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今日も三者面談の通訳に行ってきたけど、この時の反抗期真っ只中の生徒とは真逆の、爽やかな生徒さんだった。
①先生
②ろうパパ
③高校2年生の男の子
この三者の懇談だった。
男の子はニコニコしていて、感じの良い生徒さん。担任の先生と元気に話している。
通訳しながら思った。
あれ・・・この子、手話できないんか?先生とずっと、普通に喋っているけど・・・
「本日の面談について、学校側からお伝えすることは以上ですが、お父さんから何かありますか」
先生はご存じかどうか知りませんが、私はシングルファーザーです。
「はい。息子さんから聞いています」
できる限り、温かいご飯を作って食べさせてやりたいのですが、残業で遅くなると、夕食を作ってやれない。息子には申し訳ないと思っています。
「たまに食事を作るぐらい、大丈夫だよな?」
(息子さん、にっこり笑って頷いている。いい子だな。そうか。シングルファーザーか。俺もそうだったけど、ちゃんとやれなかった。あんた、偉いよ)
こみ上げてくるモノを押さえ込んで、ポーカーフェイスで通訳を終えた。
ろうパパと息子さんと一緒に三人で教室を出た。
ろうパパが「通訳ありがとうございました」と丁重な手話でお礼を・・・その直後、息子さんが爽やかに、
「ありがとうございました!」
と頭を下げた。自分の経験から、手話通訳者に対しては無関心な感じのコーダが多いが、この子は、きちんと挨拶ができる。偉いなあ。
そして・・・・
親子は流暢な手話で明るく会話しながら去っていった。
そうか。
懇談中は手話通訳者に任せてくれていたんだな。彼は高校2年生だが、自分が進みたい進路も明確に決めていた。
「先生になりたい」
きっと素晴らしい先生になるだろう。
そして、今日みたいな三者懇談にろう者の親が来ても、手話通訳者なんか必要ない。
いや、彼のことだ。懇談中は手話を使わず、手話通訳者に任せるかもしれない。
いつか、教師になった彼と再会する。何故か、そう確信した。その日が楽しみだ。