商品棚が書道の展覧会になる日


〜「書道をしていると、商品ラベルが気になる」〜

近ごろは「字を書く機会が減った」とよく言われます。でも、よく見渡してみると、実は街中には筆文字があふれています。スーパーに並ぶ調味料の瓶、ドラッグストアの商品の数々、お菓子の袋やお茶の缶──それらのパッケージに目を留めてみると、ふと気づくのです。

「あ、これ筆文字だ」

書道をしていると、こういった商品ラベルの文字が、ただの“デザイン”では済まなくなってくるんですよね。

形、筆づかい、線質、バランス。ちょっと立ち止まって、まじまじと観察してしまいます。
「この“はらい”、絶妙だなぁ」「“とめ”が強くて印象的」「この字のリズム感、すごく良い」と、買い物よりも筆跡に目が奪われてしまうこともしばしば(笑)。

そして思うのです。
「これは書家が書いたのかな?」「もしかして、商品企画部の誰かが筆を持ったのかな?」
「この一字、私ならこう書くかなぁ」「あ、こういう構成は自分には出せないな、勉強になる…」
そんなふうに、店内がちょっとした“書の展覧会”のように見えてくる。
これも書道をしているからこその“副作用”かもしれません。これって私だけでしょうか?

書道をしていると、日常の風景が少し違って見える。
日々の暮らしの中に、“書”というレンズを通して、ちいさな発見がある。
それって、とても楽しくて贅沢な時間だと思うのです。