One piece (巻9) (ジャンプ・コミックス)/集英社

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尾田栄一郎さんの『One Piece』第9巻(後半)を読みました!幼いナミの悲壮な決意に涙しました!

『One Piece』は現在出ている単行本が73巻、その筋立てで第12巻までが「東の海(イーストブルー)編」で、グランドラインに入ってからの12巻101話から24巻216話までが「アラバスタ編」というように、それぞれグループ分けされているようです。

その最初の「イーストブルー」編も大詰めになってきました。

昨日は9巻の75話、アーロンパークの前でルフィ・サンジ・ヨサクとゾロが揃って、そこにジョニーが『ウソップがナミに殺された!』と走り込んできたところにナミが現れた、というところまででした。

ナミはルフィたちに自分がルフィたちに近づいたのはお金のためだし、ここで何が起こってるのかも知らないよそ者がこれ以上口出しをするな、「ここからさっさと出て行け!」と言います。それに対してルフィは、どーんとひっくり返って「ねる」と言います。「島を出て行く気はないしこの島で何が起きてんのかも興味ねえ。ねる。」というのです。このあまりのルフィの「どーん!」とした反応にナミは対処できず、「勝手にしろ!死んじまえ!」と言って去ります。

この一貫して仲間を信じる、ルフィの「どーん」とした態度が、このストーリーの大きな魅力だな、とこういう場面をみると思います。どんな事情があるか知らない、お前が何を言おうが知らない、お前は俺の仲間だ、だから俺はお前を信じる、と。この終始一貫して仲間を信じる姿勢こそが、「海賊王」の絶対の資格だと、ルフィは思っているようです。

しかしウソップは生きていました。そしてルフィたちの元にたどりついて、ナミに救われたことを告げます。ナミには何か事情があるに違いない、というウソップに、そこに現れたナミの義理の姉ノジコが、「いきさつはすべて話すからこれ以上この村に関わらないで」と言います。

しかしルフィは、「俺はいい。あいつの過去になんか興味ねえ。」と言って散歩に行ってしまいますし、ゾロは話なら俺たちが聞く、と言ったきり眠ってしまいます。ルフィはナミを絶対的に信じ、ゾロはそんなルフィを絶対的に信じているのです。それを見たノジコは「なるほどナミが手こずるわけだ」と微笑んでため息をつくのです。

ノジコもナミも、この村のベルメールさんという元海軍の女性に子供のときに戦場で拾われて育てられルトいう生い立ちを持っていたのでした。子供の頃からナミは地図が好きで、「私の航海術で世界中の海を旅して、自分の目で見た世界地図を作る」という夢を持っていたのです。

そんな彼女らが暮らすココヤシ村を、ある日魚人海賊アーロンが襲います。アーロンは人間たちに多額の奉貢(貢ぎ物の金)を払わせ、払わない奴を殺す、と言います。アーロンの絶対的な力を知った村人たちは、それに逆らわずとにかく生き抜くことを決意しますが、お金のないベルメールは自分のなけなしの金でノジコとナミの命をあがない、自分は殺されたのです。

ナミの書いた見事な海図に驚いたアーロンはナミを連れ去ります。そしてふらっと帰ってきたナミは、「私アーロンの一味に入る…測量士になって海図を書くの。」といいます。腕にはアーロンの入れ墨を入れられ、たくさんのお金を与えられていました。村人から追い出されたナミは、ベルメールさんの墓の前でいいます。「生き抜けば必ず楽しいことがたくさん起こる、って言ったよね。」と。ノジコにナミはあいつらの仲間に入って海図を書いて、1億ベリー稼いでこの村を買う。「もう泣かないって決めた。一人で戦うって決めたの。」とつげたのです。

ナミが今までに海賊相手に泥棒して稼いだお金は9300万ベリー。あと1回の航海で1億ベリーになってアーロンから村を買い戻し、すべてが報われる、とナミは思っていました。しかしそこに海軍の大佐ネズミが現れ、ナミの稼いだ金を「泥棒した金だ」と没収されてしまいます。ネズミを差し向けたのは、実はアーロン自身で、海軍がアーロンの手先になっていたのです。

アーロンに抗議するナミですが、「俺は約束を破っていねえ」とアーロンは平然と言い放つのでした。一方そのいきさつを知った村人たちはついに立ち上がります。ナミはそれを止めようとしますが、もう止まりません。どうにもならなくなったナミは、自分の腕の入れ墨を滅多刺しにします。

そこに現れたルフィは、無言でナイフを取り上げます。ボロボロと泣くナミはついにルフィに「助けて…」と言います。ルフィはナミの頭に無言で何よりの宝のシャンクスにもらった麦わら帽子をかぶせ「当たり前だ!」と叫びます。そしてゾロ、ウソップ、サンジに「行くぞ」といい、アーロンパークに殴り込みをかけるのでした。

みんなのために、自分は憎い敵の一味に身を落としても生き抜く。これはやはり「身売り」の感覚ですね。周りもその志を多とするから、あの子のことにこれ以上関わらないで、と言い、そして本人がさらに縛られて行く。しかしアーロンからさらに非道を加えられて、村人たちはもうこれ以上は全滅しても戦うしかない、と決意することによって、ついにナミが「仲間」に頼る。頼らずに生きてきた少女が、ついに仲間に頼る、それが一つの脱皮、成長なんだ、というこのストーリーは泣かせます。

やはり幼いナミの決意のいじらしさと、それを無惨にも打ち砕くアーロン、そしてナミを仲間と信じるルフィに、ついに決着を委ねるナミという話はとてもいい。どんなに優れていても、一人では戦えないんだ、信じられる仲間が必要なんだ、というこの物語の主題がはっきりと現れている話だなあと思います。

正直読むのが辛くて困ったなあと思ったのですが、あらすじを書いてみて物語がよりはっきり見えました。それがないとこれからの戦闘の意味付けも深みが変わってきますので、やっぱり辛くてもちゃんと読んだ方がいい、と思ったのでした。