中国の大気汚染の元凶は石炭
先月=4月の記事より・・・
<メモ>
中国の大気汚染は止まらない…PM2.5の元凶は?
編集委員 後藤康浩
2013/4/21 7:00 日経:より一部、抜粋+編集
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※省略
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■北京五輪後に悪化した大気汚染
北京市は2008年のオリンピックに向けて、市内にある製鉄所など環境負荷の高い工場を市外に移転させ、排ガス規制に合致しない車を次々、取り締まって廃車にさせた。一時は北京の空気は昔よりよくなったと感じたものだ。ところが、オリンピックが終わった後、汚染は再び悪化、以前よりもっとひどくなった。
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理由はいくつかある。
第一は、自動車の増加だ。
02年に325万台だった中国の自動車販売台数は12年には1930万台に達した。10年で6倍もの増加だ。08年のオリンピック開催以降の伸びが際だっており、3年で2倍になった。自動車の排ガスは今回、日本でも不安の種になっている微小粒子状物質「PM2.5」の原因のひとつだ。
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だが、今回、私たちが着目したのは石炭だ。
中国は世界の半分の石炭を消費する石炭大国で、まもなく年間消費量は40億トンに達するといわれる。人口が世界の20%弱の中国が、世界の50%もの石炭を使うのは明らかに異常だが、理由はある。
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■石炭依存の経済構造
石油、天然ガスは国産で賄いきれず、輸入依存度が高まっているため、できるだけ国産燃料で値段も安い石炭を使いたいからだ。石炭は火力発電の燃料や製鉄所の高炉などで使うコークスの原料になる。さらに内陸では工場や住宅の燃料としても使われる。
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石炭を燃やすと二酸化炭素に加え、硫黄酸化物、窒素酸化物など様々な汚染物質が排出され、煤塵も大量に出る。日本の石炭火力発電所はそうした汚染物質をほぼすべて除去したクリーンな排気しか出さないが、中国の石炭火力は汚染物質を大量に出している。
脱硫装置は90%以上の石炭火力に装備済みで、集塵機もかなり装備されるようになってきているが、故障で使わなくなったり、運転にコストがかかると止めてしまうケースが多い。
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中国内陸では「環境設備は検査の時だけ動かすもの」という経営者も少なくない。石炭は生産や輸送でも環境負荷が高い。鉄道貨物の輸送能力が限界にきている中国では、石炭をトラックで長距離輸送しており、トラックのディーセルエンジンがはき出す排気ガスもPM2.5の大きな要因とされる
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こうした石炭依存の経済構造を変えない限り、
中国の大気汚染は改善が難しい。だが、石炭から天然ガスや風力など再生可能エネルギーに転換するには莫大なコストがかかり、また、伸び続ける電力需要に追いつくのも困難だ。
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中国は原子力発電に期待をかけ、
現在も30基近い建設を進めているが、それも需要増に追いつくには力不足。究極的には経済成長をスローダウンし、環境対応に政府予算をもっと支出するしかないが、中国の指導部にはそうした選択肢はない。
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■成長鈍化許されず
成長鈍化は中国の体制問題につながってくるからだ。中国共産党の一党支配体制を支えてきた論理は「成長がすべてを解決する」。国民を豊かにすれば、国民は現体制を支持し、様々な社会問題も先鋭化しないという考えだ。だが、その論理も国民の健康問題につながる汚染の深刻化の前に見直しを迫られている。国民はより豊かになる以上に、健康で文化的な生活を求める段階に入ってきているからだ。
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中国の指導層が国民の大多数が求めるものに耳を傾けるようにならなければ、中国の大気汚染は改善に向かわないのではないか。そう感じざるを得ない。