恋愛小説を君へ ~運命の絆を求めて~


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お知らせ




皆さん、こんにちは。

いつもご愛読やペタをありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ



ご存知の方もいらっしゃると思いますが、僕は今イギリスの大学に留学中です。

こちらは9月が新学期で、現在は学年末の時期です。

こちらの大学は通常3年制で、その後大学院が1年(学部によっては2年もありますが)となっています。


当初は大学だけで帰国する予定でしたが、日本では通常大学院が2年制であることを考え、このままこちらの大学院に進むことにしました。


イギリスの大学院は大学の成績で入学を判断されますが、それは1年次から入学していた場合で、僕のように留学で途中編入という形式の場合は、英語力も含め、判定テストを受けなければなりません。


そのテストが6月にあります。

今は、そのテストの受験準備というところでしょうか。


それで、そのテストが終わるまでの間、アメブロにはあまり来れなくなると思います。

次の小説も書き始めたいと思っていたところだったのですが、更新が遅れそうなので、判定テストが落ち着くまで延期することにしました。

楽しみにしていただいていた方には申し訳ありませんが、大学院に入学が決まったらまた書こうと思っていますので、その時はまたご愛読のほどよろしくお願いします。


また、ペタにつきましてもお返しに行けないと思いますので、暫く閉鎖させていただきます。

いつもペタをいただいておきながら、勝手を申しましてすみませんが、どうかご理解ください。




それでは、暫くの間さよならですが、また落ち着いたら戻ってきますので、その時はよろしくお願いします。

尚、過去の小説は閲覧自由ですので、まだお読みになっていない方は、よろしかったら読んでみてください。




それでは、次にお会いできる日までお元気で・・・・


Kouki






紺碧の絆-あとがき


紺碧の絆
 

   「運命の糸」エディの場合




【あとがき】


 「運命の糸」3部作の最終部である『紺碧の絆』を書き終え、今、ホッとしています。
 今回は各話の内容が長く、回数にすると短いのですが、総体的な量自体は前2作と変わらないボリュームでした。
 そのため、1話を書き上げる時間も前作より必要になり、日々格闘の連続でした。
 話の内容も、“家族愛”や“絆”といったものだったので、表現的にも苦労したところが多々ありました。
 何せ、僕はまだ子供どころか、結婚もしていないので・・(;^_^A アセアセ


 そんな中、今回も最後までご愛読いただいた皆様には、本当に感謝しています。
 読んで頂いた方に、“家族とは” “愛とは” “親子の絆とは”・・・といったこの作品のテーマについて、少しでも考える切っ掛けになっていればとても嬉しいです。



 「運命の糸」は男側からの1人称小説文、「幸せの欠片」は女側からの1人称小説文、そしてこの「紺碧の絆」は、初めて3人称小説文で書き上げました。
 3部作となっていますが、それぞれの文章の書き方の違いも楽しんで頂けたでしょうか?
 もし、お気づきでなかった読者の方がいらっしゃいましたら、また暇な折にでも、その辺りに注意して読み返して頂けたら幸いです。




 次の小説まで、少しお休みいたします。
 でも、また書きたくてウズウズしだしたら、すぐに書き始めるかも知れません。((´∀`*))ヶラヶラ

 また書き出したらお知らせいたしますので、そのときもどうぞよろしくお願いいたします。




 それでは、次にお会いできる日まで・・・




Kouki








紺碧の絆-25 最終回


第二章


(10)


