「賞を取らないと意味がないの?」──書道の“本当の価値”を考えるとき

「結果が出ないと、なんだか続ける意味が見つからない気がする」
「展覧会で落選。もう自分には才能がないのかも…」
書道を続ける中で、こうした想いを抱くことは決して珍しいことではありません。
毎月の競書誌、年に一度の大きな展覧会や昇段試験。結果が出なければ、やっている意味がないように思えてしまう…。けれど、ちょっと立ち止まって、あらためて考えてみませんか?
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■ 賞や段級を「目標」にしている方へ
もちろん、「賞を取りたい」「段を上げたい」と思うのは素晴らしいことです。
それが日々の練習を支える大きなモチベーションになっているのなら、ぜひ大切にしてください。
実際、教室を開きたい方や、書道を人に教えたいという目標を持っている方にとっては、評価や実績が自信につながるというのも事実です。
努力の先に認められるという経験は、成長を加速させることもあります。
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■ でも、「結果」だけがすべてじゃない
一方で、書道を始めたきっかけを思い出してみてください。
「文字を書くのが好きだった」「墨の香りに癒された」「先生や仲間と話すのが楽しかった」――
そこに、最初から“賞を取る”という目的があったでしょうか?
書道には、「競う」以外にもたくさんの楽しみ方があります。
自分の内面と向き合う静かな時間であり、
誰かに贈る言葉を心を込めて書く時間であり、
筆の動きに集中して、ただ無心になる時間でもあります。
賞や段級は、書道という世界にある「道しるべ」の一つにすぎません。
それを「進む目印」にするか、「通過点」にするか、「通らない道」とするかは、あなた自身が選んでいいんです。
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■ 評価するのは「神」じゃない
競書や展覧会で評価するのは、いわゆる“少し先を進んだ先輩たち”です。
基準も好みもある程度の傾向があるもの。
決して、神さまのように絶対的な評価ではありません。
評価に一喜一憂するのも人間らしさのひとつですが、すべてを結果に委ねる必要はないということ、忘れないでくださいね。
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■ あなたにとっての「意味」を見つけて
賞を目指して頑張る人。
自分のために、毎日10分書く人。
書道仲間とおしゃべりする時間を楽しみにしている人。
みんなそれぞれに、書道との付き合い方があります。
他人の目標と比べる必要はありません。
あなたにとっての「書道の意味」は、あなたが決めるものなんです。
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■ おわりに:書道を「好き」という気持ちを大切に
「賞を取らないと意味がない」なんて、そんなことありません。
評価や結果にとらわれすぎると、本来の楽しさが見えなくなってしまうこともあります。
まずは、「書くことが好き」という気持ちを思い出してみましょう。
今のあなたに必要なのは、賞状でもトロフィーでもなく、
筆を持って、今日の一画を楽しむ時間かもしれませんよ。
おまけ
今日は「曹全碑」の臨書をしました。
曹全碑(そうぜんひ)とは?
曹全碑は、後漢時代(紀元185年)に立てられた石碑で、中国書道史上、特に隷書(れいしょ)の代表的な作品のひとつとして名高いものです。碑は、漢の「曹全」という人物の功績をたたえるために建てられたもので、現在は中国陝西省の西安碑林に所蔵されています。
この碑の文字は、非常に整った美しい隷書体で刻まれており、筆致の柔らかさや線の抑揚、リズム感が見事に調和しています。左右の余白や文字の配置も見事で、「構成の妙」が味わえる作品です。字体は穏やかでやわらかく、女性的な印象を持つと評されることもあり、臨書の教材としても高い人気があります。
特に、隷書を学ぶ初学者や中級者には格好の教材とされ、独特の波磔(はたく:横画の入り抜きの筆使い)や、字形の整い具合、墨の流れの美しさから、書写や作品制作の基礎を鍛えるのに適した碑文です。
