進撃の巨人 9 [初回特典:特典DISC「進撃の巨人」Reading&Live Event「A.../ポニーキャニオン

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アニメ『進撃の巨人』BD9巻は、このアニメ作品の大団円にふさわしい仕上がりになっていました。

8巻までは、BDがAmazonから届くと一気にその日のうちにすべてを見ていたのですが、今回は体力的・時間的な余裕がなくて少しずつ区切って観ています。小冊子も充実しているのですが、それも少しずつという感じです。

昨夜は本編の24話と25話を観ました。このあたり、原作では特にここで区切り、と言う感じが弱い部分なので、それを「アニメのクライマックスにする」ためにいろいろなトライがなされているなと思いました。

ただ、その分原作のテイストが変わってしまってはいるわけで、そこをどう受け止めるかは人それぞれだろうなあとは思いましたが。

大きな改変は、24話の途中、女型の巨人がアニだと言うことがわかり、それが引っかかって巨人化できないエレンが、ミカサとアルミンに「どうしてお前らは戦えるんだよ!」と叫び、「仕方ないじゃない。世界は残酷なんだから」とミカサが答えた後の展開です。

原作ではそれではっとしたエレンが「だよな」とつぶやいて手のひらの付け根をかじり取り、巨人化して女型と戦うわけですが、アニメではその瞬間に女型に地下通路を踏み抜かれ、エレンは瓦礫に埋もれて重傷を負ってしまいます。

そしてそのあとは女型と調査兵団の戦闘場面になります。このあたりは立体機動のアクションが、今までとはまた違う描き方で描写されていて、アクロバット的なのはいいけれども「これをするためにこれをやる」という原作の場面にあふれている意志感のようなものがもう一つ足りないなと感じられました。

エレンが瓦礫の中で、ジャンやアルミンに叱咤され、今までの巨人に酷い目に遭わされてきた過去を回想し、己を奮い立たせて巨人化するという展開は、まあそこまで言うのは酷かもしれませんが、ちょっと直線的すぎる感じはしました。

しかしエレンが巨人化して女型に向かって走って行くところ、エレンを描写せずに窓ガラスが割れる描写をしたり、一瞬の和みの猫を映したりするモンタージュ技法は映画みたいでいいなあと思いました。

25話に入り、エレンと女型の戦いの中でストヘス区が大被害を受けるところは原作にはなく、これはかなり思い切った描写だと思いました。22話で壁外調査からの帰還の過程で死体を遺棄して巨人の追撃を逃れる場面と同様、これはある意味アニメを作っている方々の独自の意志のようなものが反映されたものだと思います。あちこちで火の手が上がり、壁教の人たちが踏み潰され、血まみれの幼女が町を彷徨う。戦いというのはこういうものだ、というベトナムや第二次世界大戦を描いた映画に近いものを感じました。

ただ、原作では女型がエレンを放棄して壁をよじ登って逃げようとする理由がよくわからなかったのですが、エレンが狂気のような暴れかたをはじめてそれに恐れをなした女型が壁を登って逃げようとすると言うのは、わかりやすくなったように思いました。

ただ、エレンが暴走して女型の中身のアニを食べてしまいそうになる、というのはわからないではないのですけれども、人類生存のためには人間性をも捨てる、のその捨て方ってこういうことなのかな、とちょっと疑問を覚えた部分もありました。

壁外調査でリヴァイが負傷し、このこの防戦の中で一度はミカサも倒れるのですが、壁をよじ登って逃げようとした女型を自分の力で立体機動してアニの指を切り落とし、「アニ、落ちて」という展開は、なぜ急にミカサが動けるようになったのかわからなかったし、原作ではエレンの力を借りてものすごく高い位置まで女型が上ったあとで落っことすという形になる盛り上がりが、ちょっと欠けたかなという気はしました。リヴァイが急に復活してエレンを巨人の中から抉り出して止める、という展開も「動けたの?!」という感じがありましたし。

まあこの辺の違和感のようなものは、苦情というよりは、原作のよさを生かしながら、その要素を使いながらここまでの場面でまとめる、と言う離れ業をしたために起こってきた齟齬のようなもので、そういう無理なことをしながらもこれだけのクオリティの作品に仕上げたアニメスタッフたちの偉業を讃えるべきだと思います。

アニメ第1話で鳥が飛んで行く場面から始まったのが、25話の最後でジャンとアルミンが眺めるストヘス区の壁の向こうに日が沈む場面にも同じ鳥が飛んで行ったのはすごく印象的だったし、2話で子供の頃のエレンが無理矢理ミカサにパンを食べさせられる場面が、巨人化の後遺症から立ち直りつつあるエレンがミカサに「食べて」と言われてむしゃむしゃとパンを食べスープをすする場面につながり、諫山先生のフード理論ではないけれども、これからも戦って行くんだという決意が現れていてよかったです。

小冊子も一通り読みましたが、全25話それぞれに対する荒木監督のコメントには、「こんな風に考えてこの回は作っていたのか」というところが結構あって、読んでいるうちにまたBDを見直したくなってきました。

そんなこんなでいろいろ描きましたが、全体には本当に満足感一杯のBDマラソンになりました!