 子供たちと供にルイスがエディの運び込まれた病院に到着すると、キャシーが手術室の前で祈るように手を合わせながら座っていた。
 「キャシー、エディは?」
 「今、手術中よ。傷が深くて出血が多いんですって・・。助かるわよね?あの子死なないわよね?」
 「大丈夫。きっと助かる。気をしっかり持つんだ。」
 ルイスは泣き崩れるキャシーを抱き締めた。
 その時だった。手術室からナースが飛び出してきた。
 「あの子がどうかしたのですか!?」
 ナースの慌てた様子に、キャシーが動揺して聞いた。
 「血液が足らないのです。病院に保管していた輸血用の血液では足らなくなってしまったのです。」
 「私はあの子の母親です。私の血を使ってください!」
 「何型ですか?」
 「A型です。」
 「ダメです。彼はO型です。O型の血液の方はいませんか?」
 「母親なのに、どうしてダメなの?私の血を全部あの子にあげて!!」
 キャシーは輸血用の血液が足りないと言われ、エディが助からないような錯覚に陥り、半狂乱のようになっていた。
 「キャシー、落ち着け!僕はO型です。僕の血を使ってください。」
 「ああ、よかった! 急いでこちらに来てください。」
 「ママを頼むよ。」
 ルイスは最年長のブランドンにそう言うと、ナースに付いて手術室横の部屋へ入って行った。
 「ママ・・。エディはきっと大丈夫だよ。パパの血をもらうんだもの。」
 ブランドンがキャシーを抱き締めて言った。
 子供たちがみなキャシーの傍に寄り添って、母を勇気付けようとしていた。子供たちもまた、自分たちの兄弟のエディを心から心配していたのだった。
 「ええ、そうね。エディはきっと大丈夫よね。みんなありがとう。」
 キャシーは子供たちを抱き締めながら、神に祈り続けていた。


 しばらくしてキャシーの両親も到着した。ルイスが子供たちを連れて病院に来るときに、実家にも連絡していたのだった。
 「エディはどうだ?」
 「ああ、パパ、ママ。あの子が私を庇って刺されてしまったの。出血がひどいらしくて・・。今、ルイスが輸血してるの。私の身代わりになってくれて・・。私が刺されていればよかったのに・・」
 キャシーは父に倒れこむように抱きついてそう言った。涙が止まらなかった。
 「あの子は強い子だ。お前を捜して一人で家にまで辿りついて来た子だ。それに私の孫だ、きっと助かる。気をしっかり持て。」
 「ええ、パパ・・」


 それから数時間が過ぎようとしていた。キャシーには、長い長い時間に感じられた。
 子供たちは、手術室前の長椅子に横たわって眠っていた。
 ようやく手術中のランプが消え、手術室のドアが開いて中から医師が出てきた。
 「もう大丈夫ですよ。背中から刺された傷は肺にまで達していて大変危険な状態でしたが、手術は成功しました。出血がひどくそちらの方も心配でしたが、ご主人の輸血のお陰で、彼は一命を取り留めました。」
 「ああ、ありがとうございます。ありがとうございます。」
 キャシーは医師の言葉に、今度は安堵の涙が溢れて止まらなかった。
 手術室から先にストレッチャーで運び出されて来たのは、ルイスだった。大量の血液を輸血したため、彼も今晩はそのまま入院することになったのだった。 
 「あなた、ありがとう。エディは助かったわ。あなたのお陰よ。」
 キャシーがルイスに声を掛けると、ルイスはホッとした表情を見せて微笑んだ。
 ルイスが病室へ運ばれた後、エディがストレッチャーで手術室から運び出されて来た。
 「エディ。よく頑張ったわ。」
 キャシーはまだ麻酔から醒めていないエディの頭を撫でながらそう言った。



 キャシーはその日から仕事を休み、エディに付きっ切りで看病した。
 母に看病されながら傷口の痛みに耐え、時折母に甘えて、それまでの親子の空白を埋めるような時間が流れた。
 それは、キャシーとエディにとって幸せな時間に思えた。
 エディも徐々に回復していった。
 だがその頃、エディの心には一つの決心が芽生えていた。優しい母の看病を受け、母の愛を感じた彼は、だからこそ、その決心をしたのだった。そして、その決心が、彼を素直に母に甘えさせていた。
 それから1ヶ月ほど経って、ようやくエディが退院の日を迎えるまでになった。



