【産経】2012.7.30 03:08 [外信コラム]
上海余話 北の美女、背後の闇 河崎真澄

金正恩夫人、李雪主(リ・ソルジュ 23歳 2009年結婚)を見て、上海市内に何カ所かある北朝鮮系の焼き肉店に行くことを思い立った。

 客の注文を取り、料理を運んでテーブルで肉を焼き、お酒も注ぎ、その合間には舞台に立って歌や踊りを披露する“スーパーウエートレス”たちは、いずれも北朝鮮から派遣された美女ぞろい。“ファーストレディー”には申し訳ないが印象が重なったからだ。

 中国語を話すウエートレスに話を聞くと、いずれも選ばれて子供の頃から歌や踊りを教えられ、ある日突然、中国で働くよう言われたという。だが彼女を後ろから見ていた目つきの鋭い男をみてハッとした。2年前の9月6日、上海万博の「北朝鮮ナショナルデー」で歌や踊りを披露したチマ・チョゴリ姿の女性たちを、胸に金日成バッジを着け同じ目つきで見ていたその男だったからだ。

 友人によると、彼女らの月収は約3千元(約3万7千円)だが、3分の2は国家に納めねばならない。恋愛はもちろん、電話の使用すら厳禁。男の任務が逃亡防止も含め、彼女らの監視にあることは明白だった。

 そんな彼女らも幸運なら今ごろ「夫人」になっていたかもしれない。鋭い視線を背に感じながらも、笑顔で肉を焼き続ける姿が痛ましかった。



韓国国家情報院の調べ

李雪主(リ・ソルジュ)

1989年生まれ 23歳 平民出身
金星第2中学校(平壌)を卒業
中国で声楽を専攻
銀河水管弦楽団で歌手

2005年9月 当時16歳 仁川 アジア陸上選手権に北朝鮮の応援団として参加

2009年 結婚(20歳)

2012年7月 3歳の子どもありの報道も