極黒のブリュンヒルデ Blu-ray BOX II/バップ

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アニメ『極黒のブリュンヒルデ』第12回「魔女狩り」を見ました!

4月に始まった春のアニメ、1クールのものはどれも大詰めを迎えていますが、この『極黒のブリュンヒルデ』は全13回なので今回と次回で結末、ということになります。

『極黒のブリュンヒルデ』は「研究所」で改造された「魔法使い」の少女たち、(寧子・カズミ・佳奈・小鳥)、が一度見たことは決して忘れないという能力を持った少年・村上良太の助けを借りて高校の天文台で隠れ住んでいますが、研究所の刺客の魔法使いたちが彼らを捜しに来て戦うことになる、というかたちになっています。

研究所がなぜか特にこだわって探しているのが「1107番」と呼ばれる魔法使いなのですが、「ヴァルキュリア」と呼ばれる最強の魔法使い・藤崎真子がついに「1107番」のいる天文台の場所を突き止め、村上や寧子たちの前に現れ、「久しぶりね、寧子」と言ったところで前回は終わりでした。

今回は、真子が乗って来たと思われるヘリコプターから研究所の九千怜(いちじくちさと)が降りて来る場面からです。九は村上の親戚で魔法使いが一日一錠飲まなければ死んでしまう「鎮死剤」の再現に協力している科学者・小五郎の東大の同級生です。

天文台の中に現れたヴァルキュリアは寧子に呼びかけますが、寧子は覚えていません。ヴァルキュリアの姿は髪が白いだけで寧子と瓜二つです。そこに現れた九。カズミたち魔法使いは動揺しますが、九はいきなり「1107番鷹鳥小鳥、こちらへ来い」と命じます。「逃げることは許さん。お前の命は私のものだ」というのです。

「もうあかん」と観念するカズミ。一方良太は唯一の手がかりである寧子のもっていた謎の端末のスイッチを入れると、九の方に歩み寄ります。「あんたに話がある」と言い始めた村上の目に映ったのは、背後でこちらをうかがう魔法使い・初菜でした。初菜はヴァルキュリアの監視役として派遣されたものの、ヴァルキュリアの破撃の魔法で気を失い、その場を逃れて天文台にやって来たばかりなのでした。

村上はとっさに土下座して「俺は殺さないでくれ!」と叫び、九とヴァルキュリアに隙を作ります。それを見ていた初菜は村上の狙いを悟り、ヴァルキュリアをハングアップさせるためにうなじの「ハーネスト」のボタンを押そうとします。ハーネストにはハングアップボタン、イジェクトボタン、謎のボタンの三つがついていて、ハングアップすると能力が使えなくなり、イジェクトされると身体が溶けて死んでしまうのです。

飛びかかる初菜。しかし、ヴァルキュリア・真子のハーネストにはボタンらしいボタンがついていません。戸惑っているうちにヴァルキュリアの反撃を受け、初菜は重傷を負ってしまいます。

村上は九に、「彼女たちはただ生きたいだけなのに、なぜそれさえ許さない!」と九に食って掛かります。九は冷酷に「生かしておく理由がないからだ」と答えます。「殺される魔法使いの気持ちを考えたことがあるのか!」と食い下がる村上に九は、「お前は虫を殺すたびに相手の気持ちになって考えるのか」とさらにダメを押します。「生命に取って尊いのは自分自身の命だけだ」というのです。九はヴァルキュリアに「1107番以外殺していい」と命じ、「寧子は殺さないはずじゃあ」という真子に「命令が聞こえなかったのか」と冷酷に念を押します。ヴァルキュリアは九に恋愛感情を持っていて逆らえないので仕方なく殺そうとしますが、隙を見た小鳥はヴァルキュリアに飛びかかり、破撃をそらします。しかし九は小鳥の頭を踏みつけて銃を突きつけます。

寧子は二人に破撃を向けますが、九は真子に「早くしろ」と命じ、真子は「ごめん」と言って寧子に破激を向けます。そのとき村上が寧子に飛びかかり、寧子を押し倒して自分が破撃を受けてしまいます。口から血を流して倒れる村上に、駆け寄る寧子とカズミと小鳥。村上は虫の息の中、「お前なんかと一緒にするな。俺にはあるんだ。自分よりも大切な命が」と。