 キャシーと供に病院から家に戻ったエディを、ルイスと子供たちが出迎えた。
 「お帰り。」
 「エディ、お帰り。」
 「ただいま。」
 「さあ、やっと家に着いたわ。エディ、疲れていたらベッドで休んでいいのよ。」
 「ママ・・・」
 「ん?どうしたの?」
 「僕、この家を出ようと思っています。」
 エディは、入院中に決めていたことをキャシーに告げた。
 「ええ!? エディ、どうして?やっと一緒に暮らし始めたんじゃないの。何を言うの?」
 「うん。僕もママと一緒に暮らせることになって幸せだった。病院でもママに甘えられたし、幸せだったよ。」
 「じゃあ、どうしてそんなこと言うの?ここを出てどこへ行くと言うの?」
 キャシーはエディの気持ちが全く分からなかった。
 「また、孤児院に戻ります。」
 「エディ、理由を聞かせてくれるかい?」
 ルイスが優しくエディに尋ねた。
 「僕の本当のパパは、ママを刺そうとしたあの男の人なんでしょ?」
 「エディ・・。あの時、聞いていたのか?」
 ルイスが驚いたように言った。
 「違うわ!違うわ!」
 「キャシー、ちょっと落ち着きなさい。」
 ルイスはキャシーを嗜めるとエディに向かって言った。
 「エディ、そうだったらどうなんだい?」
 「あの人のせいで、ママはずっと苦しんできたんでしょ?だから僕を乳児院に預けたんだよね?」
 「う・・む。それで?」
 「僕を見てるとママはきっとあの人を思い出すでしょ。僕はママの前にいない方がいいんじゃないかって・・」
 「ママのためなのか・・」
 「エディ、そんなことないわ。あなたはあなたよ。ママは確かに、あなたを産んだときあなたを乳児院に預けてしまった。それは、ママが弱かったからなの。まだパパとも出逢う前で、一人ではあなたを育てる自信も勇気もなかったの。でも、今は違うわ。あなたを愛してるの。だからあなたを捜して一緒に暮らそうと思ったのよ。あなたがいなくなるなんてママには耐えられないわ。」
 「でも、僕はパパの本当の子供じゃないでしょ?あの人の子供だ。」
 「エディ、確かに君は僕の本当の子供じゃないかもしれない。でも、それはブランドンたちだって同じだろ?彼らも養子だけど、僕は自分の子供だと思ってる。まして君は、ママとは血が繋がった本当の親子だ。」
 「う・・ん。」
 「僕はね、家族に取って大切なのは、血の繋がりよりも心だと思う。けれど、もし血の繋がりが必要だと言うなら、エディ、君の体にはもう僕の血が流れてる。あの手術で受けた僕の血が、君の体に流れ続けているじゃないか。ほら、僕たちには血の繋がりもあるだろ?これで何の問題もないね。エディ、君の父親は僕だ。」
 「パパ・・・」
 エディは、ルイスの言葉に自分が愛されていることを実感して、胸が熱くなった。そして涙が頬を止め処なく流れ落ちてきた。
 「僕、ここに居てもいいの?ママやパパと一緒に居てもいいの?」
 「当たり前じゃないか。」
 「ええ、そうよ、ずっと一緒よ。」
 「ママ!パパ!」
 エディはキャシーとルイスに駆け寄った。
 「エディ!」
 キャシーはしっかりとエディを抱き締めた。ルイスもエディを抱き締めた。子供たちもみな駆け寄ってきた。
 ルイスとキャシーは、全ての子供たちを二人の大きな愛で包むように抱き締めていた。


 血の繋がりや誰が産んだか、誰が父親かなど、もう彼らには関係なかった。
 その時、彼らは確かに親子だった。
 親と子を繋ぐ絆の糸は、今、しっかりと紡がれていた。
 庭に咲いたコスモスが、この家族をみつめて微笑んでいるようにそよ風に揺らいでいた。

 

 

~完~







紺碧の絆-24


第二章


(9)


 「あいつは、俺が捕まったあの時の男じゃねぇか! じゃあ、あの女が俺の子を産んだのか・・・。へへへ・・。しかし、一体何人子供がいるんだ?こう暗くてしかも抱きかかえられてちゃ、どの子か分かりゃしねぇじゃねぇか。」
 男は、キャシーとルイスが最後の子供を抱きかかえて家の中に入り、玄関を閉めたのを確認すると、こっそりと家の裏口の方へ回って行った。
 裏の外からの目隠し代わりに植えてある植栽を跨いで、家の敷地の中に入った男は、そっと小窓から中の様子を伺った。
 リビングでは、キャシーとルイスが子供たちをベッドに運び終え、ホッとしたようにソファでお茶を飲んでいた。
 男は二人の顔を見ると、自分が捕まったあの時の光景が蘇えり、ムカムカと腹が立ってきた。
 「くそっ!俺は長い間あいつらのために臭い飯を食っていたというのに、のんびりとお茶なんか飲みやがって、しかも俺の子供まで取り上げて、このままで済むと思うなよ。」
 男は、二人が寝静まるのを外から見つからないように、家の植栽の陰でじっと待つことにした。
 
