アメリカの大学にいた時に苦労したのは「読む」こと。次に「聞く」ことだった。
「話す」ことは頭に例文を思い浮かべながらなんとかなる。それに日本人は受験勉強の時に大量の英単語を覚えるのでそのうちの何割かは頭に残っている。また、英語は発音が悪くてもある程度通じる便利な言語。
「書く」のはお手のもの。
実はこれは「日本人あるある」なのだ。
日本人の英文法の知識はなかなかすごい。大袈裟に聞こえるかもしれないが、時にはその力はアメリカ人を凌ぐ。彼らは未来完了形の使い方とか仮定法の使い方がちょっと間違っている時があった。スペルもよく間違える。
さて、ある日、読書感想文を書く宿題が出た。これには参った。
期間は2週間くらいもらえたと思うが、僕は英語の本なんか読めない。受験生の時から長文読解はとても苦手だった。
そして考えたのが、幼児用の本を読んで感想を書くことだった。
でもきっと過去にそういうことをした日本人がいたんだろうな。
課題を出された後に、クラスの中で僕と韓国人のジオンだけが先生に呼ばれた。そして「読む本を決めたら事前にその本を見せること」と言われてしまった。
韓国人も日本人同様読むのが苦手なのだろうか。
どうしようか悩んだ挙句、悪知恵が働いた。
僕はアメリカに来る飛行機の中で、マーティン・ルーサー・キング牧師の本を2冊読了していたのだ。
「そうだ! あの本の感想を英語で書けばいいんだ!」
そしては学校の図書館に行き、キング牧師の英語の本を借りた。
そして次の授業で先生に「この本の感想を書きます」といったところ、中身をパラパラっとだけ見て “Good!” と言ってくれた。
書くのは得意。
パッと書いた。
そしてその感想をみんなの前で読む発表の授業があった。
書いてあるのを読むだけなのでそんなに難しいことではない。
会話文は感情を入れて読んだらウケた。
そして7人の留学生のクラスの中で僕は最高の評価をもらった。
読んだのは日本語の本なんだけど・・・。
32歳の時の冬のケンタッキーの想い出。