聲の形(3) (少年マガジンコミックス)/講談社

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3巻では、硝子と親しくしたためにいじめられそうになり、不登校になった小学校のときの友達の佐原に、硝子が会いたいと言っていることから、将也は佐原の消息を探し始めます。小学校のときのクラスメイトの川井がたまたま同じクラスにいたことから、佐原の学校がわかり、将也は佐原に会いに行きます。

それをきっかけに佐原と硝子の友情が復活し、将也はよかったと思います。しかし硝子に「将也が会いたい人はいないの?」と聞かれて将也は答えられません。その人たちはみんな、自分の忌まわしい過去につながって行く人たちだからです。将也はいかに自分が自分の過去を無視して生きていたかということに気がつかざるを得ません。

そんなところに現れたのが植野直花でした。直花は小学校時代に将也が一番口をきいた女子だったのですが、硝子が転校してきたことをきっかけに疎遠になって行ったのでした。しかし実は、直花はずっと将也のことが好きだったと言うことが判明します。(将也はそれを知りません)

直花は小学校のときの不良っぽい口のきき方のまま、ヤンキー系の路線で成長していました。直花は硝子が現れたことで将也と疎遠になったと思っていて、硝子のことを激しく嫌っているのです。しかし直花の方は将也と再会し、また将也が硝子と親しくしていることを知って、激しく自分の気持ちをかき立てられ、将也につきまとうようになってしまいます。

将也は直花と話しているうち、硝子との関係を「友達ごっこだ」と指摘されて、激しく動揺します。そんな直花に将也は「嫌いだ」と言うのですが、直花が「ハゲ」と言うとむかっとした将也が「ブス」と言い返し、そんな会話の中に直花は昔に戻ったような嬉しさを感じるのでした。

しかし、一生懸命硝子の過去を取り戻そうとしてくれる将也のことを、硝子も好きになります。いや、小学校のときから本当はそうだったのかもしれないのですが、その辺りはまだわかりません。

硝子の内面は、今まであまり書かれて来なかったのです。しかしここで、硝子が将也をどう思っているのかが明らかになりました。

硝子は思い切って、将也に自分の声で自分の思いを伝えようとします。しかし、そんなこと思ってもみない将也は、「ちゅき」という言葉が「月」なのだと勘違いをしてしまいます。そして自分の言葉が理解されなかった恥ずかしさに、硝子は将也のもとから走り去ってしまうのでした。

ストーリーを真摯に追いかけるだけで、覆い被さってくる罪意識に必死で抵抗して前に向こうしている将也の気持ちがほんとうによく伝わってきますし、またそんな将也を好きな直花と硝子の気持ちも、将也には理解する余裕がゼロであることもよくわかります。

しかしそのことが、きっと彼らの関係を暗転させて行くだろうことは、まざまざと感じられるわけで、その苦しさを今から感じてしまいます。

この話は本当に、単に楽しみだとは言えない、でも読まずにはいられない、そしていつ読んでも自分に突き刺さる話しだなといつも思うのでした。