CD付き ピアノの森(24)限定版 (モーニングKC)/講談社

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Dモーニング27号で一色まことさんの『ピアノの森』第227話「運命のピアニスト」を読みました!

先日発売された24巻は、ショパンコンクール本選で、主人公・一ノ瀬カイの見事な、そして見事を越えた演奏が終わったあと、ラストのレフ・シマノフスキが今まさに弾き始めた、というところで終わったわけですが、それは223話なのでモーニング連載で3回分がすでに発表されています。しかし前回の掲載が18号でしたから2ヶ月以上間が空いたことになります。本当にようやく、待ちに待った227話です。

以下、ネタバレがありますので気になる方はご注意ください!

いよいよ審査発表を待つだけとなった演奏会場。小学生時代からカイをライバルとして意識して来た秀才ピアニスト・雨宮修平は会場でカイを探しますが、見つかりません。しかしそこで、同じく子供の頃からカイの演奏に取り憑かれていた少女、今回は腱鞘炎で出場できなかった丸山誉子が声をかけます。

一方、ワルシャワ市内のとある隠れ家レストランでは、最終日最初の演奏者・向井悟が両親とピアノ教師と食事をしています。向井はコンクールの終了後父と同じ調律師の道を歩むと決めていたのですが、父親はもっとピアニストの道を追求したらどうだ、と提案したのです。それはそうでしょう、世界最高峰のショパンコンクールの、それもわずか12人の本選出場者の一人になり、ノーミスで弾き切ったピアニストなのですから。私は調律の世界には詳しくありませんが、それほどのピアニストが調律と言ういわば裏方に回るという例があるのでしょうか。

しかしこのマンガは、「え、そんなことが」と思うようなことが実は実例から引かれているということがよくあります。例えばプレリュードの24番の最後の最低音のD音を拳で叩く、というのは実際にダンタイソンがショパンコンクールでやったことだそうですし、またコンチェルト1番の後奏をオーケストラと一緒に和音を弾き続けるというのもルービンシュタインが実際でステージでやったことがあるのだそうです。ですから、そういう調律師もいたのかな、と思います。

しかし向井は、「僕は世界一の調律師になる!」と宣言します。父さんの仕事、父さん自信を心から尊敬しているから、と言うとともに、「ここで運命のピアニストに出会ったんだ!だから、なんとしても彼専属の調律師になりたい!」と言うのでした。それは誰か、と聞かれて顔を赤らめる向井の前に、ちょうど入って来たのがカイと阿字野、それにジャン・ジャック・セローでした。「まさかセローの」と言う父親たちに、向井は違うよ、と言っているとき、カイは向井に気がつきます。

向かい都会はお互いに演奏を称え合います。そしてカイは、向井に言います。あの演奏が出来たのも、向井のお陰だと。向井の演奏を初めて聴いて、「音を大切に弾くってこういうことなんだって、向井さんのピアノから学びました。向井さんのピアノを聞いてからファイナルに臨めたのは大きかったです。」というのでした。向井は、「そこに気づいてくれるんだ、さすがだなあ。ありがとう!一番嬉しい言葉だよ。でもそれ審査員は分かってくれるかなあ…」と感激するのでした。

一方、ミュージシャンのハンドドクターとして有名な仲尾と、彼をカイに紹介した梨本もこのレストランで食事をしています。梨本は仲尾に、「カイに優勝という条件を付けたことを撤回してあげてくださいよ」といいますが、仲尾は「僕の約束は契約と同意だよ」と言います。例のカルテを見せろ、と仲尾は言いますが、梨本は「アレ?」とか言っていて何となく頼りになりません。(笑)

一方か以上裏口では中国政府から派遣されパンウェイを幽閉して最終日の演奏者にし、優勝を勝ち取るように画策している男の前に、パンウェイが現れます。自分に任せておけば優勝間違いなしだ、という男にパンウェイは、審査にいっさい干渉するな、と詰め寄ります。パンウェイは、干渉なしの審査を強く求めているのです。

一方、会場近くの酒場では、ポーランドの人気ピアニストでありながらポーランド人審査員たちに疎まれ一次予選で落選したアダムスキと、それに抗議してつまみ出された記者・シモン・ハウスネルが呑んでいます。ハウスネルは審査委員長ヤシンスキに直談判し、出入り禁止を解除させていたのです。ハウスネルはヤシンスキに、公正な審査が行われるように手を打った、と言います。審査会場ではヤシンスキが、何やら考え込んでいます。というところで227回は終わりです。

今回は、今までの主要な伏線を整理して、特に向井がカイの専属調律師になりたい、という希望を述べるところが白眉だったと思います。なるほどそういう前提で、向井と言うピアニストが出て来たんだなとようやく彼の存在意義が分かった気がしました。雨宮と誉子がどういう会話をしたのか、それは分かりませんが、次回はその辺りから始まるのかも、という気がします。一方、ハウスネルが打った手というのがどういうものか、それも楽しみですね。

こういう審査の世界に持ち込まれる政治と駆け引きみたいなものが、ショパコン編では一つの見所の一つですし、特に「我々ポーランドのショパン」にこだわる審査員・ピオトル・ウェベルがどういう発言をするのかも気になりますね。何しろショパコンの審査員の半数はポーランド人であるわけですから。

次回掲載は30号、6月26日発売だそうです。演奏は終わりましたが、ますます今後の展開が楽しみになって行くのでした!