山梨県議会11月議会、県有地問題に関する、議案121号について

2020年12月16日

県有地問題に関する、議案121号について。昨日の山梨県議会に於いて、特別委員会での継続審査に賛成を表しましたので、その理由について述べていきたいと考えます。

 始めに、今議会で議論となっている「県有地」につきましては、当該企業との長い契約期間、私費での原野山林の開発、更に言えば、普通財産として貸付しているものであることから、法的にも、私法上の契約 [1] の考え方が、適用される可能性は高いと判断されます。

 賃借料の今後の見直しに於いても、契約の当事者は合意により契約が有効に成立しており、これを無効とするには、企業側に重大な過失が無ければならず、そうでなければ、「錯誤」 [2] を主張するしかなく、県側では賃料算定に重大な誤りがあったとする、明確な証拠を示した上での主張をしなければなりません。

 県が今までの算定方法を覆し、誤りがあったとした場合、先ず契約条項通り双方協議の場を持つことが必要であり、現在県が算定に誤りがあるので違法無効と主張したとしても、当該企業に民法の錯誤無効に該当するほどの瑕疵があるとは、これは些か、疑問に感じられます。

 現時点で、特別委員会に提出されました、契約書を始めとした資料の確認、特別委員会での議論の経過でも、契約内容を改変し、履行させるためには、双方での相応の話し合いの場が、始めに必要であると考えられます。故に、賃料が時代に適う、適正価格か、否かについても、まずもって契約通りの公平性により、双方での協議を行う必要性を感じます。

 その上で、民法601条の賃貸借の、「賃料を支払うことを約することを内容とする契約」に基づくことでもありますので、双方疑義が生じた場合には、賃借人、貸借人の両者に拠り、司法に委ね、民事等の裁判で行うべき、係争事件だと考えられます。

 そして例えば今後に於いて、住民訴訟で適正賃料の額が出たとしても、このことをもって一定時期であっても、過去の賃料まで、遡って請求することは、訝しげに感じられ、賃料については、これからの交渉で将来的な賃料を求めていくということが、妥当だと考えられます。

  私的には、県側の提案している、財源確保の着目としては、県有地の賃借料の見直しによる増収は、県民の為に大いに賛同すべき観点であります。

 しかしながら、本件と同様に、県有地を貸し付けている、他の賃借人への貸料改定の算定方法などの明示が、未だ議会になされていないこと。

 更に他部局や、まきば公園、丘の公園、北岳山荘など、地元の市町村などは、貸し出し地の賃料値上げにより、行政支出が増えることも当然予見されるなど、他方面に渡る波及が懸念されます。更に民間に貸付けている箇所に於いては、賃料増化に拠り採算性が悪化した場合、企業などは撤退を考える可能性も危惧され、観光収入にも影響を及ぼすことが、大いに懸念されます。そして賃借料の多寡を、事情により傾斜させてしまうと、新たな係争事件を発生させる元ともなりかねません。

 また土地利用条例による、借地を含む恩賜県有林を保護管理している、地元の恩賜林保護組合と県との話し合い状況など、現段階では全ての情報が、議決権を有する議会で、確認されていない状況であります。

 何より議会人として、今議会への「和解」による議決は、本当に県民の為になるのかを、議会は精査したのか、という、県民から信託を受けている、議会の責任は、大きく存在します。議論も半ばで有り、過去2回の当局説明や答弁は余り要領を得ず、他方面への影響や評価を勘案し、参考人招致に拠る説明も確認できていない状況では、議会で「即決」するのには、未だ拙速であるとものと考えます。

 また、冒頭で述べた通り、算定に当たっての、借り受け側の、付加価値をつける行為を、どう取り扱うかなども、残る課題であります。

 また更に、訴訟事件となった場合には、過去の過ちが明白となり、当時の責任者である、それぞれの知事にも、損害賠償請求がされる可能性はある。また当時の執行部も算定に誤りがあるとなれば、担当者を含め、山梨県に対して、損害を発生させた個人にも、責任をそれぞれに問われる可能性は高い。

 過去これまでの貸付料を議決してきた県執行部、議会の責任。突然に反対の意見を述べることへの道義的責任も、今後は問われる可能性もあるので、我々議会として、今議会での議決には、慎重を期す必要があるものと考えます。

 以上のことから、更なる政治的正統性ある議論や、議会熟議に正に時間をかけ、「県民のための二元的代表制の議会が、しっかり議論を尽くす」議会の原理、原則から、即決では無く、議会での継続審査の続行並びに、これに伴う議会会期延長の議決に賛成した理由であります。

[1] 私法上の契約とは、行政と私人との間の契約で、行政が私人と同じ立場で契約を結ぶことをいいます。私人と同じ立場で取引するため、私法の規定が適用されます。また、訴訟手続も民事訴訟によって行われます。私法上の契約は、さらに、給付行政における契約、行政の手段調達のための契約、財産管理のための契約に分類することができます。

[2] 表意者が無意識的に意思表示を誤りその表示に対応する意思が欠けていることをいいます。表示上から推断される意思と真の意図との食い違いを表意者が認識していない点で心裡留保や虚偽表示とは異なります。

DSCN3789 <今後の論点>

①賃料算定方法の見直しによって、県の収入が増えることは県民にとって利益となること。

②住民訴訟で県が敗訴した場合、その理由が算定誤りとなった結果では、遡って借主に請求出来なくても、今後賃料の増額請求の可能性。また過去の事務処理によって県に損害を与えたとして、歴代の責任追及を打ち出す可能性があること。

③いずれにしても今後は賃料算定にあたって、全ての県有地での、借主側の投資による付加価値をどう取り扱うかは論点となりそうで、これが他の貸付地の賃料に影響を与える。

以上の論点も想定される為、特別委員会による慎重議論や熟議の結果が、今後の論点にとって、合わせて必要と考えられますので、継続審査による熟議が必要となります。