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⛩ほぼ神社日記⛩

日本全国の社寺、名勝を訪ね回ります。

【寒九の水――「水にあらず薬なり」】
(参詣日:2018年1月22日・奈良県吉野郡下市町)

「寒九(かんく)」という冬の季語をご存じでしょうか。
私は寡聞にして知らず、今回の訪問で初めて聞き及びました。

毎年の寒の入りから9日目にあたる日を指す言葉だそうです。
奈良県吉野の奥地にある丹生川上神社(にうかわかみじんじゃ)へ、

この寒九の日に汲んだお水を取りに行きました。

1年で最も寒い『寒(かん)』は、24節季の「小寒」の日から「節分」の日までを指します。
日本酒や味噌、醤油造りの最盛期が、この寒の時期であることはつとに知られるところです。
「寒造りの酒」「寒造り味噌」などの名で、古くから格別の味の深みや香りを表現してきました。
寒の期中に汲んだ水が柔らかで長持ちし、お酒や味噌の出来を格別なものにするのです。
この時期の寒さと乾燥は雑菌の繁殖を抑え、水を腐敗から守ってくれるのですね。

名水をもたらす寒の期中でも、最も重宝される日が「寒九」です。
――『寒九の水は水にあらず薬なり』――
寒の入りから9日目に採水する水は、1年でいちばん澄んだ水と伝わります。
2018年の寒の入りは1月5日で、節分の2月3日までが寒の期間。
寒九とはすなわち1月5日から数えて9日目、1月14日を指しています。

名水で知られる同社で、この寒九の日に採水した「寒九の水」を譲っていただきました。
330mlボトルで500円。
「腐らず」「よどんで濁らず」いつも澄んだ心を保っていられる2018年になるよう、と願をかけました。

 

たまたまですが、同社を訪問した2018年1月22日は激しい雪でした。ご覧の通り。
正午ごろの参拝中に本降りとなり、吉野地方は同日午後にはあっという間に銀世界となりました。
そう、東京都心で23cmと4年ぶりの積雪を記録し、大雪警報も出たというあの日です。
偶然とはいえ、寒のお水採りには相応しい日に参詣したものです。

 

 

【丹生川上神社 下社 由来】

「にうかわかみじんじゃ」 と読みます。
御祭神は闇龗神(くらおかみのかみ)。 日本を代表する水の神様です。
古事記に登場する日本創成神の二柱・イザナギとイザナミ夫婦の御子神とされます。
社の創建は天武天皇治下の676年。
延喜式の名神大社二十二社の一社であり、非常に格式の高い神社です。
日本最古の水の神として、古代から水(=雨)をまつり、
祈雨・止雨を司る社として朝廷の崇敬を受けてきた、とされます。
朝廷は祈雨には黒馬を、止雨には白馬を同社に献じ記録によれば96度にわたり雨乞い、雨止めの奉幣祈願がなされた、とされます。


 

【絵馬発祥の地】
訪れて知ったことですが、同社境内の看板に「絵馬発祥の神社」とうたわれています。その由来について知りえたところを記します。

同社には現在も「白馬」「黒馬」の2頭の神馬が境内に実在します(訪問日は雪のため厩舎に入っていました)。
先に触れた通り、古来、朝廷は同社での祈雨止雨祈願にそれぞれ、白馬、黒馬を都度献上してきたという歴史があります。
白色は晴天を、黒色は雨雲を連想することから、祈願内容に応じ、神様の乗り物たる神馬を奉じてきた、とされています。
祈願には国家祭祀である名神祭がとり行われ、その開催のたびに生身の馬が奉納されてきました。

ただし、祈願のたびに生きた馬を献納するのは経済的にも大変ですから、
馬を奉じられない場合は次第に木や紙、土でかたどった馬の像で代用するようになり、
奈良時代ごろからは板に描いた馬の絵が登場したようです。現在の絵馬の形式ですね。

私も白馬の絵馬を1枚購入して持ち帰り、部屋に飾ってあります。

今日ではほとんどどの神社でも見られる絵馬ですが、図らずもその起源をたどることができた旅でもありました。

 

日本最古の水の神をまつる名神大社にして、絵馬発祥の地。

生まれて初めて訪れた吉野の歴史の奥深さを感じる、とても印象深い参詣となりました。

 

(第1回 了)