 「ふぁ~あ。さて、疲れたし、そろそろ寝るか。」
 「そうね。ルイス、本当にありがとう。何もかもあなたのお陰だわ。エディにも逢えてこうして一緒に暮らせるようにもなったし、みんなにも紹介できて、私本当に幸せよ。」
 「君が笑顔でいてくれることが僕も何より嬉しいよ。君の幸せは僕の幸せだからね。」
 二人はキスを交わすと1階奥の寝室へと向かった。

 リビングの明かりが消え、二人が寝室へ行ったことを察知した男は、その後もしばらくそのままで待った。二人が深い眠りにつくまで待つつもりだったのである。



 それから2時間ほどそうしていただろうか。男は、おもむろに立ち上がると行動に移った。
 裏口のドアに行きノブを回した。だが、当然鍵は掛かっている。男は、自分のポケットからハンカチを取り出すとそれをドアの上部の窓枠のガラスの隅に当て、傍に落ちていた拳ほどの大きさの石を拾うと、それでハンカチの上から打ちつけた。
 ガシャン!
 少々音がして、男は気づかれたかとじっと身を潜めた。しかし、中からは人が出てくる様子もなかった。
 ハンカチの上からだったので、ガラスは大きく割れたわけではなく、窓枠のドアノブの丁度真上辺りから横の窓枠まで斜めにヒビが入り、わずかに割れて欠けたところのガラスがハンカチに付着していた程度だった。
 気づかれた様子のないことに安心した男は、ハンカチを振り、その付いていたガラスの破片を振り払うと、今度は4つにたたんで窓ガラスの割れたところをハンカチで挟みギシギシと揺らし始めた。すると、ヒビの入った窓枠までのガラスが取り外されたのだった。
 丁度男の腕が一本通るほどの穴が、ドアノブ上部の窓枠に開いた格好となった。男はそっとその穴に腕を差し入れ、内側から鍵を回した。
 カチャ。
 鍵のはずれる音がして、男が腕を引き抜きドアノブを回すと、ドアは難なく開いた。
 「ヒヒヒ・・。簡単なもんだぜ。」
 男は、家の中に足音をさせないようにそっと進入した。
 リビングの奥に2階へ通じる階段がある。おそらく子供部屋は2階だろう。男はそう考えて、そろりそろりと階段の軋む音がしないように2階に上がって行った。


 男が2階へ上がると、部屋が4つあるのが見えた。
 「俺の子供がいるのはどの部屋だ?」
 仕方なく男は端の部屋から捜してみることにした。
 ドアを開けると、一つの子供用ベッドに男の子が寝ていて、ベビーベッドにも2歳くらいの子供が寝ていた。男はベビーベッドには目もくれず、子供用ベッドの傍に行って眠っているその子の顔を覗き込んだ。
 そこは、8歳のディランと2歳のテッドの部屋だった。
 「白人の子だな。こいつは俺の子じゃねぇな。」
 男は、再び足音を忍ばせて部屋を出て、そっとドアを閉めた。
 それから、次に隣の部屋のドアを開けた。
 部屋に入ると、ここには子供用のベッドが2つ左右の壁に沿うように置かれていた。花柄のカーテンやベッドカバーが、おそらくは部屋の主は女の子だろうと思わせたが、念のため、その顔を確認するためにベッドの傍まで行ってみた。
 左のベッドには、やはり女の子が眠っていた。それは、6歳のアンジェだった。
 右のベッドも確認しに行くと、布団を頭から被っていて、男の子か女の子か分からない。男はそっと布団を持ち上げ、その顔を確認しようとした。
 「!!」
 男が布団を持ち上げたとき、眠っていたはずの子供と目が合ってしまった。
 8歳のエリスだった。
 エリスは布団がめくられて男が覗き込んだ時、何気に目が開いたのだった。
 「ギャー!!」
 エリスは夢か現実か分からなかったが、ふと目を開けた時に見えた見知らぬ男に思わず叫び声を上げてしまったのだ。
 男は突然の叫び声に慌てて部屋を出た。もう自分の子供を捜すところではなくなってしまった。


