テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)/エンターブレイン

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映画化もされ、大ヒットした『テルマエ・ロマエ』ですが、私は2010年、まだあまりブームの火がついていない頃に読んでいました。とにかく和みたいものが読みたい、と思っていたのですが、和むというか、盛り上がってしまいました。(笑)

この作品は、最初から最後まで実直に風呂の話ばかりで、ここまでよく書けるなと感心しました。主人公の浴場技師ルシウスがまたやたらと実直で、話の運びも絵柄も実直そのものでまたそこが可笑しいのでしょう。

私のわかる範囲では考証もしっかりしていますし、時代が五賢帝の一人ハドリアヌス帝の末期(つまりローマ帝国の全盛時代です)というのもなかなかいい感じです。

最初から長期連載にするつもりはなかったのだろうと思いますが、ハドリアヌス帝とその後継者が出てくるあたりで長期化にも対応できる時代的なスパンも用意が整っていますし、作戦的に描いてらっしゃるんだなあと思いました。

ローマあるいは古典古代の時代もの、というのは塩野七生の『ローマ人の物語』でだいぶ一般の人々にも浸透した感があります。マンガでも岩明均の『ヘウレーカ』などすでにいくつか作品が出ていますが、こういうローマと日本の「お風呂の比較文化」的なことをやるマンガというのはまったく斬新だなあと思います。

ローマの方の時間にはちゃんと時間軸があるのですが「平たい顔族」(言うまでもありませんが、現代日本)の世界の方では全然脈絡なく、とにかく風呂関係のところにルシウスが現れるので、どれだけ入浴文化のバリエーションが描けるのかお手並み拝見、という感じでした。

ところがどっこいなかなかネタが尽きません。作者の風呂に賭ける情熱も相当なものではないかと言う感想を持ちました。