前回は哲学的思考で頭がよくなる本をご紹介しました。
効果のほどはいかがでしたか。実感できたでしょうか。
考える力は論理構成力とボキャブラリーの豊かさで決まるといってよいでしょう。
そのためには、日ごろから、ニュースに加え、文学、歴史、自然科学など様々な情報に触れるとともに人に説明したり、深く考える癖を付けることが重要であると思います。
その際、問題になるのが記憶力です。
年とともに記憶力が減退していると感じる方も多いと思います。
でも、日本語はしっかり話せているわけですから、小さい頃覚えた言葉は今でも忘れずしっかり身についてるわけで、加齢による記憶力の減退はそれほど心配しなくてもよいと思います。
小さい頃、言葉を無理して覚えたという記憶はないはずです。
言葉をいつの間にか覚えたように、今でも工夫すれば知識を記憶することができるのです。
今日は「記憶は工場で大量生産するように機械的に可能である」という考え方で書かれた記憶法の本『機械的記憶法』を解説します。
【本日のご紹介図書】
書 名:機械的記憶法
著 者:牛山恭範
価 格: 1,470円
出版社:日本実業出版社
発行日:2012.8.10
http://www.amazon.co.jp/dp/453404982X
NO.1「記憶法を正しく学ぶ」
【1】記憶するための戦略を学ぶ
記憶は大きく分けて「再生記憶」と「再認識記憶」に分けることができます。
再生記憶は思い出すためにヒントは必要ありません。
再認識記憶は何かヒントになるものを見てはじめて思い出すことがえできる記憶です。
論文試験や口述試験だったら「再生記憶」が必要です。
択一式試験だったら「再認識記憶」で十分です。
勉強するときは、どちらの記憶にするかで勉強法も変わります。
論文試験、口述試験においてはヒントとなる要素はなく、問題文を読んでイチから答をひねり出さなければいけません。
そのためには1つのキーワードを示されたらその内容をすぐに口述できるくらいにまで記憶を強く定着させる必要があります。
具体的にはキーワードとその内容をカードに書き取り、一度に7枚ぐらいくり返しながら覚えていきます。
7つのカードを一枚ずつめくり、ひとつにつき1秒で瞬間的に思い出せるようになるまで、何度もめくり直します。
そのうち短期記憶から長期記憶に移し替えがされます。
択一試験においてはまったくゼロから思い出すのではなく、問題文を読んでその中から選びだす方法なので、前述のようにひとつひとつの単語を正確に覚えるまで繰り返す必要はありません。
むしろ意味の理解に重点を置くようにします。
具体的には、テキストを10から15ページくらいに区切って20回ほど繰り返して読み、次の10から15ページに移り、また同じように20回ほど繰り返して読むという方法で読み進めていきます。
試験に合格するためにはいかに覚えるかということより、いかにして多くのことを忘れないようにするか工夫することが大切です。
人間がモノを記憶するには2つの方法しかありません。
くり返しか、エピソード記憶の2つしかありません。
エピソード記憶は自分の身の回りに起きたことに強く刺激を受けて覚えるわけですから記憶するのに労力は必要としません。
一般的な記憶はそうはいきません。
記憶力が悪いと勘違いしている人がたくさんいますが、記憶力が悪いのではなく、鬼のように徹底して復習していないから覚えないだけなのです。
多くの難関試験合格者が直感的に知っていることは、復習する回数は多ければ多いほどよいということ、そして、1日に復習する総体的な範囲は広ければ広いほどよいということです。
論文暗記用のレジュメを1日で何回も高速で回転させています。
復習する範囲を広げれば当然、覚えきれないという矛盾が生じます。
だからこそ何度も繰り返すのです。
資格試験の場合は20回を目安にします。
テキストを最初から最後までざっくり読むといいと書かれている勉強法の本がありますが、それは間違いです。
適当な量に区切って何度も繰り返し、覚えるまでは次に進まないようにします。
もう一つの方法にエピソード記憶があります。
どこかに遊びに行ったときの記憶は忘れにくいものです。
この忘れにくいエピソード記憶の特性を利用してあっという間に覚える暗記のテクニックもあるので、学習に取り入れていきます。
【2】エピソード記憶の力を使う
子どもの頃のワクワクした体験はいつまで経っても忘れません。
これを記憶術に活かします。
くり返し記憶ではどうしても記憶しづらいとき、この記憶術を使います。
具体的にはイメージに変換していきます。
たとえば次の文章を読んでください。