 男が階段を駆け下りているとき、ルイスがエリスの叫び声を聞いて寝室から飛び出してきた。
 家の中にいる侵入者にルイスは驚き、駆け下りて来た男に思わず飛び掛った。ルイスと男は揉み合いになった。
 その時、騒ぎを聞きつけてキャシーも部屋から出てきた。
 「キャー!」
 家族以外の男とルイスが格闘している姿を見て、キャシーは思わず声を上げた。
 2階の階段上には、騒ぎで目覚めた子供たちが部屋から出てきた。
 「キャシー、子供たちを!」
 ルイスが男と揉み合いながらキャシーに叫んだ。
 「みんな部屋へ戻りなさい!」
 子供たちは恐怖と異様な状態を察知し、母の言う通り急いで部屋へ戻った。


 2階への男の侵入を阻むため、キャシーが咄嗟に階段の方へ走り寄ろうとした時、男はルイスをあらん限りの力で突き飛ばした。そしてキャシーに駆け寄ると、彼女を後ろから取り押さえ、その首にポケットから取り出したナイフを突きつけた。
 「おとなしくしろ!こいつが殺されてもいいのか?」
 「お前は・・!」
 ルイスがようやくその侵入者の顔を思い出した。
 「そうだよ。俺だよ。お前たちに9年前に捕まえられて、長い間刑務所に放り込まれていた俺だよ。」
 「その恨みを晴らしにきたの?」
 キャシーがナイフを突きつけられたまま聞いた。
 「いや、それは偶然だ。お前、俺の子を産んだそうじゃないか?その子と最近暮らし始めたんだろ?」
 「!!」
 「隠さなくてもいいじゃねぇか。俺と仲良くしようぜ。俺たちゃ、その子のパパとママなんだからさ。イヒヒ・・。」
 「僕のパパ・・・?」
 他の子供たちは部屋に逃げ隠れていたが、母たちの様子が気になって2階の廊下の陰からそっと覗いていたエディは、男の言葉に、それが自分のことだと気付いてしまった。
 「さあ、その子をここに連れて来い!俺の子供をな。」
 「嫌よ。誰があなたなんかに渡すものですか。」
 「なに~!?殺されたいのか?お前、子供を連れて来ないとこいつを刺すぞ?」
 男はルイスに向かってエディを連れてくるように言った。
 「ルイス、ダメよ!」
 ルイスはどうしていいか分からず、身動きが取れなかった。
 その時だった。
 2階の廊下の隅からその様子を見ていたエディが、階段を駆け下り男の後ろから男の腕に噛み付いたのだった。
 「イテテ・・・。」
 男が怯んだ隙に、キャシーが階下のルイスの元に逃げようとした。
 その刹那、男がキャシーの背後に突き刺そうとナイフを振り上げた。
 ブスッ!
 鈍い音がして、階段がみるみる赤く染まっていった。


 「エディ!!」
 ルイスが叫んだ。
 「キャー!エディー!!」
 振り返ったキャシーも叫んだ。
 男がナイフをキャシーの背中目掛けて振り下ろしたその瞬間、エディが母を庇うようにキャシーの背中に覆いかぶさったのである。そして、男のナイフはエディの背中を貫いたのだった。
 「エディ、エディ!しっかりして!」
 キャシーは、ぐったりとなったエディを抱きかかえ狂ったように叫んでいた。
 男はキャシーではなく子供を刺したことに驚いて呆然としていた。
 「お前が今刺した子がお前の子供なんだぞ!」
 ルイスが男に言い放った。
 「!!」
 男はルイスの言葉に驚き、ナイフを落とすと、へなへなとその場へしゃがみ込んでしまった。
 ルイスは、急いでレスキューへ電話を入れた。
 「この子が、俺の子・・?俺は自分の子を刺しちまったのか?」


