ギャングース(3) (モーニングKC)/講談社

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肥谷圭介『ギャングース』3巻と、「モーニング」13号掲載の45話を読みました。

『ギャングース』は、まともな親に育てられなかった子どもたちが少年院で出会い、路上やネットカフェでの生活を続けながら、オレオレ詐欺や麻薬密売集団からその売り上げを窃盗したり強奪したりしながら「自分と同じ不幸な生い立ちの子どもたちをなくす」ことを夢見て戦い続ける、という話です。

このストーリーの中に出てくる反社会集団はノンフィクションライターの鈴木大介さんの取材に負っているのですが、ものすごく緻密にリアルにそのやり口や考え方が書かれていて、ある意味凄く面白いです。3巻では相手がチャイニーズマフィア、本物の広域指定暴力団、凶悪な半グレ(暴走族あがり)集団というように相手の規模がでかくなって行って、行われていることも私などには想像がつかないことが多いのですが、異常なプラス思考の「キモデブ」の主人公カズキが、彼らをおもしろがらせ、楽しませながら結局目標を達成して行く、そのストーリーが読んでいて泣けてくるときがあるのです。

凄い殺伐とした世界の中に、どうしようもなくキモい主人公が、まるでファンタジーのように活躍して行く有様は、読んでいて凄いなあと思います。これは『進撃の巨人』もそうですけど、やはり「確信の深さ」というものが「主人公の資質」何だなあと改めて思わされます。

45話では半グレ集団の詐欺組織に潜入することに成功したカズキが、詐欺集団のプレイヤーを養成するための自己啓発セミナーみたいな合宿でメソッドを受けている場面が描写されています。

一人の「50の失敗」の原因を徹底的に追及し批判し、自分がどんなクズだったかということを徹底的に認めさせたあと、「これまでがクソなのとこれからがクソなのは全く違う。この経験はあなたの財産だ。すべての結果は自分の責任だと思い、そのときやるべきことを即実行する。そうすればあんたは必ず成功する。あんたは今日から変わったんだ。これから鰯田さんの人生を激変させるマジックをかける。」と言って追い込んだあと優しい言葉をかけ、全員を起立させ、「鰯田さんはやれる!」と大声でみなに声をかけさせ、本人に「俺はやれる!」と叫ばせる。そして人生観を激変させる、というメソッドです。

なるほど、よくわからない会社でこういうことが行われていることは聴いたことがありますが、こういうアメリカ流のやり方が日本の詐欺組織でも行われているというのは初めて知りました。

つまり、何をいいたいかと言うと、彼ら(=犯罪集団、詐欺集団)のやっていることはハンパではなく、おそらくはかなりの効果を上げると分かっていることを冷徹に実行しているのです。

逆に言えば、そういう集団による詐欺にかけられるということは、こういう集団に属する個人を相手にしているということを知っておかなければならない、ということなのです。路上で職業軍人とケンカをするようなもので、危険きわまりないということです。

こういうところは、本当にこのマンガは考えさせられるのですが、ある意味人が生きているというのはこういうことだなあとも思います。

決して誰もが面白いマンガではありませんが、人生を自分の力で切り開いて行きたいと思うタイプの人にとっては、面白いのではないかと思います!