2021年2月17日

山梨県内、全ての各県有地問題について

山中湖村のみならず山梨全県下に所在し、全てに影響を及ぼす県有地の賃借料について。昨16日は、山梨県議会2月定例会の開会日でありましたが、今回は執行部からの120号議案、121号議案取り下げが諮られ、県有地問題特別委員会、皆川巌委員長からは、経緯と経過についての中間報告がありました。

本件賃借料についての議案を議会は即決せず、特別委員会での慎重審議で熟議を重ねたことにより、県下各所の県有地での様々な課題の明確化、確認しておかなければならないこと等が判明したことは、山梨県議会としての責任を果たすとともに、県民に対しての、ご付託へお応えできているものと考えています。

私は特別委員会には委員外委員でしたが、県議会議員の一員として、全ての回での傍聴をさせて頂きました。そのなかで行われた議論の内容を再度整理し、県有地問題に於いてや、昨今の報道で取り沙汰されている議員の責任についても振り返っておきたいと考えます。

まず県下全体の県有地賃借料は、過去の賃料算定の素地価格が適正とされるか、現況価格であるのか、賃借料改定を個々幾らにしていくのか曖昧であり、県で協議して、明確化していく必要性があります。

県内全体の各所に所在する賃借人とも全て合意がなされなければ、法人、個人を含む各賃借人には、それぞれに過去、現在、将来に渡って、損害賠償請求の内容に因って、大きな損害を被ることは、現在も明白な事実としてあります。

県と合意して今後の話が進められない場合には、契約として公平性に欠けるものではないかと考えられることから、先ず双方で話し合いの機会を設け、能く賃料の算定について協議し合うことが肝要であります。

山梨県と、問題提起されている当該企業との契約について整理

全県下の県有地に影響を及ぼすであろう、当該企業との問題点を整理。

〇 県が従来の貸付料を算定して提示し、当該企業はこれを承諾し、契約書にサインしている点に於いては、お互いの合意により、契約は有効に成立されているものと考えられる。

〇 契約書に定められた貸付料を正しく支払っている以上に於いて、当該企業などに契約不履行等の責任は発生しないものと考えられる。

〇 今後、仮に貸付料の算定方法を間違ったと裁判で認定されても、すでに契約が有効に成立している以上は、先の通り当該企業に落ち度はなく、損害賠償請求するには無理がある。しかし、算定間違えとなった場合には、過去の算定を行った県の担当職員から現在に至る迄の、損害賠償の責任が、発生するものと考えられる。

〇 現状では算定の誤り、疑義が生じた場合には、契約書に記載ある通り、県と当該企業の話し合いを行わなければならない。しかし、当該事件発生後も履行されていないと云う事実が確認された。

〇 県が今までの算定方法を覆し、誤りがあったとした場合、先ず契約条項通り双方協議の場を持つことが必要であり、現在県が算定に誤りがあるので違法無効と主張したとしても、当該企業に民法の錯誤無効に該当するほどの瑕疵があるとは考えられない。

〇 これまでの長い貸付状態からみれば逆に、県側が信義誠実の原則に反すると判断されることも考えられ、過去の分についての請求権の発生は、可能性を含めて、極めて低いと考えられる。

〇 今回の和解案を受け入れないことにより、訴訟事件となった場合には、過去の過ちが明白となり、当時の責任者である、それぞれの知事にも、損害賠償請求がされる可能性はある。また当時の執行部も算定に誤りがあるとなれば、担当者を含め、山梨県に対して、損害を発生させた個人にも、責任をそれぞれに問われる可能性は高い。

〇 県、当該企業の双方が争う姿勢である以上、双方が時系列で事実の明確化をおこない、責任の所在を司法の場において県民の為に、きちんと事実を挙げ明白にしなければならない。

議会と議員の責任について整理

県有地についての議会における議決責任の所在や、昨今報道でも取り沙汰されている、委員会での委員の発言の責任について。

〇 議会としては、これまでの長い貸付状況をもとに、貸付料算定に特別な事情変更が発生したとの説明が当局から無かったと思われるので、議決に瑕疵はなかったと主張すると考えられる。

〇 議会の道義的な責任を言われる可能性があるが、これまで県当局も算定に疑義を挟んでいない状況で、議会が算定に誤りがあると主張することには無理がある。また同等に議選の監査役の責任に於いても同様である。

〇 貸付料算定方法に誤りがあったとする今回の当局側の和解案に対しては、算定方法を時代にあったものとすべきは、県民利益の点からは妥当であるが、議会の議論に於いては今後の貸付料改定交渉の問題とすべきと考えられる。