「相続回復請求権は、相続人またはその法定代理人が相続権を侵害された事実を知ったときから5年間行使しないときには、時効によって消滅する。また、相続開始の時から20年を経過したときも消滅する」
くり返し記憶だけでは難しいと思ったときは記憶術の出番です。
文章のなかのキーワードをイメージに変えていきます。
相続回復請求権⇒薬
5年⇒黄金(05)オウゴン
20年⇒ニワトリ(20)
「ニワトリに乗り、黄金を脇に抱えて、薬を買いに行く」
バカバカしいイメージほど覚えやすいものです。
夢の中にでてきた1つの風景のように記憶に残せばよいのです。
それでも覚えきれないときは、感覚、感情、必然性などを加えていきます。
黄金を脇に抱えて薬を買いに行くときもったいないと思いませんでしたか。
そのときにニワトリの乗り心地はどうだったでしょうか。
どうして乗り物はニワトリでなければいけなかったのでしょうか。
等々、ストーリーにしていきます。
NO.2「速読と速聞きで記憶する」
【1】速読で目に焼き付ける
速読をマスターすれば要点あるいは論点を集めたノートを数秒の速さで読めるようになります。
つまり高速で復習できるようになるわけです。
ただし、速読で細部まで完璧に記憶したり、理解するのは困難です。
速読のメリットデメリットをよく理解した上で活用しなければいけません。
記憶は何度も繰り返すことで形作られていきます。
このため、高速で頭の中への情報インプットを繰り返す速読が復習に有効であることは言うまでもないでしょう。
速読を使った勉強法は次のとおりです。
まず、テキストは10ページから15ページぐらいのブロックに分け、1ブロックごとに20回ぐらい繰り返して読んで理解するようにします。理解が進むごとに読む速さを上げていけばよいでしょう。
次に記憶用の教材をつくります。
教材は市販の「過去問」と「ノート」を使います。
「過去問」では正解の選択肢を蛍光ペンでなぞります。
○×の問題集なら○の選択肢や文章を蛍光ペンでなぞります。
間違っている選択肢であっても参考になることが書かれていたら、間違いを正しく見え消しで修正して正解の文章に加工し、蛍光ペンでなぞります。
文章よりも図式化して方が覚えやすいときはノートに手書きで図式化します。
ノートには図式だけでなく要点も記し、速読用のノートにします。
カスタマイズした「過去問」と、手書きの「ノート」を速読で何度も復習します。
速読といっても、一般の教養書を読むような読み飛ばしではいけません。
内容をしっかり頭に刻みつけるような読み方をします。
一回目はゆっくり読み、徐々にスピードを上げていくことになります。
【2】速聞きと自動記憶
耳からの勉強には2つの方法があります。
ひとつは「聞き流し」、もうひとつは著者の牛山さんが開発した「自動記憶」の方法です。
まず、「聞き流し」について説明します。
先ほどのカスタマイズした過去問の蛍光ペンでなぞった部分をICレコーダーに吹き込んでください。
吹き込む時間はせいぜい3分から5分程度にします。
その3分から5分の区間を、リピート再生で聞き続けます。
ここで気をつけなければいけないのは、内容を理解していないままやみくもに聞き続けようとしないことです。
内容が理解できてはじめてリピートの効果が表れます。
選択式の試験は再生記憶(何も見なくても思い出すことができる記憶)ではなくて、再認識記憶(問題文などを見て思い出すことができるレベルの記憶)が必要であることは昨日話しました。
この再認識記憶には速聞きが有効なのです。
次に自動記憶について説明します。
いくらインプットしても、それを記憶から引き出してアウトプットできなければ本番で役に立ちません。
今度は聞き流しではなく、ポイントを抑えて連続でリピートの想起を行います。
まず、覚えるべきポイントに番号を入れます。
覚えるべきポイントが10個ぐらいになったら、それをICレコーダーに吹き込みます。 ICレコーダーをリピート再生しながら、単に聞き流すのではなく、覚えるべきポイントを自分でも想起します。
自動記憶はただ聞き流すのではなく、聞いている内容に対して想起を繰り返す記憶法です。
いかがでしたか。
試験に合格できない本質的な原因を著者の牛山さんは次のとおり分析しています。
1「復習をしっかり実行できていない」
2「復習開始時点が覚えてから相当時間が経過している」
牛山さんのクライアントはこの2点を改善することで難関大学や難関試験に続々合格しています。
これまでの勉強法を見直したい方にこの本はおすすめです。一瞬で思い出せる頭をつくる 機械的記憶法/日本実業出版社
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