地上の記憶 (アクションコミックス)/双葉社
¥1,260
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去年の1月のことです。ネットで見て何となく買った『白山宣之遺作集 地上の記憶』が、読むきっかけもないまま部屋においてありました。


ある日、何となくこの本が読めと言っている感じがして(オカルトみたいですが・笑)読んでみたら、激しく感動しました。


これは寡作だった作家の短編をいくつか集めたもので、どの作品もすごく良かったです。この作者のことは知らないと思っていたのですが、じつは「大力伝」という作品は『コミック斬』という雑誌で読んだことがありました。江戸時代、怪力の女性が一途に主君に仕える話です。そしてついには、主君の方が怪力の女性を思い出して、一生を過ごすのです。


他のものは読んだことがありませんでしたが、特に「ちひろ」と「Tropico」がよかったです。「ちひろ」の中で、「暁闇」という言葉が出て来るのですが、それは暁の前の一番深い闇を指しています。「夜明け前が一番暗いんだよ」というセリフが、私がその時考えていた、何か闇の中でただじっと気配を待っているような感じに、すごく近くて、まるでこの言葉を読ませるために何かがこの本に導いたのではないかと思えたほどだったのです。(すみません、オカルトっぽくて)


「Tropico」は間抜けな二人組が船を取られ、マフィアの抗争に巻き込まれて、無人島でうろうろしていたら、残留日本兵がいて、彼の複葉機でその島を脱出したというような話でした。私はこういう話が実はけっこう好きなので、なんだかよかったです。


白山さんという作家さんは存命中はほとんど認識していなかったのですが、マンガとしてとても好きだなあと思いました。


また、死んでもこういう作品をあとに残して、残された人に感動を与えることが出来る、マンガという仕事はやはり素敵な仕事だなあと思ったのです。