〇 議員の不穏当発言等については代議士の場合、国会での不穏当発言の責任問題を含め、犯罪等の捜査、判決の延長などを免れることについて、国会議員には憲法に保障されている免責の権限があることを承知している。

この「議会議員の責任を争う法廷闘争の免責の判例」についてを、国以外の地方議会に関連する例が有るか調べてみましたが、数例しか存在しませんでした。その中で、不穏当発言などで、議会全体が罪に問われた等の、係争事件や判決などは無く、一件の『(判例;責任否定)[平成12年 2月28日 東京高裁 平11(ネ)2724号 損害賠償請求控訴事件]』の確認ができました。(ページ末尾に該当した判例抜粋を転載します。1)

先ず今回の「県有地問題」において、個別の議員に関する訴えの有無について。

〇 訴権の乱用を除けば、訴状を出す自由には特に制限もなく保障されているため、判例の法の主旨に則って負ける裁判でも、勝ち負けは別にして、原告、当該企業からも、議員に訴状が出されることは予想される。

〇 議員について、委員会、議会等での発言内容が、法的に問われる裁判の過去の判例は、以下の通りと確認した。

・「右発言等によって結果的に個別の国民の名誉等が侵害されることになったとしても、直ちに当該議員がその職務上の法的義務に違背したとはいえず、当然に国家賠償法一条一項による地方公共団体の賠償責任が生ずるものではない。」(中略)

・「民主主義政治実現のために議員としての裁量に基づく発言の自由が確保されるべきことは国会議員の場合と地方議会議員の場合とで本質的に異なるものとすべき根拠はなく、地方議会議員について憲法上免責特権が保証されていないことは右法理の適用に影響を及ぼすものではない。」と裁定されている。

・また「討議の本来の目的を達成し円滑な審議を図るためであると解されるから、右規定をもって地方議会議員の発言の自由を制約する根拠とすることはできない(国会法一一九条も同旨を規定している。)。」ともある。

〇 このことから、議会議決に伴う発言や表明に対しての訴えなどには、訴状が出されても内容にもよるが、免責される公算は強いものと考えられる。

〇 しかし県民から信託された議会において、地方自治法一三二条での「言論の品位の維持を定め無礼の言葉の使用等を禁止」している議場で、不穏当な発言や相手を毀損する発言により、県民に懐疑的印象、議会の権能に対しても品位を下げるような発言をして良いとは決してならない。

〇 今回の不穏当発言との指摘は、事件に関する時系列での確認上での発言で有ると解され、判例でも示されている事案と同一のものと考えられる。また、委員会においての討議を行うための目的であり、議員が意図的に棄損するための発言では無かったのではと考えている。

〇 しかしその上でも、先の疑義を生じさせる不穏当発言も含めて、県民や個人に損失を与える様な、議員の間違った議決責任にも、議決の背後にあるものも含め、県民感情や道義的責任として、議員の発言には責任が存在する。

〇 従って議会では、慎重に審議し、充分に熟議し、丁寧に発言することが最も重要だと考える。

「議決責任」について整理

〇 議会の「責任」として、議会における「議決責任」について。これは法的に定められているものは無く、地方自治法の法律上に定められた条文、文言でも無い。また全国議長会での議会運営の拠り所の衣文とする、議員必携にも記載は無く、議会用語で定められ、罰則を伴うものでも無いことが確認されている。

〇 また更に、この「議決責任」という言葉が、国会でどの程度使われているか、国会会議録検索で検索してみた場合でも、1件しかヒット『逢坂誠二衆議院議員【平成19年3月1日衆議院予算委員会第三分科会】』しなかった。

山梨県議会基本条例の理念

〇 しかし『「山梨県議会基本条例(基本理念) 第2条」』には、 議会の場での発言で「公平かつ公正な議論を尽くすとともに、その機能を最大限に発揮」と規定されている。規定されている「議論を尽くす」ことができなければ、「山梨県議会基本条例」に違うこととなる。故に慎重に審議をせず議決したとなれば、当然に議会として条例に違背する責任は生ずる。

〇 今回の県有地問題に端を発した議決案件は、開かれた議会として、県民、市民に信託を受けている議員として、議会の慎重審議が尽くされたかとの道義的責任は、大きく問われるところである。従って山梨県議会議員として、規範と成すべき本県議会の議会基本条例 2)に記載されている通りに、議論を深めなければならない。

山梨県議会基本条例全文(平成29年3月29日 制定)

