アンダーカレント アフタヌーンKCDX/講談社

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その(2)からの続きです。

狂言回しとして二人の男が現れる。半ば3枚目の、伝統的な役柄。ひょんなことから夫の探索を依頼された探偵は女に夫との関係を問い直させる。結末に関しては、このマンガはある意味ミステリーでもあり、展開の意外さがこの作品の求心力の一つでもあるので書くのは自重するけれども、実はラストの回はなくてもいいのではないかとさえ思う。本当はかなり明晰な筋立てなのだ。

私はそういう明晰な筋立てがあまり好きでないところもあるのだけど、これだけ鮮やかに構成された作品を読んでいると、むしろ私はそういう明晰さから逃げているところがあるんだなということも気づかされもする。そういう意味でも、いい作品は心に食い込んでくる。

探偵と、最初は喫茶店で、次にはカラオケ屋で、最後は遊園地で会う。遊園地の場面は『第三の男』を思い出させる。というかさすがにこれはそのオマージュだろう。カラオケ屋の場面は、私が見た中では『台風クラブ』の三浦友和を思い出させられた。彼もしぶとく生き残っている。蛇足だが。

怪しげな老人が現れ、男に女の過去を語り、とんちんかんな事を焚きつけ、二人の関係を近づけたり遠ざけたりしながら不在の少女の記憶が明らかになる。男は女に、不在の少女の面影を見ていた。女もまた心の奥底にある暗い部分でその少女の記憶を抱えて生きていることを男は知る。

物語は二つのさよならで終わる。一つのさよならは未来につながる感触を残し、一つのさよならは過去を振りきる感触を残す。「それもまた人生」老人の重いせりふで物語は終わる。

 アマゾンの作品紹介がいろいろなことを考えさせられる。「本当はすべて知っていた。心の底流(アンダーカレント)が導く結末を。」

 本当は、どうなって行くのか気づいていた。

 でも、今は。だから、今は。

 そう、それもまた、人生。