海月姫(13) (講談社コミックスキス)/講談社

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去年の12月になりますが、東村アキコ『海月姫』13巻が出ました。


『海月姫』という作品は、女おたくの園である「天水館」に暮らす倉下月海(クラゲおたく)が、たまたま出会った鯉渕蔵之介(国会議員の息子で女装男子)とひょんなことから関わり合うことになり、蔵之介のメイクと衣装の魔術で美人になったり、そのお兄さんの国会議員秘書(30歳童貞)と結婚の約束をしたり、そのクラゲ愛を発揮して衣装デザインの才能を突如開花させ衣装でファッションショーを開いたら思わぬ反響を読んだり…というストーリーです。


この巻では、そのデザイナーの才能を評価したシンガポールの実業家=アジアのアパレルの雄が、売られることが決まっていた天水館を買っておたくの園を守る引き換えに、月海が彼のもとに連れて行かれることになってしまいます。そして高級ホテルに押し込められてデザイナーの基礎を叩き込まれて…って展開はなんていうかまさに東村アキコさんならでは。まさに現代の『マイフェアレディ』な展開です。こういう展開は取材費も膨大にかかりそうですが、元来そういうことがすごく好きそうな東村さんならどんどんやっちゃいそうだな、と思います。(笑)


もともとおたくで衣装には縁がないと思い込んでいた月海が、初めて洋服とは何か、ファッションとは何かと考え始める展開がすごくいいと思いました。


鯉渕兄弟の空回りっぷりはこの巻でも相変わらずいいのですが、蔵之介が酔っぱらって「行くな月海 どこにも行くな」と、真情を吐露してしまうところなんかは180度ひねって少女マンガの王道だな、とわくわくしました!こういうふうにぱしっぱしっと要所要所を決めて来る感じを読んでいると、やはり東村アキコさんの作品は面白いな、と思います。


ちなみに東村さんは再婚したそうです。巻末のおまけマンガにそのことが報告されているのですが、ファッションデザイナーの夫が実は凄いアニメおたくで、声優さんへの尋常でないリスペクトぶりが描かれていて可笑しかったです。


なんていうかやはり、この人は読んでいて楽しくなるマンガを書くなあと思います。モーニング連載だった『ひまわりっ』の末期や『主に泣いています』、現在連載中の『メロポンだし!』などはちょっと飛び過ぎというか悪ノリのし過ぎ感があって、私にはついていけない感じがする時があるのですが、丁寧に「女の子の憧れ」を描いたこの『海月姫』は、すごく好きです。