 「エディ!エディ!目を開けて!エディ!!」
 キャシーが叫び続けていた。
 その時、エディがうっすらと目を開け、虫の息でキャシーに言った。
 「マ・・マ・・・、ごめ・・ん・・ね。僕が・・生・まれ・・て、ママ・・を、苦し・・め・・て・・。」
 エディは、“本当のパパのことは忘れて”とキャシーに言われた意味が、自分の父だというこの男を見てやっと分かったのである。
 「何を言うの、エディ。そんなことないわ。ママはあなたを愛してるわ。あなたが生まれてくれて本当によかったと思ってるのよ。やっと逢えたんじゃない。だからエディ、死んじゃダメよ。死なないで!エディ、エディ!」


 けたたましいサイレンの音が聞こえ、レスキューが到着した。
 “子供が刺された”というルイスのレスキューへの要請で、警察も供に来ていた。
 エディの容態をレスキューが確認している傍らで、警察が男に尋ねた。
 「お前が刺したのか?」
 呆然としたままコクリと頷いた男を警察が緊急逮捕した。男は抗うこともなく警察に従った。
 男は警察に連行される際、レスキューの車に運びこまれようとしている我が子を見ながらルイスに言った。
 「俺はひどい男だ。こんな男が父親だったらあの子が可哀相だ。二度とあんたたちの前には現れない。だからあの子を頼む。」
 「分かった。必ずあの子は助ける。君もあの子のためにも更生してくれ。」
 ルイスが男にそう言ったとき、男の目に光るものが見えた気がした。
 男は、パトカーに連行されて行った。


 それからルイスはレスキュー車に駆け寄り、車内に運び込まれ酸素吸入や応急処置をされているエディの傍で手を握り締めながら泣き叫んでいるキャシーに言った。
 「子供たちを連れて僕もすぐに病院に行く。君はエディに付いててやれ。気をしっかり持って、君が取り乱してちゃダメだ。分かったね。」
 キャシーは泣きながら頷いた。
 ルイスは、エディを運び込む病院をレスキューに確認すると、急いで家の中へ引き返した。
 再びけたたましいサイレンを鳴らして、レスキュー車が病院へと発進した。
 ルイスは子供たちを集めて車に乗せ、レスキュー車の後を追うようにさっき聞いた病院へと車を走らせた。




~続く~




紺碧の絆-23


第二章


(8)


 「9年か・・。長かったなあ。」
 「これは仮出所だ。本当ならまだ数年は刑務所の中だったんだぞ。また何かやらかしたら、その年数が加算されるだけじゃ済まないんだから、もう2度と事件を起こすんじゃないぞ。引き取り手のない君の身元引受人になった私の顔に泥を塗るようなマネは絶対するなよ。分かったな。」
 「分かってますよ。先生様には感謝してます。俺の弁護をしてくれた上に、身元引受人までなってくれたお陰で、こうして仮出所できることになったんですから。」
 9年前に婦女暴行と傷害、および殺人未遂の罪で捕らえられていた男は、彼の身元引受人となった弁護士に付き添われて、今、ロンドンの刑務所から仮出所したところだった。
 その黒光りした屈強な体と眼光の鋭さは以前と変わることなく、10年近くの歳月が流れたとは思えないほどだった。
 「君だって、今は人の親なんだから、もう女性に乱暴するなんて止めておくことだな。」
 「人の親?この俺が?何のことです?」
 「ああ、君は知らなかったんだな。これは失言だ。忘れてくれ。」
 「先生、それはないですよ。“人の親”なんて言われちゃ、気になるじゃないですか。俺に子供できたってことですか?」
 「ま、そういうことだ。だから、真面目に働いて、父親として恥ずかしくない人間になることだな。」
 「俺の子供がいるんですか?どういうことです?教えてくださいよ。」
 「う~ん・・・。」
 「先生、俺だって、家族がいればもっとまともな人間になれると思うんですよ。今までは一人ぼっちだったから、どうにでもなれって感じだったけど、子供がいるって分かれば、ちゃんと仕事もして真面目に生きる励みにもなるってもんじゃないですか。」
 「ふむ。だが、その子に逢うこともできないし、一緒に暮らせるわけでもないぞ?」
 「分かってますよ。ただ、自分の血を分けた子がいるなら知りたいじゃないですか。先生だって人の親でしょ?俺の気持ちも分かってくれますよね?」
 「う・・む。弁護士仲間から聞いた話だが、お前が襲った女性が妊娠して子供を産んでるんだそうだ。その子はもう10歳になってるらしいぞ。」
 「ええ!? それホントですか?男の子ですか?女の子ですか?」
 「男の子だそうだ。施設にいたそうだが、最近母親と暮らし始めたらしい。」
 「どこにいるんですか?」
 「それは言えない。まあ、そういうことだから、お前もその子に恥じないように真っ当になるんだな。」
 弁護士は、子供がいたということを教えるくらい何と言うことはないだろうと高をくくっていた。逆に我が子がいることを知って、この男が真面目になってくれればと思っていたのだ。
 しかし、この仏心が後に彼を後悔させることとなるのである。


