進撃の巨人 Before the fall(2) (シリウスコミックス)/講談社

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士貴智志さんの『進撃の巨人 Before the fall』第2巻を読みました!

昨日4月9日は『進撃の巨人』スピンオフ祭りで、別冊マガジンにも『Before the fall』『悔いなき選択』の出張版が掲載されていましたが、この二作品とも昨日単行本が発売されました。

『Before the fall』はスピンオフ小説として涼風涼さんが2011ー2012年に書かれた作品が原作で、舞台は本編よりも数十年前の巨人世界です。

原作小説では第1巻が立体機動装置と超硬質スチールの原型を作ったアンヘルが主人公で、第2巻と3巻が第1巻の事件で巨人の口から「生まれた」巨人の子・キュクロが主人公になっています。

マンガ版『Before the fall』は主人公がキュクロで、生まれたときのエピソードに続いて、小説版第2巻の内容に突入しています。

キュクロの本当の父親は調査兵団の班長・ヒースで、彼を失って心を病み、「巨人崇拝」のシンボルになっていた母エレナがシガンシナ区の門を開かせたために巨人が壁内に入ってしまい、エレナは巨人に食われてしまうのですが、その巨人の嘔吐物の中からキュクロは生まれたのです。

身寄りもないキュクロは目端の利く商人に買われて見せ物として売られていましたが、あるとき豪商のイノセンシオに買い取られ、息子のシャビイが兵団に入って活躍するために「巨人の子を殴る蹴るして度胸をつける」ために買い取られます。娘のシャルルはそれを知って「巨人の子」を殺そうとしますが、キュクロが人間であることを知ってキュクロに言葉や知識を教えるようになります。

本編では壁を信仰する「ウォール教」という宗教が出てきますが、小説版の世界ではエレナのような「巨人」そのものを信仰対象にする人たちがいて、彼らがイノセンシオの屋敷を襲撃したことでキュクロとシャルルは家を離れることになります。

第2巻の話はここからです。

小説版では、二人はしばらくの間ウォールシーナの地下都市に身を隠すことになるのですが、マンガ版ではすぐに二人はシガンシナ区へ向かいます。子供二人の生活の様子は、小説では地下都市の場面に相当しますが、二人はそこで「調査兵団の活動再開」の噂を聞き、キュクロは調査兵団の荷馬車に潜り込んで壁外に出ることになります。

キュクロは荷馬車の中で誤って信号弾を発射してしまい、隊長の前に姿を表すことになりますが、そこに巨人の襲撃を受け、否応なく戦いに巻き込まれてしまうのです。

このストーリーを『進撃の巨人』の世界の全体の中で、どのように位置づけていいのか、もともとの原作者の諫山さんの意向がどのくらい反映されているのか、どうなんだろうなあと思うところもあるのですが、その難しい立ち位置の中で、巨人の子・キュクロの物語として組み立てられて行く物語を読んでいると、頑張っているなあと思います。

私がスピンオフ作品の中で一番好きなのはアニ外伝のBD6巻の特典ビジュアルノベル「Wall Sina, Goodbye」なのですが、リヴァイ外伝の『悔いなき選択』と同じく、本編で立っているキャラクターの魅力をそのまま引き出すという形で作られているので、そこは上手く整合性が取れると思うのですね。

しかし「Before the fall」はキャラクターにいっさい共通性はなく、設定のみを使って書いているし、また「立体機動装置の起源」とか「立体機動の始まり」と言ったかなり本質に関わるところを描いているところがけっこう微妙なのではないかと思うし、また結局は世界を一から作る必要があるという苦労もまたあるわけです。

少女マンガ的な線と構成ですしが、巨人の描写は原作とは一線を画していて、それはむしろ諫山さんが否定した方向性(見た目が怖い)ではあるわけですが、なんと言うか何重にもハンデを負った上でのトライがどこまで描けるのか、ハラハラしながら見ている感じがします。

シャルルがかわいいのはいいのですが、ちょっとキュクロがイケメン過ぎるかなとか、微妙に思うところもあったりしますしね。(笑)

次巻の展開も楽しみにしたいと思います。