シガレットアンソロジー (ビッグガンガンコミックス)/スクウェア・エニックス
¥590
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スクエア・エニックスから発売の煙草をテーマにしたアンソロジー、『シガレット・アンソロジー』を読みました!


このアンソロジーは、煙草という小道具の持つ魅力と役割を伝えたい、という趣旨で、「そこに煙草のある風景」を描く、というものだそうです。イラストレーションが6本、漫画が5話あります。表紙は大暮維人(Oh!Great)さん、イラストが清水栄一×下口智裕さん、村田蓮爾さん、大高忍さん、なまにくATKさん、清原紘さん、大暮維人さん。マンガがすぎむらしんいちさん、大暮維人さん、ふみふみこさん、感傷ベクトルさん、きらたかしさん、というメンバーです。


私が知っていたのはこの本を買うきっかけになったふみふみこさんとすぎむらしんいちさん、それになまにくATKさんの3人だけなのですが、知らなかった方を知るきっかけになりました。


イラストでは村田蓮爾さんのスーパーカブを修理するおじさんと直してもらっているおにいさんがたばこを吸っているイラストがいいなと思いました。


まんがの方では、まずすぎむらしんいちさん。以前『モーニング』で『ディアスポリス 異邦警察』を連載しているのを読んだことがあります。今回の作品は「Easy way to stop smoking」どこの国かわからない無国籍な男たちの狙撃をめぐるバトル。おっさんたちが妙に煙草を吸うことにこだわるのが可笑しいのですが、たぶんこれは喫煙者なら「わかる!」という話なんだろうと思います。私はもうだいぶ前にやめたのでよくわかりませんが。(笑)


大暮維人さんの「Time Machine Record」、これはジャニス・ジョプリンのTrust Meという曲が針飛びして延々と同じフレーズが繰り返す中、娼婦を呼んだ女が昔の男を思い出す、という話、と言えばいいでしょうか。背徳的ですがかっこいい。確かにジャニスにもそういうシチュエーションにも、煙草は似合います。


ふみふみこさん「金色の雨 星の煙」は先日こちら に感想を書きました。


感傷ベクトルさんの「ワンルームシックノーパンツ」は、「ロックな生き方」をするはた迷惑な女・ミカをめぐる3編。バンドメンバーと共同生活しているのにバンド資金を使い込んで追い出され、転がり込んだ売れない小説家志望の男の厄介になり、雪が降った日には人がつくった雪だるまを破壊してケンカになる。でも去り際に、新しい雪だるまに煙草を加えさせて還るのがなんだか気が利いていました。確かにロックには煙草が欠かせませんね。


ラストのきらたかし「キューポラのハルちゃん」はぐっと変わって、ミニバイクでお弁当をあちこちに届ける少女の話。下敷きにしているのは吉永小百合主演の『キューポラのある街』だそうです。この時代、大人の男たちは、みな誰ということなく煙草を吸っているのが普通でしたね。ハルちゃんもミニバイクで転んで故障して、それを直してもらっているときに整備工がたばこを吸ってるのを見て、お父さんのことを思い出す、という話でした。この話は無言劇で、セリフはありません。それが映画のようなレトロな味わいをうまく出しているように思いました。