 弁護士は、男を出所した受刑者の更生施設の寮に連れて行った。ここは、刑を終えた受刑者が社会復帰できるまで仕事と宿泊できる場所を提供してくれるリハビリセンターともいうべきところだった。ここでは、安いながらも賃金も出るため、ある程度金を貯めてどこかに部屋を借りれるまで面倒をみてくれるのだ。
 「ここで真面目に働いて、早く部屋でも借りれるようになるんだな。」
 男は野宿するわけにもいかないので、とりあえず大人しくそこに留まることにした。
 
 翌日、男は更生施設の仕事には行かず、孤児院へと向かった。自分の息子の消息を知るためである。
 男には家族がいなかった。だから、息子がいると聞いて、どうしてもその子が見たくなったのである。
 「あの弁護士は確か、施設にいたが最近母親と暮らしだしたと言っていたな。仕方ねぇ、孤児院を片っ端から当たってみるか。」
 男は、電話帳に載っていた孤児院に順に行ってみることにした。
 「ちょっとお伺いしますが、最近母親と暮らしだした10歳の男の子がこちらにはいませんでしたか?」
 「あなたは?」
 「父です。私の別れた妻がひどい女でね。酒や薬に手を染めていたので、私は別れることにしたのですが、私と別れるときに妊娠していたらしいのです。でも、私にはそのことを一切言わずに子供を産んで、しかし育てるのは嫌だったのか、勝手に施設に預けていたらしいのです。ところが、今度は急に子供を引き取ったそうなんですよ。私はそのことを最近弁護士から聞いたのですが、あの女のことですから、きっと子供を何か悪事に利用しようと思ってるはずなんです。私は子供が心配で心配で・・。それで、こうして子供を捜してるのです。何とか見つけ出して私が引き取ってやりたいと思っていまして・・。」
 男は、孤児院の職員の前で泣いて見せた。
 「まあ、それはお気の毒に・・。ちょっと待ってください。」
 職員は最近までいた10歳の男の子で、母親と暮らし始めたという子供がいなかったか、資料を調べ始めた。
 「残念ですが、そういう子供はうちにはいませんね。お力になれませんで・・」
 「あ、いえ。そうですか。ありがとうございました。」
 男は、電話帳から書き写した孤児院の名前と連絡先のリストの上から、手掛かりのなかった孤児院名を消していった。
 「ちっ、あと何軒回らないといけないやら・・」
 男は、かったるそうにリストの次の孤児院に向かった。
 リストに書き写した孤児院の住所に従い東奔西走したが、1日目は何の収穫もなく、6軒回ったところで日も暮れだしたので、後は明日にすることにした。


 寮に帰ると、施設の寮長が今日仕事に出なかったことを注意してきたが、男がその鋭い眼光で睨みながら「体調が悪かったんだ。体調が良くなるまでしばらく仕事にはいけない。」と、ドスを効かして言うと、「体調がよくなったら出て来てください。」と帰ってしまった。
 男は、ベッドに横になると、我が子の顔を想像していた。
 「俺に似てるのかな?」
 子供の顔を思い浮かべているうちに、やがて男は深い眠りについていった。



