クレープを二度食えば(リュウコミックス)/徳間書店

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とり・みきさんの『クレープを二度食えば』を読みました!

進研ゼミの中三チャレンジに92年に初出、という作品です。

この作品はタイムマシンもので、過去にさかのぼることによって因果律がパラドックスをおこしてしまう(例えば過去に戻って自分を殺したらどうなるかというようなパラドックス)という設定を扱っています。そういうSFは、1980年代にはずいぶんあったなあということを思い出しました。

でも、この作品にそ描かれている青春の永遠性というようなものには、素直に感動させられました。

「おたくにはいいおたくと悪いおたくがいるんだぜ」というようなセリフとか、今だとどう受け取られるかよくわからないなあと思うせりふもあるのですが、90年代初頭という微妙な時期の微妙な雰囲気のようなものがよく出ているし、1984年からやって来た少女の懐かしさのようなものもとてもよかったです。1992年は、まだボディコンワンレンが滅んでなかった時代だったのですね。

『クレープを二度食えば』には重要なアイテムとしてフリッパーズ・ギターの曲が出て来ます。私はこのバンドの名前自体を知らず、Wikipedia先生におたずねして漸く小沢健二さんがやっていた渋谷系の元祖みたいなバンドだということを知りました。ここで扱われている「Dolophine Song」という曲をYouTubeで聞いてみて、やはりこれは自分のよく知らない世界だなと思いました。私はこのあたりの曲を聞かなかったために90年代以降の音楽シーンがわからなくなったんだなと思ったのですが、その後いろいろ聞いてみて、『恋とマシンガン』などはヘビーローテーションする曲になりました。

とり・みきさんというマンガ家のことを最初に知ったのは、80年代の後半だったと思うのですがはっきりは思い出せません。誰かが「面白い」と言っていたのを聞いて『吉田さん危機一髪』を買って読んでみたのですが、当時の自分にはややハイブロウだったなあと思います。テンポというか間合いが詰まっていて速すぎるのですね。唐沢なをきさんなどと笑いの質が似ているし、今ではこういうのもありだなと思うのですが、当時はよくわからなくて、その後も特に傾倒することはなかったのです。

ですから、こんなリリカルな作品を描いているというのは意外でした。『新世紀エヴァンゲリオン』が出る間には割と一般的だった青春グラフィティ、というような気がしました。今ではこういうものは描きにくい世の中なんだろうなという気がしますが、こういうものを面白いと思う人は必ずいるはずだと思います。

この本は再々発売ということですが、きっかけになったのは『涼宮ハルヒの憂鬱』で「長門さん」がセレクトした百冊の中に入っていたことなのだそうです。その本を読んでハルヒファンが検索して、要望が高まったことによって発売が決まったということだととりさんがあとがきに書いていました。そういうこともあるんですね。

私はこういうのは作品は好きだなあと思います。1992年に読んでいたら、そう思ったかどうかは分からないなあとは思いますが、今この作品を読むと、やはりいいなあとしか思えないなあと思います。