おやじは死に顔を私には見せなかった。骨箱を抱えたご家族が式場に入った。火葬されてからの葬儀だった。式場に入りきらない、向かい合わせにぎっしり並べられた沢山の供花。芸能人の葬儀でしか見たことがない、沢山の花花花。芸能人より凄いんじゃないかと思った。

行列なんてもんじゃない。式場の中も、ロビーも、玄関も、人混みだった。あれだけ人が沢山いてみんなに真剣な顔で頭を下げ続けている私の2つ上の喪主の息子さんが私を見つけた瞬間、あっ!って顔になって、おやじみたいな笑顔になって、来てくれてありがとね!って声をかけてくれた。行って良かった。


駐車場が凄いことになっていた。急いで車を出さなきゃいけなかった。私をおやじに会わせてくれた社長、おやじにいちばん愛されたおとこである社長、誰よりも一生懸命車の誘導をしていた。