 翌日からも男は、孤児院へ行き自分の子供を捜し続けた。
 何日かそうして捜して、やがてセント・ヘレナ孤児院へ男が辿りついた。
 男はいつもと同じようにウソで並べた理由を言って、最近母親と暮らし始めた10歳の子供がいなかったか尋ねた。
 「まあ、お気の毒に・・。最近母親に引き取られた10歳の男の子って言えば、エディのことかしら?」
 「え!? エディ・・。その子は今どこにいるんですか?早く母親から引き離さないと。」
 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。確かグラスゴーだったけど・・。ああ、あった。これだわ。弁護士が養子の手続きをしたときに現住所を記入しているので、ここにいるはずだけど。」
 「ありがとうございます。」
 男はその住所を書き写すと、丁寧に礼を言い孤児院を後にした。
 『グラスゴーだって?俺が捕まった場所じゃねぇか。どの女だ?』
 男は、メモに書き写した住所へ向かうために、グラスゴー行きの列車に飛び乗ったのだった。




 「ママ、久しぶり。元気だった?」
 「レイチェル、よく来たわね。もうみんな来てるわよ。さあ、奥へ行って。」
 「お義母さん、お久しぶりです。」
 「グレン、よく来てくれたわ。ささ、中に入って。」
 「おばあちゃま、こんにちは。」
 「いらっしゃい、ローラ。あら、また背が伸びたんじゃない?ほら、よく顔を見せて。」
 今日はエディの歓迎会で、キャシー家族や妹のレイチェル家族、そして弟のアダムも久しぶりに実家に顔を集めていた。
 レイチェルは3年前に夫グレンと結婚し、一人娘の3歳のローラとともにエディンバラで暮らしていた。弟のアダムは大学を卒業するとロンドンで就職し、今は会社の寮で一人暮らししている。
 オブライエン家にこうして一同が集まるのは、昨年のクリスマス以来だったので、皆久しぶりの再会を喜んでいた。
 「レイチェル、遅かったわね。」
 「姉さん、お久しぶり。ごめんなさいね。渋滞に巻き込まれちゃって遅くなったの。パパ、ただいま。アダムも元気そうね。」
 レイチェル家族が皆と再会のハグをして一通りの挨拶を済ませると、先に来ていたアダムには既に紹介していたので、キャシーはレイチェル家族にエディを紹介した。
 「この子がエディよ。10年ぶりに逢えた私の息子。よろしくね。エディ、ママの妹のレイチェル、あなたの叔母様になるわね。」
 「エディ、よろしくね。彼はグレン、私の旦那様よ。そして娘のローラ。まだ3歳になったばかりなの。仲良くしてね。」
 「僕、エディです。よろしくお願いします。」
 「まあ、お行儀のいいこと。」
 大勢の家族がエディを歓迎し、楽しいパーティが進んでいた。
 エディは、幸せだった。
 母は自分を忘れているかも知れない、自分は邪魔者なのかも知れないという不安を抱えながら母を捜していたが、やっと母に逢うことができ、その母もまた自分を捜してくれていたことを知った。そして、こうして一緒に住むことができるようにもなり、弟や妹もでき、祖父母にも逢えた上、親類にも紹介してもらえた。初めて自分が生きてきてよかったと思えるほど、彼の心は幸せで満たされていた。
 祖母の手料理に舌鼓をうち、みんなで楽しいひと時を過ごした。


 やがて賑やかなパーティもお開きの時を迎えた。
 「また、こうして集まりましょうね。今度は家にも来てちょうだい。」
 キャシーたち家族は、キャシーの実家を後にし帰路に着いた。
 楽しくてはしゃぎ過ぎたのか、6人の子供たちは車の中で眠ってしまっていた。
 ルイスが自宅の駐車場に車を停めると、助手席のキャシーが後部座席の子供たちを見て言った。
 「あら、みんな寝ちゃってるわ。」
 「遅くなっちゃったからね。仕方ないな。一人ずつベッドに運ぶか。」
 キャシーとルイスは、子供たちを一人ずつ抱きかかえて、子供部屋のベッドへと運んで行った。
 彼らは、その様子を向かいの通路の陰からじっと見つめている人影になど、全く気づきもしなかったのだった。




~続く~





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