精神的にタフでなければ、手話通訳者として永く活動を続けることはできない。
繊細な人には難しい仕事。
去っていった人を、たくさん知っている。
人に見られてナンボの世界。
多くの視線にさらされる。
突き刺さってくる視線。
地元のろうあ協会が頑張って、地方にはなかなか来てくれないような有名人講師を呼んだ。
当然、手話通訳つき。多くの人が集まった。
通訳者がよく見える場所をいち早く独占したグループ。
聴覚障害者ではない。手話を勉強している人たちだ。
始まった。
あのグループがいるあたり、なにやら、いやな雰囲気。
「今の表現、間違ってるよね」
「手話が遅れてる。要約筆記がなかったら、話の内容、伝わらないよね」
あいつら・・・
連中のひそひそ話は、間違いなく、通訳者に伝わっている。
終了後、通訳に立っていたAさんが気になって、声をかけにいった。
Aさん、すっかり憔悴している。
「自信なくしちゃった・・・」
ああいう無神経な連中は、いつの時代もいる。