ピアノの森(23) (モーニングKC)/講談社

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モーニング第18号に一色まこと『ピアノの森』第226話が掲載されました!

不定期でいつ掲載されるか、前の週までなかなかわからない『ピアノの森』ですが、今日3日発売のモーニングに第226話が掲載されました。

同時に嬉しいニュース。5月23日(金)に第24巻が発売されるのですが、なんと今回は「CD付き限定版」も発売されるのだそうです。以前ウラディミル・アシュケナージさんのピアノでカイの1次予選の曲のCDがついたことがあったと聞いていますが、そのときはまだ私は『ピアノの森』の読者ではなかったので、買えませんでした。それで自分でCDを編集して、1次の曲を毎日聴いていた、そんな時期もありました。(笑)

今回のストーリーは、レフのエピソードの続きです。最後の演奏者が地元ポーランドの新星で、観衆にもまたポーランド人が半数を占める審査員たちの期待にも十分応える演奏だったのですが、レフは思いがけない行動に出ます。[以下ストーリーについて書きます(つまりネタバレです)のでまだ本誌をお読みでない方はご注意ください。]

レフに取って一番大事なことは、この演奏を聴かせたかった、いや、「すぐそばで自分の演奏を励ましてくれた」エミリアに<会う>ことだったのです。

指揮者と抱き合い、コンサートマスターと抱き合い、満場割れんばかりの拍手を送る観衆たちに一礼したあと、レフはハーモニーホールを抜け出してしまいます。カーテンコールに応えなかったのです。それどころかインタビューも。

レフはタクシーでエミリアの病院に向かいます。わずか13分で病院に着いたタクシーの運転手に自分の名を名乗り、「お金は病院に言ってくれ」というと、運転手はラジオで中継を聞いていて、「君の演奏に感動して泣いたんだ。料金はいらないよ」と言います。レフは、自分の演奏が人を喜ばせることが出来ることを自覚します。

レフは、エミリアが自分を「助けにきてくれた」ことに不安を感じていたのです。どんなに大変なときにも
現れなかったのに、なぜ今日。レフはエミリアの容態を確かめずにはいられなかったのです。

エミリアはレフに「語りかけ」ます。「勝手に殺さないでよ」と。エミリアは酸素吸入も必要なくなり、美しい寝顔を見せていました。

これで本当に、最後のコンテスタントの演奏が終わりました。まさに、レフの回のカーテンコールであるとともに、ファイナルの演奏のカーテンコールとしてもふさわしいものだったと思います。

ピアノの森が感動的なのは、音楽の描写、演奏の描写がすばらしいこと。これは本当に、なかなかそうは描けないことだと思いますが、また、ひとりひとりのピアニストたちの人生が描かれていることでもあります。そしてその人生の過程が、密接にピアノの演奏に結びついていること。人生は演奏であり、演奏は人生である。

そう書くとなんだか泥臭い感じがしてしまいますが、『ピアノの森』はそこに陥らずに、シャープに、時には冷徹に、時には暖かく、ピアニストひとりひとりの人生と運命とを音楽に乗せて描き出して行きます。

初めて読んだときから、またとんでもない感動が爆発してしまう場面にいくつも触れてきて、本当にこの作品は神がかったところがあるなあといつも思います。

読み終えると、感謝の気持ちでいっぱいになります。

次回の掲載は4月末頃だそうです。次回はいよいよ審査の内容でしょうか。楽しみに待ちたいと思います。