一つアドバイスがあるとするなら、よけいなことを考えず一番よかったピアノを1位とすること」と言います。さて、この言葉がどういう影響を与えるのか、審査が楽しみになってきました。と言うところで次回です。

さて、ハウスネルの思惑は見事に的中し、ピアノの善し悪しだけで採点される「公正な審査」になりそうな雰囲気になってきました。どうしてもポーランド人のレフ=シマノフスキを優勝させたいピオトル=ウェペルも困っているようです。

上位3人で迷う、と言うのはおそらくカイ、レフ、パン=ウェイの3人のことではないかなと思います。レフは途中で独走してしまった部分がありましたし、カイはないはずの後奏を弾いてしまっていますし、パン=ウェイは自らカイに負けたと認めているような口ぶりがあり、そのへんどうなるのかな、と思います。

ここで、関係して来るのがカイの天才的な手の手術をする医者・仲尾との約束との約束。これははっきりとは書かれていませんが、おそらくはカイの先生である阿字野(左腕が事故でうまく動かない)の手を治すことを頼んでいるのだと思います。優勝したらその優勝賞金で手術をする、という話なのです。

実際コンクールの審査と言うのはいろいろ政治的な裏があったり経済的な強弱関係に左右されたりすることはないとは言えないと思いますし、そのあたりはけっこう面白いなと思ってはいたのですが、でももちろん「一番よかったピアノを一位にする」審査が最も公正であることは言うまでもありません。

次回229話は33号(7/17発売)に掲載される予定だそうです。3週間後ですね。審査がどのように進むのか、楽しみにしたいと思います!