目を閉じた村上の前に、記憶の中に書き込まれた奈波の姿が現れます。奈波は研究所から派遣されて魔法使いたちを捜索に来た記憶を操る魔法使いだったのですが、一緒にここに暮らそうと誘われてその気になりながら、イジェクトされて死んでしまったときに、彼女の記憶していることをすべて村上の記憶に書き込んでいたのです。

奈波は村上に、「研究所が恐れている魔法使いは、1107番鷹鳥小鳥と、黒羽寧子だ」と告げるのでした。寧子はヴァルキュリアよりも強い力を持っているのだけれども、不安定なので研究所によって封印されている。それを解いても99.9%の確率で封印を解けずに死んでしまう、というのでした。

目を閉じた村上を見てカズミは怒り、九に飛びかかります。突き倒して足蹴にする九に怒った寧子は二人を破撃しようとしますが、ヴァルキュリアは寧子に「あなたはものしか壊せない使えない魔法使いだ」と言います。そして、寧子はハングアップしてしまいます。カズミは、「なぜ自分たちはこんなにすべてを失わなければならないのか」と泣きます。「私に力があれば」と泣く寧子に、村上は「封印を解除すれば寧子はヴァルキュリアよりも強い。それはハーネストの一番上の謎のボタンを押すことだ」と言います。しかし99.9%死ぬと言われたボタンを俺には押せない、と言って観念します。

全員を殺そうとする真子。しかし魔法が使えません。そこに、謎の一団が現れます。

現れたのは、研究所から逃げ出した「魔女狩り」の一団でした。彼らは村上の押した端末のGPS情報をたどってここに現れたのでした。そしてその中の「イニシャライザー」の力により、魔法が中和されてしまったのでした。1107番をよこせ、という魔女狩りたちに、九はイニシャライザーを撃ちます。そして彼が倒れている隙に、ヴァルキュリアの瞬間移動の魔法によって九も小鳥も消えてしまったのでした。

村上にすがるカズミと寧子。しかし心臓は止まってしまっていました。カズミは「村上がおらへんのに私が生きててもしゃあないやん」と泣きます。死んだ相手への告白、歌舞伎でいえばクドキの場面になっています。初めて本当の気持ちを話すことが出来たのですね。寧子も「私が死んでも、村上くんが生きていてくれたらそれでよかったのに」と泣きます。ここで前半が終了です。

ここまででも、さすがに10分あまりの中に展開を詰め込みすぎな印象です。こうやって展開を書いてみると何が起こったのか分からないことはないですが、最初に何となくぼんやりと見ていたときには「九と真子が小鳥をつれて消えた」ということ自体を把握できず、何をのんびり愁嘆場をやっているのか、と思ってしまいました。

後半は、初菜が現れるところから始まります。初菜は再生の魔法使い。イジェクトボタンを押されなかったので、逃れた初菜はもう治っていました。そして彼女は、「心臓が止まっただけなら助けられる」というのです。でもこの力を使うと自分の身体が溶けてしまう、という初菜。でも身体が溶け切る前に直すことが出来たら何とかなる、というのでした。

治しながら自分が溶けて行く初菜。治療の場面、溶けて行く場面はどうもぼやかされています。この辺り放送ではコードに引っかかるということでしょうか。BDではもっとリアルに見られるのかもしれません。入浴場面などでも期待の声がありましたが、その辺りは良くわかりません。しかしハングアップしてしまった初菜は、身体が溶けてしまいます。

カズミが泣いていると、寧子は一生懸命村上に人工呼吸をしています。佳奈に促され、カズミも心臓マッサージをします。その甲斐あって、村上は息を吹き返し、カズミは村上に抱きつきます。寧子はヨヨと泣きます。このあたりはなんというか。うん。ですね。

しかし、その場面を見ていた(この間何をしていたのでしょうか)魔女狩りたちが「魔女たちには死んでもらう」と迫ります。「私たちはヘクセンヤクト。研究所の計画を阻止しようとするレジスタンスだ」と言います。魔法使いが生き続ける限り、ハーネストの中のドラシル(刺客の魔法使いが倒れたときにハーネストの中から現れたスライムのような生物)が生き続け、魔女の身体を食い尽くして孵卵し、ただ人を食うだけの怪物として現れる、というのでした。私たちが化け物に、とショックを受けるカズミ、寧子、佳奈でしたが、ヘクセンヤクトは「でも本当に恐ろしいのは1107番だ」というのでした。