〇 本件は二元代表制の議決機関として、特別委員会委員長の元、特別委員会にて時間は掛かっても、議事調査を粛々と進め、公平性をもって事にあたることである。

〇 今後は県、当該企業との係争事件に発展した場合には、議会で調査した結果も併せ裁判所に提出して、正しい国家作用で裁定を行う権能である裁判所に拠る、司法権に委ねることが、最も妥当な処置及び行為だと考えられる。

所感まとめ

私的には、県民のため適正に賃料を上げることは賛成であります。しかし先ず行うべきは、議会に於いての公平性の下、熟議ができているかが、議会として最も重要であります。議論の場としての議会は、当事者双方からの意見を聴取し、結果が見えるまでの継続的な議事調査を実施し熟議を行い、最終的には議会として審議継続、終結を含め、何れかの賛否を決していく必要があります。

山梨県議会として会期延長により、全権を託すべき特別委員会の設置ができ熟議、討議を重ねております。本委員会において、議会側は今後も継続での議事調査を行い、執行部側は調査の内容に対し明確な答弁を示すことが、地方議会の本義である、二元的代表制での機関競争主義による善政競争での討議、審議に於いて、必要かつ重要なことだと考えられます。

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1)(判例;責任否定)[平成12年 2月28日 東京高裁 平11(ネ)2724号 損害賠償請求控訴事件]

(地方議会に係る部分については、筆者下線付与)

一 控訴人らは、本件発言の内容は虚偽であって○○○男の発言目的と関連のない誹謗中傷や名誉毀損という違法又は不当な目的の下に行われたものであり、地方議会議員の議会等における発言は一般私人以上には保障されていない等として、被控訴人には損害賠償責任がある旨主張する。

二 本件発言中にはD及び控訴人Aがガセネタを週刊○○に売り込んだ、○○市民新聞は誹謗中傷記事を掲載している、控訴人Aは変質者である、司法試験を受験したが合格できず、濫訴を繰り返す裁判マニアである等とする部分があり、これらの部分だけを取り出して考察すると、本件発言中には表現が不適切であり、具体的事実を摘示してD及び控訴人Aの人格的価値についての社会的評価を低下させるものがあるということができる。

しかし、甲一及び弁論の全趣旨によると、本件発言は東村山市議会議員である○○○男が ・・・・中略・・・ 被控訴人に対して行った一般質問の内容又は前提として、同人の認識しあるいは感じている事実を述べたものであることが認められるから、本件発言は右一般質問における発言目的と密接に関連するものであるということができる。そして、○○○男は右部分が虚偽であることを知りながら、D及び控訴人Aを誹謗中傷しその名誉を毀損するという目的の下に、あえて本件発言を行ったと認めるべき証拠はない。

また、地方議会は住民の代表機関、決議機関であるとともに立法機関であって、右議会においては自由な言論を通じて民主主義政治が実践されるべきであるから、その議員は右機関の構成員としての職責を果たすため自らの政治的判断を含む裁量に基づき一般質問等における発言を行うことができるのであり、その反面、右発言等によって結果的に個別の国民の名誉等が侵害されることになったとしても、直ちに当該議員がその職務上の法的義務に違背したとはいえず、当然に国家賠償法一条一項による地方公共団体の賠償責任が生ずるものではない。これに関し、控訴人らは免責特権を有しない地方議会議員には右のような法理は妥当しない旨主張する。しかし、民主主義政治実現のために議員としての裁量に基づく発言の自由が確保されるべきことは国会議員の場合と地方議会議員の場合とで本質的に異なるものとすべき根拠はなく、地方議会議員について憲法上免責特権が保証されていないことは右法理の適用に影響を及ぼすものではない。

また、地方議会及びその議員に対する直接民主制や住民に対する直接責任によって議員の発言の自由が制約されるとは解されないし、地方自治法一三二条が言論の品位の維持を定め無礼の言葉の使用等を禁止しているのは議場における討議の本来の目的を達成し円滑な審議を図るためであると解されるから、右規定をもって地方議会議員の発言の自由を制約する根拠とすることはできない(国会法一一九条も同旨を規定している。)。

(判例3;責任肯定→謝罪広告等を命じた)[京都地裁平成24年12月5日]

 

 2)「山梨県議会基本条例(基本理念) 第2条」 議会は、二元代表制の下、県民を代表し、県の意思決定を担う議事機関として、 公平かつ公正な議論を尽くすとともに、その機能を最大限に発揮して、広く県政全般の 課題を把握し、多様な県民の意思を県政に反映させ、地方自治の確立に取り組むものとする。』

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特別委員会による静岡県に所在する県有地の視察の模様