これは、

栄太に懇切丁寧に尽くす
最後の言葉です。

おしゃべりで
一から十まで説明したい性分の私にとっては
かなり辛いことだけど…

これからは、
いかに言葉を使わずに伝えるかが
師匠としての第一歩だと思っています。

栄太自身に気付かせ、
考えさせるためには
気がつくまで
辛抱して待つことが大事だから。

私の師匠が
未熟な私を
辛抱強く待ってくれたように…。

栄太。

もし、今、
このブログを読んでいるとしたら
残念ながら、
それは間違いです。

間違えることは、
決して悪いことではない。
むしろ
間違いを恐れて
やらないことの方が悲しい。

間違えたら、
誠心誠意謝ればいい。
そして、
次の挑戦に活かせばいい。

そうやって
みんな成長していくものだから。

だから、
臆せず、しかし謙虚に
修行に励んで欲しいと思います。

いざというときには
責任は私が取るから。

それが、師匠の務めだと
師匠から教わりました。


ブログを読んだりすることが
どうして間違いなのか…

このブログも鯉栄チャンネルも
今の私にとっては
必要で大切な“仕事”です。

だから、
可能な限り本音を書くし、
1人でも多くの人に
講談の魅力や
講談界の奥深さを知ってもらうために
今まで通り正直に書くし、
師匠として歩き出した自分の
不安、苦悩、葛藤、
今はまだ感じる余裕はないけれど
喜びも書いていきます。

栄太は今、
全てが初めてで
戸惑っているだろうし
不安でしょう?

今日、
自分はしくじらなかったか。

今の自分は
何をすれば良いのか。

師匠の私が
今日何を考えていたか。

ブログを読んだり
YouTubeを観れば
分かることもあるでしょう。

でも、栄太。

答えを
簡単に手に入れることに
慣れてはいけません。

これからは、
私を見、私の声を聴いて
自分の頭と心で
考えなさい。

それが、修行です。

答えが正解かどうかよりも、
考えるその姿勢と過程が大切なのです。

生身の芸人が、
生身のお客様と向き合う。

毎日違うお客様、客席の入り具合、
男女比、年齢層、天気。

自分のコンディション、
お客様のコンディション。

番組の流れ、
自分に与えられた出番が果たすべき今日の役割。

日々、今日手に入る
あらゆるものをヒントにして
目の前のお客様にどうやって
楽しんでいただくか。

また聴きに来たいと
思っていただくか。

そこに、
明確な答えなどありません。

今日の正解が
明日の不正解…なんてことも
あったりします。

講談と向き合い
お客様と向き合う日々。

何も考えず
心安らかに眠れる夜など
ほとんどありません。

確かな答えの出ない問いに悩み、
考え続ける毎日が
これから生涯続きます。

栄太が芸人である限り。

例え誰かが
「これが答えだよ」
と教えてくれても
それは、その人の答えであり
自分の答えは
自分で探し続けるしかありません。

私が入門した頃と違って
欲しい情報は
殆ど手に入る時代です。

楽をしようと思えば
その方法は
いくらでもあるでしょう。

でも、
せめて前座修行の4〜5年は
あえて苦しい道を
選んでみてください。

寝食を忘れ
夢中で日々を過ごしてください。

意地やプライドを捨て
まっさらになって
真っ直ぐな心で見聞きし
学んでください。

とても難しいことだけど、
まっさらになると
より沢山のことを
教えてもらえるようになります。

そうやって
とことん頑張ったら
これから生涯続く
苦しい毎日を歩む脚力が
身につきます。
お客様の本当のありがたさが
分かるようになります。

その上で味わう喜びが
真の喜びだと私は思っています。

もし苦しくなったら
私の背中を見ればいい。

同じように苦しみ、
失敗を繰り返しながら
無様だけど
戦っている私を見てください。

人と競うのではなく、
自分の弱い心と戦うのです。

公の場で
こうして栄太に言葉を向けることにも
私なりに考える意味があります。

その意味も考えなさい。

そして14〜5年後、
栄太が晴れて真打になったとき
そんな話ができたら嬉しいです。

分かったら、
今すぐこのブログを閉じて
三方ヶ原の稽古をしなさい。

また明日、浅草で。