九の隠れ家で九たちに連れ去られた小鳥が寝かされている場面。九は小鳥に、「怜那」と呼びかけます。怜那は九の妹で、病気で死んでしまったのを別の肉体に脳を移植し、蘇らせようとしますが出来なくて、「命とは何か」という研究に九は没頭していたときに、山上に幻のように現れた集団に「真にこの地上を支配する人類を創造し、魔女の体内から現れたドラシルから数千分の一の確率で現れるグラーネこそが完全な生命体を作るために必要なのだ」というのでした。

つまり小鳥は、そうやって九が蘇らせた怜那だったわけです。九は小鳥に、「地球上の人類はすべて宇宙人が作り出したものだ。宇宙人たちは地球をリセットする仕組みを人類の遺伝子に組み込んでいた。その人類滅亡のスイッチがお前だ」と告げるのでした。

ヘクセンヤクトは村上たちに、「小鳥に入っているグラーネが孵卵したら、全生命の細胞が融解し、地球は無生物の星になる」と言います。「いくらなんでもそんな話」という村上に自分たちは研究所にいてそれを知り、小鳥を殺すために輸送車を襲ったが、他の車も巻き込んで仲間を失った、というのでした。その仲間というのが寧子に端末を渡した女性だったようです。「私ら殺されてもしゃーないわ」と泣くカズミに、村上はヘクセンヤクトたちに、「こいつらは薬がなくてあと1週間しか生きられないのに、今殺す必要はないだろう」といいます。

イニシャライザーも、こいつらは放っておいても死ぬから、1107番を探し出す方が先決だ、といいます。しかし九の隠れ家がどこにあるか分からない、と言うヘクセンヤクトに村上は、カズミなら場所を突き止められる、と言います。そして突き止めたらその代わりに自分たちも連れて行ってくれ、というのでした。

研究所の九のデータは削除されていて、それは別の魔女の仕業だったようですが、カズミはデータをリストアし、九が(諏訪湖をモデルにした)湖の近くに母親名義でもっている別荘にいる、ということを突き止めます。よくやった、と言われて顔を赤らめるカズミ。ヘクセンヤクトのヘリコプターで天文台を出る村上、寧子、カズミ。しかし溶けてしまった初菜のハーネストの周囲から、謎の触手がいくつも現れます。

一方九と小鳥。九は小鳥に、「お前の脊髄に入っているグラーネは、怜那の脳を食わせたものだ。それでグラーネには怜那の意識が宿るはずだったがだめだったようなので、別の宿主にグラーネを移し、お前には死んでもらう」というのでした。自分以外の命など等しく無意味だが、怜那の命だけは違う、という九。他の命をどんなに費やしても、怜那の意識を覚醒させると。ヴァルキュリアの命も無意味なのか、と問う小鳥に、何の感情もない、といい切る九。それを聞いたヴァルキュリアは、「知ってた。でも好き」と涙を流します。

そのとき、小鳥の悲鳴が響きます。「まさか、孵卵するというのか」とつぶやく九。閃光が上空に上がり、光る雲が夜空に広がって行きます。それはアインスオブオール、生命を司る光。それが世界に広がると世界は死滅する、とイニシャライザーがつぶやきます。というところで続く、でした。

設定がやたらと中二病的な大げさな要素が多いのはそういうものと考えるしかないとは思うのですが、それを最終回1回前の今回に初めてこれだけ大量投下するというのは、さすがにどうかなと思います。消化しきれない、と言うかやはりこういうものはある程度のリアリティをもたせるのに時間を必要とするものですから、余りにリアリティが生まれて来てないまま20数分で話を進ませるというのはさすがに無理なのではないかと思わざるを得ませんでした。

日常的な場面で魔法使いたちと村上の交流を描き、親しさと信頼感が醸成されていき、また恋愛感情が生まれて行く場面と、シリアスなサスペンスに満ちた研究所との攻防の場面を、どう組み合わせてリアリティとヒューマニティーと萌えを実現させるか、というのがこの作品のポイントではなかったかと思うのですが、どれもこれもと前半に欲張りすぎておもちゃ箱にぎっしりつまった設定を最終回前にひっくり返した、という印象は否めないなあと思います。

ただ、いろいろ考えていても仕方ないので、次回最終回、どのような形で収束させるのか、楽しみに待ちたいと思います!